「流通の未来を自分たちでつくる会」と6月業態別販売統計の異変
日本列島に猛暑。
今日は本当に辛かった。
今月は月初めに韓国仁川、
その後、高知出張、
続いてアメリカ視察研修、
休みなしに立教・結城ゼミ合宿、
そして今週に入ってもスケジュール目白押し。
その上の今日の猛暑。
その今日、気象庁が、
「8・9・10月の3カ月予報」を発表。
8月は沖縄・奄美を除き全国的に猛暑。
特に8月初旬は高気温が続く。
東北から中国地方までの広範囲に、
「異常天候早期警戒情報」が発せられた。
《8月》平年と同様に晴れの日が多い。
北日本の天気は数日の周期で変わる。
《9月》天気は数日の周期で変わる。
西日本太平洋側と沖縄・奄美では平年と同様に晴れの日が多い。
《10月》天気は数日の周期で変わる。
北日本太平洋側、西日本、沖縄・奄美では平年と同様に晴れの日が多い。
まだまだ暑い日が続きそう。
熱中症対策は国民全員の課題となる。
さて昨日午後は、
商業経営問題研究会。
通称RMLC。
場所は、虎の門にある日本チェーンストア協会会議室。
前半は、『nextスーパーマーケット』に関して、
フリーディスカッション。
要は「業態からフォーマットへ」の議論。
後半は、私の「アメリカ小売業の最新報告」。
先週金曜にダラス、サンフランシスコから帰ってきたばかりだが、
なんだかずいぶん、以前のことのようだ。
アメリカの小売業概況をさまざまな数値で示しつつ、
ナゲットのフード4レスとウィンコフード、
ホールフーズやトレーダー・ジョー、
そしてウォルマートの写真を使って、
スーパーマーケットの業態の分化、
フォーマットのバラエティ化について、
2時間ほど解説した。
今回のレクチャーは、
ずいぶん理解してもらえたようだった。
それがうれしかった。
そのあと、近くの小料理屋で有志による暑気払い。
これが大いに盛り上がった。
楽しかったが、少々飲みすぎた。
最後に全員で写真。
右から㈱セイミヤ社長の加藤勝正さん、
元セゾン総研所長の品川昭さん、
㈱たいらや社長の村上篤三郎さん、
㈱ケノス社長の小林清泰さん、
私の隣は、先月から参加の㈱高津東京営業所長の高津裕貴さん、
そして代表世話人の高木和成さん。
高木さん、今月も仕切り、お疲れ様です。
今日は、埼玉県大宮に駆けつけ、
「流通の未来を自分たちでつくる会」での講演。
イオンリテールワーカーズユニオン主催。
私は「自分たちでつくる」というところが、
とても気に入っている。
「脱グライダー」思考そのもの。
しかし、しっかり学び、
自分の目で見、自分の耳で聞き、
自分たちで考えなければ、
「自分たちでつくる」ことはできない。
井の中の蛙が「自分たちでつくる」では、
これはあまりに僭越すぎる。
今回の私のテーマは、
「2012年チェーンストアの
フォーマット&ポジショニング戦略」
チェーンストアの歴史が、
フォーマットの時代であることを示している。
業態の時代からフォーマットの時代への転換は、
アメリカ小売業では1980年代。
それからSTPとポジショニングの重要性が一段と増した。
それがレース型競争からコンテスト型競争への転換を意味している。
トータルで2時間半にわたるレクチャー。
「流通の未来を自分たちでつくること」に役立っただろうか。
ご清聴を感謝したい。
さてさて、6月の各業態の販売統計結果が、
次々に発表されている。
そして異変が起こりつつある。
まず日本百貨店協会からは、
「全国百貨店売上高概況」。
百貨店86社、249店舗の統計数値。
6月の総売上高は4829億9116万円。
既存店の前年同月比はマイナス1.2%。
2カ月続けての減少。
6月の百貨店の主力商材は、
もちろん、夏物衣料。
しかし梅雨による天候不順、台風、
そして低気温の影響で、
その夏物衣料は売上げが伸びず、
マイナス2.7%と低迷。
地区別にみると、
福岡地区の前年同月比が0.8%増、
なんと47カ月ぶりにプラスに転じた。
また、震災後激減した外国人の客数が、
着実に回復している。
6月の外国人顧客数は、
昨対プラス31.1%と大幅に伸びた。
大都市中心部の大型百貨店の商圏は、
今やアジア一円ということになる。
それが日本の百貨店におけるひとつの成長の道となる。
次に日本フランチャイズチェーン協会発表。
「コンビニエンスストア統計調査月報」。
調査対象は主要コンビニ10社。
セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、
ファミリーマート、サークルKサンクス、
ミニストップ、スリーエフ、セイコーマート、
デイリーヤマザキ、ココストア、ポプラ。
既存店売上高は6780億1700万円で
