「消費、変調の兆し」と甲府の店巡りで「ROI構造の競争」を見る
誰かさんが 誰かさんが
誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋
ちいさい秋 みつけた
作詞サトウハチロー、作曲中田喜直、
「小さい秋みつけた」
そんな気配をちょっとだけ感じさせる日。
すこしずつ、秋に入ってくる。
日経新聞のコラム『大機小機』。
コラムニスト一直氏が、
「総選挙で考えたいこと」を書く。
このコラムのなかで、
日本国民の価値観と行動原理が出てくる。
中間的な結論は、これ。
「日本人は目先の利益に敏感だ」
「大都市圏への人口集中は
アジアを中心に世界的な傾向ではあるが、
日本の戦後の経験は際立っている」
歴史小説家・半藤一利の述懐。
「戦争直後、日本人は
あっという間に過去を捨てた」
「わたしたちは利益になると思えば
土地にも過去にもあまり縛られずに行動してきた」
経済小説家・橘玲の結論。
「日本人は際立って世俗的だ」
ん~、そうか?!
「目先の利益に敏感」
「際だって世俗的」
「あっという間に過去を捨てた」
この分析や見解が日本人の特性として、
果たして妥当なのか。
コラムニスト。
「個人的な目先の利益よりは、
将来の経済社会システムはどうあるべきかを
投票の判断基準にすることが必要であろう」
総選挙のためには、
こんな特性も改めるべきだろうが、
小売りサービス業にとっては、
今日、明日のマーケティングに、
この日本人の特性は活かすことができる。
「目先の利益に敏感」
「際だって世俗的」
「あっという間に過去を捨てた」
好調な企業のいくつかは、
この日本人的なものを見事にとらえている気がする。
さて、今朝の日経新聞の記事も気になる。
「消費、夏に変調の兆し」
まずは自動車業界。
8月の新車販売台数(軽自動車を含む)は37万777台。
前年同月を12.4%上回った。
しかし、伸び率は4カ月連続で縮小。
軽自動車の比率は37%。
何よりも「エコカー補助金終盤戦の駆け込み」がなかった。
7月末で500億円を切った補助金は240億円も残る。
次に百貨店業界。
百貨店大手5社の8月売上高は4社が減収。
高額品はこのところ好調だったが、
7月は9カ月ぶりに前年割れ。
紳士衣料の青山商事は、
クールビズ関連の販売目標を昨夏比20%増と設定。
しかし実際は昨夏より落ち込んだ。
外食のハンバーガー、牛丼店など、
幅広くマイナス基調が拡大。
伸びている業界もある。
猛暑で8月は増収見込みのコンビニエンスストア、
円高で海外を伸ばす旅行など。
日本総合研究所の試算。
年収700万円世帯(専業主婦と小学生の子ども2人)は、
子ども手当の縮減や扶養控除の廃止などで、
2010年末対比で、月額1万9000円の負担増。
今後、予想されることの第一は電力料金上昇、
第二は穀物高による食品価格引き上げ、
さらに底流にあるのは消費税率引き上げ。
「消費心理を冷やす要因」は枚挙にいとまがない。
そのくせ一方、
大型ショッピングセンター開発は活発になる。
昨日の日経新聞一面トップ記事。
セブン&アイ・ホールディングスは、
現在13店のアリオを、
2015年度までに20店強に増加の計画。
核テナントはイトーヨーカ堂に、
外部専門店を50以上誘致する商業施設。
イトーヨーカ堂自体はまだまだ甦る気配を示さないが、
アリオは増収増益。
イオンは、国内最多の約120のSCを持つ。
イオンも2013年度に7店、2014年度に11店新設。
出店ペースは大幅に上がる。
ユニーも3年ぶりに出店を再開。
中四国・九州のイズミも、
農業用地の用途変更や工場跡地の取得により、
大型店開業のプランを持つ。
2007年11月、
「改正まちづくり3法」完全施行。
ショッピングセンター出店は大幅減少。
中心商店街の復活を目的にしていたが、
商店街の地盤沈下は止まらない。
商店街衰退の真因は、後継者問題にあって、
元凶は郊外の大型店出店ではなかった。
7月閣議決定の「規制改革39項目」で、
大型店出店規制の緩和が盛り込まれた。
それがこのショッピングセンター開発活発化の理由。
しかしそれでいて、この秋は消費減退の予兆。
大型ショッピングセンターが出店されると、
その新商業集積を開発している企業自身の店も含めて、
古い総合スーパーがどんどん売上げを落とし、
古いスーパーマーケットや古いホームセンターも、
新しい店に客を奪われる。
さて、先週土曜日は、山梨県甲府市。
