スチュー・レオナードとイータリー〈前編〉時代変革を示した店とポリシー
暑い暑い日本列島。
8月も30日だというのに、
全国的に30度以上の真夏日、
東京ですら35.8度の猛暑日。
あの館林は37.6度。
東京の熱帯夜は20日間続いている。
イギリス・ロンドンでは、
パラリンピックが開幕。
開会式典のオープニングには、
物理学者スティーブン・ホーキング博士が登場。
進行性の難病・筋萎縮性側索硬化症患者。
しかしビッグバンを解明する「車いすの天才宇宙物理学者」。
参加は164の国と地域。過去最高。
オリンピックが204の国と地域だったから、
だんだん変わらない規模となってきた。
とても、とても、いいことだ。
さて日経新聞スポーツ・コラム『チェンジアップ』。
元西鉄ライオンズの名手・豊田泰光が斬る。
「暦の上の年齢がどうした」
プロ野球ソフトバンクの小久保裕紀、
広島カープ・石井琢朗。
期中に今季引退を表明。
豊田はそれを叱る。
「私は引退を口にした人が
プレーを続けるべきではないと思う」
それは引退した者が、
経営に口をはさむに似たり。
院政を敷くがごとし。
広岡勲著『負けない心 メジャーリーガー不屈の言葉』から、
サチェル・ペイジの名言を引用。
「もし自分の年齢を知らなかったら、
今の自分を何歳だと思うかね?」
59歳までプレーした伝説の黒人投手。
「暦の上の年齢がどうした」
ペイジはそう語っている。
私も今週日曜日に60歳を迎える。
「暦の上の年齢」は無視し、
一応、暦の85歳くらいまで、
現役を続ける覚悟。
命が続けばのことだが。
それに絶対に引退は表明しない。
ありがたい仕事に就いたもんだと、
こころから感謝。
さて、ニューヨークで、
実におもしろいことを発見。
それが時代を象徴していた。
今日と明日の2日間にわたって、
連載で、お届けしよう。
2010年10月12日(火曜日)の毎日更新宣言ブログ。
「本邦初公開『スチュー・レオナード』ヨンカース店の全貌」
私は全カテゴリーを網羅するくらいの写真を使って、
懇切丁寧にレポートした。
有名なポリシー・ロック。
これは変わらない。
不変のルール。
Rule1 The Customer is Always Right!
原則1 顧客はいつも正しい。
Rule2 If the Customer is Ever Wrong, Reread Rule1.
原則2 たとえ、顧客が間違っていると思っても、原則1を読み返せ。
素晴らしいポリシー。
顧客満足を高めるためのルール。
そのヨンカース店は、
部分的にリニューアルを施して、
「現代化」を志向する。
店舗に入る前のテントでのプロモーション。
コーン12本2ドル99セント、つかみ取りセール。
1ドル100円換算で換算しても、
1本25円の採れたてトウモロコシ。
顧客が群がっていた。
ウェグマンズと同じ売り出し。
店舗入り口直前のアイスクリーム売り場。
スチュー・レオナードは酪農家出身。
最初は牛乳を中心に販売する小売店だった。
だからアイスクリームは濃厚でウマい。
そして入り口。
入り口を入ると、本日のプロモーションが、
漫画チックなイラストで紹介されている。
店舗はワンウェイコントロール方式だが、
その筆頭には必ずイベントコーナーがある。
アップル・サイダー。
動きがあって、子供たちが喜ぶ対面売り場。
そしてプロモーションコーナー。
通常のスーパーマーケットでも、
ウォルマート・スーパーセンターのようなハイパーマーケットでも、
ドラッグストアでも、
店頭一番のスペースには、
その週、その時期のプロモーション売り場がある。
スチュー・レオナードでも同じ。
プロモーションコーナーには、
主通路の中央に平台が設けられる。
プロモーションコーナーの次に、
定番のカテゴリーから売場が展開される。
スチュー・レオナードでは。
コーヒー売り場とベーカリー。
つまり朝食コンセプト。
