ネイバーフッド・グロサリーストア「トレーダー・ジョー」熊さんインタビュー
ロサンゼルス・ステイプルズ・センターで、
第54回グラミー賞授賞式開催。
アカデミー賞が映画であるのに対して、
グラミー賞は音楽。
アデルが、6部門で受賞。
イギリス人女性シンガー・ソングライター、23歳。
対照的だったのが、
48歳で急逝したホイットニー・ヒューストン。
グラミー賞授賞式では、追悼の映像が流れ、
映画「ボディガード」の主題歌「オールウェイズ・ラブ・ユー」が、
ジェニファー・ハドソンによって熱唱された。
“and I will always love you.
I will always love you”
よかったですね。
ケビン・コスナーと共演した「ボディガード」は、
私も好きな映画で、
ホイットニー・ヒューストンの歌も素晴らしかった。
月並みな言い方だが、
ほんとうに、もったいない。
自分よりも年下の才能が消えていく。
そんなことが起こり始めた。
不思議な気分だ。
合掌。
今日、日本は、
バレンタインデー。
しかしサンフランシスコは、
月曜日の2月13日。
もう、最後の視察日。
今回の参加メンバーは、4社。
関西の㈱阪食、
中国地方の㈱エブリー、
四国の㈱サンシャインチェーン本部、
そして九州の㈱ハローデイ。
ともに切磋琢磨して、それぞれの、
クォリティ&サービス型スーパーマーケットをつくる。
それも日本最先端のモデル開発。
これが目的。
アメリカのスーパーマーケットの歴史は、
1859年に遡る。
ザ・グレイト・アメリカン・ティ・カンパニーの創業。
この会社がスーパーマーケットの前身グロサリーストアとなる。
同社はやがてA&Pと社名を変え、
1930年には1万5000店の大チェーンストアとなる。
1916年には、セルフサービス・システムが開発される。
クラレンス・サンダースの「ピグリー・ウィグリー」。
1930年、マイケル・カレンの革命によって、
グロサリーストアはスーパーマーケットへとアップスケールし、
最強の業態となる。
それから第二次世界大戦を経て、50年。
1980年代に入って第二の革命が起こる。
それが業態の多様化であり、
フォーマットの分化である。
この時に誕生したのが、
第1にスーパーストア、
第2にコンビネーションストア(フード&ドラッグ)、
第3にクォリティ&サービス・タイプ、
そして第4にリミテッド・アソートメント・ストア。
それから30年、
スーパーストアやフード&ドラッグはもう、当たり前となって、
コンベンショナル型(伝統型)と位置付けられるようになってしまった。
現在、好調なのは、後ろのふたつ。
ひとつはクォリティ&サービス進化型である。
ホールフーズマーケットやウェグマンズ、ナゲット・マーケットがこれで、
いまや7万平方フィート(2000坪)にまで店舗拡大している。
そしてもうひとつがリミテッド・アソートメント進化型。
その典型が、トレーダー・ジョーとアルディ、
さらにフレッシュ&イージーがどうやら間に合いそう。
こちらは1万平方フィート(約280坪)の小型店。
私たちは今回、このクォリティ&サービス型の進化型を追求しつつ、
研究と勉強に励んでいる。
さて、サンフランシスコ視察も最終日。
ダウンタウンのトレーダー・ジョー、
セーフウェイとトレーダージョーが核店舗のライフスタイルセンター。
そして最後の最後は商売の原点を確認するために、
バークレーボールへ。
その中から、朝一番で訪れたトレーダー・ジョーを紹介しよう。
マンハッタン店に次いで全米で2番目の売り上げを誇る。
あいにくの雨。
今シーズンは雨不足で、
久々のお湿りらしいが、
風も強く、体が冷え込むほど。
月曜の9時という時刻にもかかわらず駐車場は満杯。
道路には10台ほどの車が列をなして入店を待っている。
トレーダー・ジョー強し。
クルー・スタッフのベアさんが、
われわれを迎えてくれた。
名前の通り、優しい熊さんのよう。
「トレーダー・ジョーは、
ネイバーフッド・グロサリーストア。
日常生活に必要なベスト・フードをベスト・プライスで提供する」
これはエブリデーグッズ、エブリバディ・グッズを、
ポピュラープライスで販売しているということ。
そして、A&Pのグロサリーストアと、
クラレンス・サンダースのセルフサービスと、
マイケル・カレンのスーパーマーケットと、
1980年代のリミテッド・アソートメントを、
正当に受け継ぐフォーマット。
「367店の2番目の売上げを稼ぐ」
一番はニューヨーク・マンハッタンのユニオンスクェア店。
トレーダー・ジョーの年商は、
推定85億ドル(100円換算で8500億円)。
「40フィートのトラックが1日に4~6回、
商品を満載して運んでくる」
「われわれは生産者、メーカーからキャッシュで直接買い付ける。
だから20~30%安く仕入れて、販売することができる」
トレーダー・ジョーでは通常、
280坪の店を70~80人体制で運営するが、
この店は、300坪強の店舗にもかかわらず、
175名のクルーが働いている。
10人のマネジャー、スーパーバイザーがフルタイマー。
他はパートタイマーだが、週40時間働く人もいる。
日曜と月曜は多くのお客が押し寄せる。
だからナイトクルーたちは、
夜9時から翌1時まで、開店準備作業を行う。
翌日は、8時開店にもかかわらず
早朝4時には、フルメンバーが準備態勢のためにやってくる。
カリフォルニアの最低時給は8ドルだが、
トレーダージョーは10ドルから始まって、
最高20ドルの時給を支払っている。
しかもこの店は、発注作業も上手に割り振って、
全員のモティベーションを高めている。
パートタイマーがその信頼にこたえて一生懸命働いてくれる。
ベアさんが自ら店内ツアーをしてくれた。
トレーダー・ジョーでは、すべての店の壁面デコレーションから、
トップ・パネル、サイン、POPが異なる。
店ごとにアーティストが雇用されていて、
地域の特徴や風景、歴史が描かれる。
顧客に「私の店」と思ってもらうためだ。
バレンタインの花のディスプレー。
バックヤードも見せてくれた。
すごい在庫量だが、それが1日1回転する。
屋外で再び、ベアさんのインタビュー。
トレーダー・ジョーはリミテッドアソートメント・ストア。
1万平方フィートの店舗に3500SKUの商品をそろえる。
その80%ほどがプライベートブランド。
年間150~200アイテムが廃番になり、
250~300ほどのニューアイテムが投入される。
1週間に8アイテム。
1週間置いて売れないものは、
すぐに絞られていく。
この店では毎週、スタッフ全員のための試食日を設け、
25種類ほどの新商品を食べる。
新しい商品の味を確認し、売り方を考えるためだ。
新商品はエンドに積まれ、徹底的に売り込まれる。
3500SKUの限定された枠の中で、
商品は水の流れのように常に入れ替わっている。
それがトレーダー・ジョーの魅力を作っている。
質問にも丁寧に答えてくれた。
ベアさんのインタビューを似顔絵付きで記録。
サンシャインチェーン本部の遠藤美紀さん作。
実によく似ている。
最後に握手して、写真。
クォリティ&サービス・タイプのスーパーマーケットも、
トレーダー・ジョーの要素を採用しなければいけない。
学ばなければならない。
予断だが、日本のスーパーマーケットで、
トレーダー・ジョーに最も近い企業は、
成城石井だと思う。
価格政策を変えたならば、
日本型トレーダー・ジョーが誕生する。
私はずっと、そう考えている。
熊さんのようなベアさんに、
心から感謝。
(つづきます)
<結城義晴>