朝、横浜を発って、昼ごろ到着。
そして、ショッピングセンターと店巡り。
地元ナンバーワンのスーパーマーケット企業オギノ。
リバーシティはかつてのドル箱店舗。
私も昔、何度も取材した。
残念ながら、古い商業集積となっている。
隣接したユニー・アピタは、
オギノと切磋琢磨して、
集客力の相乗効果を発揮していたが、
こちらも土曜日とは思われない活気のなさ。
一方、地元のイチヤママート。
独自の商品開発をして、
その「美味安心」を前面に押し出して独自化を図り、
生鮮食品、惣菜、ベーカリーなど、
頑張っている。
しかし、特に昼間は、店に活気が足りないように思う。
「消費、変調の兆し」が表れているのか。
さらにアマノ・パークス。
ここでは、小泉有紀さんが出迎えてくれた。
企画室長・フードコーディネーター。
商人舎エグゼクティブ・コーディネーターの川勝利一さんと、
三人で写真。
小泉さんの目が行き届いているのだろう、
細かなところにも配慮が行き届いた店づくりで、
高級店ながら、健闘しているだろうか。
最後に、イオングループのザ・ビッグ。
㈱マックスバリュ東海が運営。
現在、4店舗を甲府盆地で展開し、
ドミナントを構築中。
ザ・ビッグは、
低コスト低価格で、
客数を獲得する。
ごく客観的に全体を見ると、
ザ・ビッグが一番、
経営合理性を持っている。
投資し、回収するメカニズムが、
構築されている。
「超」のつくディスカウントをしているから
競争相手にとってザ・ビッグが恐いのではない。
ROIの経営に徹しているから、
無理なく、長続きする。
だから手ごわい。
このことは、競争相手の企業群も、
良く知って、学ばねばならない。
企業における総資本経常利益率ROA、
Return on Assets。
店舗における投下資本利益率ROI。
Return on Investment。
安売り合戦が行われているように見えるし、
そうとらえてしまう短絡的な見方もあるし、
短絡的なジャーナリストやコンサルタントもいるが、
それは間違いだ。
アメリカでは、
ウォルマートは営業利益率5.9%、
荒利益率24.5%、経費率18.6%。
ホールフーズは、営業利益率5.4%、
荒利益率なんと34.9%、経費率29.5%。
まったく経営構造が異なる両者。
しかしROAは、
決して良いわけではないが、拮抗している。
ウォルマート8.1%、
ホールフーズ7.9%。
そしてそのポジショニングの差異によって、
両者は見事に共存している。
甲府のマーケットで、
これができる企業は何処なんだろうか。
そう考えながら私は店店を巡った。
その後、午後3時から、
㈱オオキの社員向けに講演。
冒頭の挨拶は、
代表取締役社長の大木勝志さん。
商業界山梨同友会のリーダーだったが、
活動は他の地域と同じように沈静化。
商店街の動向と似ている。
しかし大木さんは、
自分の会社を商業界精神で立派に支えているし、
3カ月に1回ずつ同志を集めて勉強をしている。
私はその真摯さと熱意が好きだ。
講演テーマは、
「21世紀の商業界精神」
熱を入れて話した。
ちょっと観念的に過ぎたか。
反省もしたが、
倉本長治や新保民八、岡田徹の考え方は、
極めて観念的で、それでいて論理的だった。
だからピーター・ドラッカーにシンクロする。
最後に、この日のレジュメから、
「本当の正義」
正しきによりて滅ぶる店あらば
滅びてもよし。
断じて滅びず。< 新保民八>
21世紀という時代、
この言葉は、ますます重みを増し、
輝いてくるに違いない。
なぜならば、
滅び行く者たちが次々、
明らかになってくるからだ。
滅亡する機能、
役に立たなくなる仕事が、
露になってくるからだ。
正義は、
時代によって
反転のごとき様相を呈する。
古い正義を振りかざす者たちは、
新保民八の言葉を声高に叫びつつ、
滅びてゆく。
新しい正義は、
古い正義と闘争を繰り広げつつ、
同じように新保民八の言葉を叫ぶに違いない。
正しきによりて滅ぶる店あらば
滅びてもよし。
断じて滅びず。
この言葉を信じる者も、
この言葉をまやかしに使う者も、
この言葉によって裁かれる。
滅びるか、
滅びないか。
その事実によって。
21世紀という時の流れが、
本当の正義を
証明してくれる。
講演後、幹部と写真。
右から、川勝さん、
常務取締役・大木賢太郎さん、
専務取締役・大木勝彦さん、
そして大木勝志さん。
最後に大木さんと固い握手。
そして全ての社員の皆さんに、
ご清聴を、心から感謝したい。
<結城義晴>