そのコーヒー売り場。
私はいつも、ここでコーヒーを買って、
カップで飲みながら店を回る。
朝食に関連するカットフルーツ売り場には、
ケースの上にジャンボリー。
そして花売り場。
ベーカリーが改装によって広げられた。
ベーカリーの最後は、
ケーキ売り場。
そしてやっと青果部門。
青果部門は野菜から始まる。
果物ではない。
リンゴ売場も演出が変わった。
楽しさが倍増。
木製什器が新しくなり、
デコレーションの木も、実に効果的になった。
青果部門の最後には、
看板のバナナ娘。
青果部門をあとにしばらくグロサリーが続き、
それから精肉部門。
ラム・レッグのパネル。
牛肉売場では産地の紹介が行われている。
広いバックヤード。
飲料などグロサリーが続いたあと、
主通路上の島陳列で、
Back to Schoolのキャンペーン。
左がロブスター、真ん中がサラダバー。
ロブスターのコーナー。
シーフード売場にも、
最新のデコレーションが施される。
シーフードのあとが、乳製品売場。
このボタンを押す。
そうすると冷蔵ケースの上の牛が、
「モ~~」となく。
ケース上段に人形のデコレーションがある惣菜売り場。
各種チーズはコーナー化されている。
リブステーキ、テンダーロインステーキ、エトセトラエトセトラ。
デリ売場にディナーのメインディッシュがズラリ。
現在の売場では欠かせない寿司もコーナー化する。
カップ入りサラダもPBが多い。
ワンウェイの最後の方に、
デリカテッセン売場。
ビュッフェから始まる。
スープバーにはホット商品。
ライス・バーが珍しい。
4種類の米の炊き立てを手当てしている。
そしてオンラインメニューの「惣菜売場」。
主通路上にターキーの丸焼き。
良く売れている。
最後の仕上げはカップサラダ。
そしてライスケーキ。
いわばポンポン菓子。
以前はここでポテトチップスの焼き立てを、
作って売っていた。
ワンウェイコントロールの終点はレジ。
かつてほど混み合って、
行列ができるほどではない。
スーパーマーケットの店舗の脇に、
ワインショップがある。
ニューヨークの法律で、
ワインと食品を同じ店で売ってはならない。
創業者スチュー・レオナードは、
酪農家で、家庭に牛乳配達をして商売をした。
1969年、店を固定し、小さな酪農場店「クローバー ファーム」を設立。
やがて1977年には、20レーンの電子レジを導入し、
145人の従業員が運営するスーパーマーケットとなっていた。
そして1988年、ニューヨークタイムズから称賛される。
“The Disneyland of Dairy Stores.”
「まるでディズニーランドのような店」
1992年には、食料品店として1店舗当りの売上高世界一。
ギネスブックに認定される。
1999年、ここニューヨーク州北部郊外ヨンカーズに、
12.5万平方フィートの3号店をオープン。
その店も、リニューアルを実行して、
「現代化」を図る。
しかし、子供を含めたファミリーに、
ターゲットを絞ったスチュー・レオナードのマーケティング。
“The Disneyland of Dairy Stores.”
かつては卓越したこのコンセプトも、
21世紀の現在、ニッチになってしまった。
私には、そう思われる。
対して、イータリーは、
明らかに大人を対象にして、
スチュー・レオナードにない繁盛を見せている。
この違いはどこにあるのだろう。
それはスチュー・レオナードのポリシーにもあった。
世界的に有名なあのルール。
Rule1 The Customer is Always Right!
原則1 顧客はいつも正しい。
Rule2 If the Customer is Ever Wrong, Reread Rule1.
原則2 たとえ、顧客が間違っていると思っても、原則1を読み返せ。
絶対ではなくなった。
これが今回の私の大発見のひとつ。
明日、その謎を解く。
< 結城義晴>