前年同月比マイナス2.6%。
コンビニは9カ月ぶりの減少。
来客数は既存店でマイナス2.3%、
平均客単価もマイナス0.3%。
夏の主力商材、飲料と調理麺の売上不振が要因。
さすがのコンビニも、
低気温と天候不順には、
勝てなかったか。
しかし本来のマーケティングは、
変化のときにこそ効果を発揮し、成果を上げる。
現在の日本のコンビニ業態の実績は、
日本の消費トレンドをストレートに反映する。
アメリカではウォルマートの業績が、
経済と消費の反映したものとなるが、
日本はコンビニ。
それが6月にマイナス。
客数の2.3%減が気になる。
三番目は日本チェーンストア協会発表、
6月「チェーンストア販売統計」。
会員企業57社、7810店舗の統計調査。
日本チェーンストア協会の加盟企業には、
大手総合スーパーの名前が並ぶ。
6月の総販売額は、1兆0093億円。
既存店前年同月比はマイナス3.9%。
やはりここでも、夏物商材の動きが悪く、
すべての部門で前年同月比がマイナスとなった。
食料品がマイナス2.5%、
衣料品はマイナス7.0%、
住関連品はマイナス6.2%、
サービスはマイナス5.2%、
その他がマイナス5.6%。
衣料品に関しては夏物衣料の不調。
住関品は昨年の節電対策でブームとなった
冷感敷きパッドが売れず、苦戦を強いられた。
次に、「スーパーマーケット販売統計調査」。
日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会、
新日本スーパーマーケット協会からの合同発表。
集計企業数311社、店舗数7281店。
6月の総売上高は7891億7849万円で、
既存店前年同月比はマイナス1.9%。
食品合計は6957億6499万円でマイナス1.7%、
生鮮3部門合計が2575億5686万円、マイナス1.6%。
その内訳が青果1069億8985万円のプラス0.2%、
水産709億8497万円のマイナス2.6%、
そして畜産が795億8205万円でマイナス3.1%。
惣菜も微減し、697億5394万円でマイナス0.2%、
日配が1502億1391万円でマイナス2.9%、
一般食品2182億4028万円のマイナス1.5%。
最後に非食品が647億8463万円でマイナス5.3%、
その他が286億2886万円でプラス1.3%となった。
今月の発表者は松本光雄さん。
オール日本スーパーマーケット協会専務理事。
「6月は年間の中でも厳しい月。
どこもみんな苦労したようだ」
「特にエリア別では、
九州・沖縄エリアが雨の影響で、
マイナス3.2%と落ち込んでいる」
「規模別では、
1~3店舗の中小企業の下がり幅が顕著。
明確な原因はつかめていないが、
低価格競争のあおりではないかと推測する」
「西に行くほど、ドラッグストアとの競合 が激しいし、
東はコンビニとの競合が多くみられる」
ゲストスピーカーは秦勝重さん。
青森の紅屋商事㈱代表取締役社長。
紅屋商事は青森県内に25店舗を有し、
提案力に定評がある。
3つのバナーで、マルチ・フォーマット戦略。
スーパーマーケットの「ベニーマート」、
フード&ドラッグの「カブセンター」、
そしてドラッグストアの「メガドラッグ」。
「20年くらい前は酒のディスカウントストアをやっていた。
今ではスーパーマーケットに酒売り場を設けているが、
そのころの名残りで今でもワインや酒の販売が強い」
「もともと衣料品店からスタートした紅屋は、
2週間に1回、売場を変える。
サイクルの早い衣料品販売をしていたからできるノウハウ。
これによって、店舗に特徴を出している」
「紅屋はハレの日に強い。
土用の丑や年末商戦となると、
紅屋の商品は非常によく売れる」
「もちろん売れない商品もある。
価格調査をしてみると、大抵値段が高いから。
こういった商品の価格を他店と合わせることはあっても、
仕入れ原価を割ってまで下げることはしない」
「地元の商品で売上げはとれている。
『今、旬のもの』を全面に出して売る。
商品力を強化したり、仕掛けづくりをして、
きちんと売上げをつくっていく」
秦さんは自社の政策のユニークさを、
的確に語ってくれた。
競争相手でライバルのユニバースが、
アークスと合併した。
これに関しては、
「その効果はまだはっきりと分からない。
しかし、戦争とは違って、
スーパーマーケットは『勝った・負けた』ではなく、
どちらが評判をとれるかが重要。
これからも競合店の様子を見ていく」
秦さんの静かな闘志が、いい。
暑い暑い日本列島。
静かでクールな闘志。
「自分たちで未来をつくる」ためにも、
これは必須です。
日本は暑い。
心は燃やせ、
頭は冷やせ。
<結城義晴>