第一屋製パンのトヨタ生産方式と続・フランス冷凍食品専門店ピカール
今月の商人舎標語。
一心不怠 成長無限。
常にこの心持で、
何事にも邁進したい。
昨日から細貝理栄さんとご一緒。
第一屋製パン㈱代表取締役社長。
商人舎発足の会の発起人のおひとりでもある。
その細貝さんの第一屋製パン。
トヨタ生産方式(TPS)によって、
目覚ましい成果を上げている。
成果は2011年12月期決算に如実に表れた。
連結最終損益は従来予想3億5000万円の赤字だったものが、
3500万円の黒字へと転換。
細貝さんは語る。
「提携する豊田通商から専門家400人の派遣を受けた。
昨年4月に主力工場でTPSを導入。
それを全工場に広めた。
人の配置や製造工程、発注プロセスの見直しなどを、
地道に地道に重ねた」
「何も難しい言葉は使わない。
しかし小さな改善を徹底して行う」
まさに「一心不怠」。
「トップが率先して改善に取り組んでいるが、
上からの命令ではなく、
現場がやる気になっている」
この工場段階でのTPSは、
今後、営業現場や業務管理にも活用される。
マネジメントは大きく5つに分けられる。
第1がストラテジック・マネジメント。
経営戦略に関するマネジメント。
第2がプロダクト・マネジメント。
これが製造業の場合、
工場現場におけるマネジメントで、
第一屋製パンはこのイノベーションを果たした。
小売業ではオペレーション・マネジメントと呼んでいい。
サミットのレイバースケジューリングは、
オペレーション・マネジメント改革の成功例だ。
第3は、マーケティング・マネジメント。
フィリップ・コトラーの言う如く、
「マーケティングは組織で行う。
従って、マーケティング・マネジメントが重要になる。」
第4はフィナンシャル・マネジメント。
財務に関するマネジメント。
そして第5がヒューマンリソース・マネジメント。
組織で働く人間、経営する人間に関するマネジメント。
細貝さんは、第2のプロダクトマネジメントを、
TPSによって成し遂げ、
それを組織文化に変えようとしているのだと思う。
さて、昨日の続きのフランスのピカール。
冷凍食品の商品開発・デリバリーから小売りまで、
一貫した事業を展開。
いわばユニクロの冷凍食品版。
ご覧のように、アイスクリーム・ケースがずらりと並んだような店内。
リーチインケースではないところが、
ピカールの特徴。
延々と冷凍ケースが並ぶ。
825店すべてが標準化された店づくり、売り場づくり。
ワンウェイコントロールの客動線。
店外とはガラスで仕切られ、
あかるい雰囲気をつくる。
青果・シーフード・精肉、半加工品、乳製品、パン、惣菜、デザート、菓子。
スーパーマーケットの食品部門で、
冷凍化できるものはほぼすべて1000品目の中にある。
オペレーションは、ケースの中に陳列するだけ。
しかも生鮮食品やデイリー食品と比べて、
鮮度管理も楽だ。
生鮮食品は、鮮度のいいうちに瞬間冷凍すれば、
むしろ生鮮のまま流通させるよりも、
鮮度レベルが高い。
顧客からも「ピカールは鮮度がいい」と評判。
そして「冷凍でもおいしい」。
いや、「冷凍だからこそおいしい」。
サインやPOPも洗練されていて、
しかもシンプル。
商品名、価格がわかりやすく、
料理の写真も掲げられて、
メニュー提案がなされている。
レシピはこんな感じ。
平ケースであることの意味は、
店内の見通しの良さと、
このショーカードやPOPの見易さ。
商品パッケージ・デザインにもフランス流の洗練ぶりが見られる。
カルフールやオーシャンのプライベートブランドとは、
どこか違っていて、量販商品というイメージがない。
しかし単品量販であることは間違いない。
ピザは大人気商品で、
とてもおいしいそうだ。
フランスのデータでは、
パリをはじめとした都市部に住む25歳~49歳の女性の約8割が仕事を持つ。
そんなワーキング・ウーマンたちに絶大な人気を誇る。
約1000アイテムの内訳は、
素材から半加工・加工食品・デザートまでの冷凍食品。
シーフード20%、青果20~30%、精肉20~30%。
1人用、2人用からファミリー用まで、
必要量に応じたパッケージングの商品が揃う。
さらに家庭での保存・使用方法などもレクチャーされている。
半加工品は、「素材の皮をむいたり、切ったりする手間がはぶける」
ピカールは、冷凍食品の製造小売業。
だから製品製造は冷凍食品メーカーに仕様書発注される。
その委託メーカーは、
75%がフランス国内の企業、
25%がヨーロッパ、南米産もあるし、
最近はアジアの食材も品揃えを広げている。
価格は、値頃を追求する。
野菜やシーフードなどには、
生鮮食品の半額に近い商品がある。
さらに電話とインターネットによるカタログ注文販売にも力を入れる。
冷凍食品の強みを徹底的に発揮したビジネスモデルである。
ピカールは、もともとが氷屋だった。
それが戦後、冷蔵庫・冷凍庫の普及で、
そのハードウェアを売るとともに、
冷凍食品も売り始めた。
だからの特徴の第1は、
冷凍の専門家であること。
その強みを徹底的に活かす。
第2は、この店だけですべてが揃うことを狙わないこと。
つまりコンプリートストアであることを放棄したモデル。
近隣にカルフールのハイパーマーケットや、
カルフール・マーケットのスーパーマーケットがあったほうがいい。
補完関係の中で、冷凍食品は安くてうまい。
第3は小型店の多店化が実現されていること。
従って出店スピードは、速い。
フランスにはラファラン法という出店規制法規がある。
だから大型店は極めて出店しにくい。
ピカールの出店スピードは、いま、
図抜けている。
つまりリミテッドアソートメントストアということになる。
アメリカで言えば、トレーダー・ジョーと同じグループ。
従って、日本のコンビニとは対極にある小型店。
面白いフォーマットが発達したものだと、
つくづくと感心させられる。
<結城義晴>