ウォルマート「完全復活」と大衆受けしない「ポピュリズムとの戦い」
お盆が明けて、
商人舎からのお知らせ。
このホームページの巻頭にて告示。
第1は「秋のUSA研修会Specialコース」
10月30日~11月6日。
経営戦略、競争対策、商品政策、
その具体的対応として、
フォーマット戦略と、
ポジショニング戦略を学ぶ。
ダラス、ワシントンDC、ニューヨーク。
アメリカ小売業、チェーンストアの大潮流をとらえ、
日本流通業の戦略を鮮明にする。
それが目的。
今朝の日経新聞で、
米国小売業の最新報告記事が掲載された。
タイトルは、
「米小売り、値引きで消耗戦」
「景気回復ペースが緩やかで
消費者の低価格志向が進行」
エブリデーロープライスを構造化したウォルマートが、
その結果、復調。
「他を引き離す構図」が出来上がった。
「限られた“パイ”の争奪で苦境に陥る企業も目立っている」。
「失業不安やガソリン高など
心配が尽きない消費者を手助けしていく」。
スーパーセンター事業部門のルイス最高執行責任者は語る。
ウォルマートは今年、
食料品だけで10億ドル規模の値下げ計画を表明。
1ドル100円換算では1000億円。
同時に品揃えを増やす。
プロジェクト・インパクト戦略の修正は完全に終わり、
売場にも島陳列のアクションアレーが復活。
やっと強いウォルマートらしくなってきた。
既存店売上高は今年の第2四半期の5~7月期、
4四半期連続でプラスを記録。
日経の記事は、「完全復活」と書く。
その一方で、ダラーストアが絶好調。
ダラー・ゼネラル、ファミリーダラー、ダラーツリーの三者。
「ファミリー・ダラーは3~5月期に、
2ケタの増収増益を達成」。
さらにこれは私の見方だが、
ウォルマート以上の低価格を実現させている3社が絶好調。
コストコ、アルディ、ウィンコフーズ。
「こうした状況でウォルマートという“巨艦”が
値引き攻勢で収益をあげるにつれ、
資本力で劣る同業他社は追い込まれていく構図」
その事例としてスーパーバリューがでてくる。
「価格競争激化で食品スーパー部門が不振」
かつてのエクセレントカンパニー・アルバートソンも、
その3分の1ほどの店舗はスーパーバリュー傘下。
そんな店舗群の閉鎖や、
スーパーマーケット部門売却の観測も。
米国はますます、
勝者と敗者が鮮明になってきた。
「ウォルマートと中小業者の顧客争奪は、
さらに過酷なものになりそうだ」
日経記事の総括。
その「ウォルマート株、今年2割上昇」の記事も。
7月末に株価は75.24ドルを付け、
「過去最高値を更新」。
世界的な景気の不透明感が強まる中、
業績安定の小売業界の「勝ち組」に、
投資マネーが流れ込んでいる。
米著名投資家ジョージ・ソロス氏も、
4~6月期にウォルマート株を新たに組み入れた。
ウォルマートの第2四半期5~7月期決算。
純利益が40億1600万ドル、前年同期6%プラス。
売上高は1135億ドル、プラス5%。
米国スーパ―センターの既存店売上高は2.2%増。
これは市場予想を上回った。
CEOのマイク・デュークは、
ウォルマートとしては当たり前のことを口にした。
「顧客への低価格戦略を進めた」
このウォルマートと、
それに対抗する企業群をしっかり学ぶのが、
商人舎Specialコース。
テキサスのHEBをはじめとして、
コストコ、アルディはもちろん、
クローガー、セーフウェイ。
さらにウォルマートと異次元の競争をする各社。
ウェグマンズ、ホールフーズ、トレーダー・ジョー。
そして最新トレンド。
イータリー、デュアン・リード、スチューレオナード、エトセトラ。
経営戦略を考察するには、
これ以上ないという研修会。
アメリカ視察の場合、
航空券の手配に期限があって、
出発45日前までに名前を決定しなければならない。
つまり9月中旬。
お早目の申し込みをお願いしたい。
ホームページ巻頭の告示の第2は、
「第2回商人舎ミドルマネジメント研修会」
