なでしこジャパン澤穂希の「いい女」っぷりと石田梅岩の商人道哲学
1月11日、ゾロ目の日の富士二景。
頂のあたり、雪が少ないか。
富士市あたりの製紙会社の煙突と煙。
なぜか、雄大な富士の裾野の景観によく似合う。
さて、なでしこジャパンの澤穂希。
「さわほまれ」とキーボードに打ち込むと、
「澤穂希」と表れる。
そのくらい、有名になった。
FIFA年間最優秀選手の栄誉を獲得。
男子のメッシと並んだ振り袖姿は、
ほんとうに「いい女」っぷり。
読売新聞の一面コラム『編集手帳』。
〈衆に媚びず、
孤独を恐れず、
自己の力によって自ら立ち、
驕らず卑下せず、
霜雪の寒にも自若として、
己自身に微笑みかくる、
揺ぎなき気魄である〉
小説家の故・豊島与志雄の随筆だが、
梅の花を描写したもの。
これを澤穂希となでしこジャパンにかぶせる。
さらに 『三百六十五歩のマーチ』。
ご存知、水前寺清子。
「あなたのつけた足あとにゃ
きれいな花が咲くでしょう…」
これも澤穂希となでしこジャパンに捧げる。
「国民栄誉賞や菊池寛賞などに続いて、
足跡にまた大輪の花が咲いた」
そして、決めの言葉。
「ひとの“足あと”ほど美しい花器はない」
モノを書くときの常道だが、
材料をふたつみっつ出しておいて、
それらを関連づけて結語とする。
その典型のような文章。
最近は、読売の『編集手帳』がいい。
一方、おなじみの日経新聞『春秋』。
こちらは何かというとビジネス社会に結び付ける。
「沢穂希選手はガラスの天井を突き破った人である」
「ガラスの天井 glass ceiling」
「女性が越えられない、目に見えない限界」。
アメリカでは女性のマネジャーが多いが、
それでも「会社の役職や昇格などの話題で、よく使われる言葉」。
「IBMやヒューレット・パッカードなど、
米国で次々誕生した女性経営者の写真を眺めてみる」
「男社会への媚びや計算に無関心そうな顔つきが、
沢選手とどこか似ている」
と、書いているコラムニストも、
男に違いない。
そのあたりが、
政治や経済に物申しつつ、
対岸を覗き見ているマスコミの姿そのものであるところが、
いかにも皮肉ではある。
さてさていいニュースばかりではない。
「自殺、14年連続で3万人超」の記事。
日経新聞社会面から拾った。
「2011年の全国の自殺者数は3万513人」
警察庁の速報値。
それでも、2010年より1177人少ない。
警察も記事も、「3.7%減少」と表現するが、
「1177人減った」と言いたい。
人の死をパーセントで言い表すのは、
なんとなく、いやだ。
もちろん「14年連続」など、
スポーツの記録のようで、
これにも嫌悪感を覚える。
「2年連続の減少となったが、
依然として高い水準にある」。
これも経済指標を言っているようだ。
日経だからこうなるのだろうと思っても、
商売にも同じことがある。
お客様に対して使う言葉、
店の中に掲示されているポスターやPOP、
「手前勝手」が横行している。
以って自戒とすべし、だ。
2011年の自殺者を男女別にみると、
「男性が前年比6.4%減の2万867人、
女性が同2.5%増の9646人」。
これもパーセンテージ表現で申し訳ないが、
記事にこうある。
「発見場所の都道府県別では、
東京が3100人で最も多く、
大阪が1899人、神奈川が1824人で続いた。
少なかったのは徳島150人、鳥取165人など」。
気になるのは震災がらみの自殺。
こちらは内閣府のまとめで、6月から11月末現在まで。
49人。
「6月の16人が最も多く、
年齢別では60代が16人で最も多かった」
ご愁傷様、合掌。
さてさて昨日の続き。
日経の『経済教室』欄の「時事解析」。
「日本流 企業存続の条件(2)」で、
「石田梅岩の商人道」を取り上げてくれた。
安西巧編集委員が、
平田雅彦の著作『企業倫理とは何か』から引用しつつ論じる。
「日本で最初に商人道を唱えたのは石田梅岩(1685~1744年)」
生まれは「丹波東懸村」。
現在の京都府亀岡市。
スーパーマーケットのマツモトの本拠地。
梅岩はこの地の農家に生まれ、
「11歳で京都の呉服店に丁稚奉公に出た」。
「梅岩は独学で神道、仏教、儒教の思想を学んだ」。
さらに「43歳で奉公を辞め、
翌年京都車屋町の自宅で聴講無料、
紹介者不要の自由な講義を始めた」。
梅岩は士農工商の身分制度下で商人の職分論に着目。
商業活動の営利追求を積極的に肯定し、
『勤勉』『倹約』『正直』を勧めて
『人の人たる道』をわかりやすく説いた」。
「梅岩の思想哲学は「石門心学」と名づけられ、
18世紀末には後継者たちによって全国に普及」
記事では「2000年代に入って欧州連合を中心に
企業の社会的責任(CSR)が盛んに唱えられ、
日本でも企業や経済団体が取り組みを始めた」とあるが、
私の古巣・商業界では、
ずっと石田梅岩を学んでいた。
何しろ商業界の創始者・倉本長治は、
「昭和の梅岩」といわれたほど。
「日本のCSR論の源流は『石門心学』にある」というが、
それは商業界精神にもあり、
さらにピーター・ドラッカー先生ともつながっている。
「石田梅岩の発想の新鮮さは、彼の哲学が、
机上の思索を積み重ねただけのものではなく、
商家での奉公という実践体験に裏付けられていること」
神は現場にあり。
梅岩の哲学は、
そこから生まれたインテグリティである。
<結城義晴>