今年5月末の第1回は、
お陰様で大好評。
成績優秀者の発表も行われて、
参加企業のミドルマネジメントの意欲は飛躍している。
第2回は、11月13日~15日。
2泊3日の完全合宿制。
今回は湯河原に泊まり込んで、
隔離状態をつくる。
学んで、身に着けて、帰る。
だからすぐに行動できる。
この研修会は、ピーター・ドラッカーの考え方を基礎にしている。
さらにリーダーシップ、チームワークなど、
最も重要な考え方とその技術を強調する。
ウェグマンズが働きがいのある企業ランキングに上位にいるのも、
ホールフーズに入社希望者が殺到しているのも、
最新のマネジメントの考え方が、
これらの企業に貫かれているからだ。
ウェグマンズの鍵を握るのは、店長である。
しかし、店長はリーダー。
店長教育の一環として、設けられているのが、
「改革チーム」「トレーニング・チーム」プログラム。
「改革チーム」は、改革したい部門や課題が生じると編成され、
1店舗で実験を行う。
実験が成功すれば「トレーニング・チーム」が登場。
全店舗は6エリアに分類され、
エリア代表店の担当者が実験店の成功を学び、
「トレーニング・チーム」となり、全エリア店に普及させる。
だから顧客志向が徹底されたオペレーションが実現する。
今月の商人舎標語、
「学ぶ組織・教える組織」
ウェグマンズはまさしくこのスローガン通りの企業だ。
そして商人舎ミドルマネジメント研修会は、
それをおおきな主題にしている。
ホールフーズマーケットも、
店舗は部門組織ではない。
チーム組織だ。
店長もアソシエーツも、
「チームワーク」のプログラムのなかで、
学び、教える。
そこからホールフーズの進化が実現される。
商人舎ミドルマネジメント研修会は、
150人限定。
満員になり次第、締め切る。
こちらも、早めのご検討、
よろしくお願いしたい。
さて今日の最後は、『大機小機』。
コラムニスト隅田川氏が、
「ポピュリズムとの戦い」を書く。
「日本経済の立て直しのためには、
財政の再建と成長力の引き上げが車の両輪となる。
このうち財政再建は、
ポピュリズムとの戦いがカギとなる」
「財政再建のためには社会保障費を削り、
税・社会保険負担を増やす必要があるが、
いずれも国民に不人気な政策となるからだ」
コラムニストは、政府の「日本再生戦略」にも、
「3つの重要な部品が欠けている」と指摘する。
第1は、「エネルギーの安定供給に向けた指針」。
「原発への依存」に関しても、明確な筋道が必要。
第2は、医療福祉分野を支える社会保障の制度的枠組み。
財政的、制度的展望が示されていない。
第3は、環太平洋経済連携協定(TPP)への対応。
農林漁業の活性化に関連する重要案件。
しかしこれにも明快な方針がない。
コラムニストは言う。
「この3つの部品は、いずれも
国民に厳しい選択を迫るものばかりである」
「今後、欠けた重要部品を補って成長政策を進める上では、
国民に不人気な政策にも取り組む必要がある。
成長政策もまたポピュリズムとの戦いとなるのである」
ポピュリズムとは、
「情緒や感情によって態度を決める大衆を重視し、
その支持を求める手法」
だから「ポピュリズムとの戦い」とは、
「大衆受けしないけれど、
必須の方針を貫くこと」。
商人舎のアメリカSpecialコースも、
ミドルマネジメント研修会も、
「売上げを上げ、利益を生み出す」といった、
大衆受けするテーマの研修会ではない。
売上げと利益が重要なことは、言うまでもない。
しかし、それが短絡的に上がることない。
アメリカの状況を見ても、それは明らかだ。
だからこそ、
経営戦略とマネジメントが、
企業には今、必須であると思う。
アメリカでウォルマートの脅威に対抗できる者は、
フォーマットとポジショニングの経営戦略と、
リーダーシップとチームワークのマネジメントを、
軸のぶれなく、コツコツ積み重ねてきた企業である。
<結城義晴>