結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年11月29日(木曜日)

広告宣伝は 柳井正の「零点か百点」売場・商品は「微差が大差」

群馬県大間々町の㈱足利屋洋品店。
松﨑靖さんが社長で、2店舗を経営。
その足利屋が毎月、
『虹の架け橋』を発行している。

新聞折り込みチラシのようにして配る地域情報紙。
毎月1日発行。

いつも発行前にメールで、お届けくださる。
その最新号の編集後記「靖ちゃん日記」。

11月23日(金)の勤労感謝の日は、
松﨑さんの娘さんの結婚式だった。

娘さんと腕を組んでバージンロードを歩き、
新郎に託して2人の後ろ姿を見送る。

その後、披露宴の最後は両親への花束贈呈。
松﨑さんの目に涙があふれた。

そこで松﨑さんの述懐。
「哲学者のソクラテスが
『君がよい妻を持てば幸福になるだろうし、
悪い妻を持てば哲学者になれる』
と言った。
新郎には幸福な哲学者になってほしいと思った」

幸福な哲学者。
まさに矛盾撞着語法の「オクシモロン」。
しかし松﨑さんらしくて、とてもいい。

日経新聞のスポーツ・コラム。
豊田泰光の『チェンジアップ』。
かつての西鉄ライオンズ黄金期の職人・豊田。

今朝のタイトルは、
「『微差が大差』の人生観」。
オリックス・バッファローズの森脇浩司新監督を取り上げた。
その新監督としての施政方針。
『週刊ベースボール』に掲載。

「僕は微差は大差だと思っている。
その日だけで見ればほんのわずかなことで、
取り上げるまでもないちょっとしたことでも、
それらが積み重なれば大差になる」

これ、商売の極意そのもの。

森脇浩司、大いに期待できる。

豊田は言う。
「常勝軍団といわれる球団は
日々細かいことを積み重ね、
少しずつでも前進している。
それを見逃したら、
永遠に追いつけない」

小売店舗のストアコンパリゾンをする。
その時にも、大向こう受けする新機軸もいいが、
日々細かいことの積み重ねとその前進ぶりこそ、
学ばねばならない。

豊田は続ける。
「練習は実戦の再現であり、
実戦は練習の再現でなければならない」

私は40歳代から50歳代にかけて、
ジュニアソフトボールの監督をしていた。
「練習は試合のように、
試合は練習のように」

それが私の口癖だった。

豊田は、森脇の成果を予想する。
「コーチとして下積みをしたといっても
勝てるとは限らないけれど、
その下の選手たちが『微差が大差』など、
たたき上げならではの人生観を学ぶのは間違いない」

これはマネジャーへの最大の評価である。

さて、今朝の日経「企業欄」。
「小売り・外食、値下げ競う」

第1にイトーヨーカ堂。
2009年春以来3年半ぶりに12月1日から、
食品約800品目と日用品約200品目の価格を
1~4割下げる。

それも全店一斉で、本腰を入れる。

アイワイは従来、全店一斉ディスカウントはやらなかった。
「個店対応」で店舗ごとの政策。

しかし、イオン、ダイエー、西友など、
1000品目以上の値下げを発表。
最後の最後にイトーヨーカ堂が、
「全店対応で値下げへの取引条件を改善」。

第2はテレビでも報じられたが、ニトリ。
約870品目の大規模値下げ。
こちらは2010年10月以来、2年ぶり。

似鳥昭雄社長のコメント。
「今後も継続的に、
最低500品目の値下げを打ち出していきたい」

記事は指摘する。
ニトリの「10月の既存店売上高は8.5%減。
2カ月連続のマイナス」。

プライべートブランド中心の品ぞろえで、
円高のメリットを享受し続けてきたニトリだが、
今年の年末商戦は「特別の展開」を意識している。

第3は、外食のゼンショーホールディングス。
全国の「すき家」約1880店で、牛丼価格の30円値下げ。
これは12月5日からの6日間限定。

牛丼並盛り250円。

もちろんここには、
吉野家ホールディングスの新フォーマット開発がある。
このブログで取り上げた「築地吉野家 極」の登場。

とはいってもまだ2店だから、
すき家全店に影響が出るわけではない。

ただしマスコミ報道で吉野家「極」が取り上げられるから、
それへの対抗策という意味が強い。
小売業、外食業ともに、
この年末商戦は「価格戦争」に陥る。

ただし、「値下げ合戦で先陣を切った西友は
7~9月期の既存店売上高が前年同期比1.9%減り、
営業赤字に転落した」。

つまり、ディスカウント合戦が、
成果をあげるとは限らない。

記事はまとめる。
「小売り・外食業界ともに消耗戦に突入するが、
値下げ効果は限定的との見方もある」

意味するところは、つまり、
第1に「消耗戦の突入」は確実。
私は「無呼吸泳法」と呼ぶ。

それでも第2に「値下げ効果は限定的」。
価格競争しても客数は増えにくく、
売上げは上がりにくい。

では、どうしたらよいか。
「価値ある商品の値下げ」でなければ、
成果は上がらない。

しかし本来、
「他者が持たない価値ある商品」ならば、
値下げする必要はない。

その「他者が持たない価値ある商品」を、
値下げしなければならないのが、
今年の年末の特徴だ。

「他者が持たない価値ある商品」を、
社長自ら登場して広く事前告知したうえで、
ディスカウントする。
それが似鳥昭雄さんの作戦。

「早仕掛け・早仕舞い・際の勝負」。
早仕掛けの時期は、
事前告知合戦となる。
店頭・チラシ・テレビ・新聞、
さまざまなメディアを使っての広告宣伝合戦。

2003年11月発刊の『一勝九敗』のなかで、
ファーストリテイリングの柳井正さんが語っている。
「広告宣伝というのは
零点か百点しかない」

「広告は視聴者に到達してこそ広告であり、
中途半端なものは埋没し絶対に到達しない」

柳井さんはさらに続ける。
「『到達』とは視聴者が共感してくれて、
われわれが伝えたいと考えていることが伝わり、
結果が思い通りになるということだ」

足利屋洋品店の『虹の架け橋』や「靖ちゃん日記」も、
似鳥昭雄さんの自身の露出も、
そして柳井正さんの「視聴者への到達」も、
事前告知合戦の独自性を物語っている。

ただし、広告宣伝は
柳井正の「零点か百点」だが、
売場や店、商品は、
森脇浩司の「微差が大差」。

当然ながら、ともに必須。
以上、よろしく。

<結城義晴>


2 件のコメント

  • 結城先生へ
    『微差が大差』に
    販売革新11月号の「シニア対応100店調査」の特集で、
    おもしろい調査結果が出ていました。
    駐車場・店内環境設備等のハード面の達成度では大きい差はありませんが、
    接客(擦れ違い)の達成度の「笑顔であいさつしたか?」では
    達成率がわずか20.6%になっていました。

    米国の店舗視察の経験で業態を問わず、
    店員さんが擦れ違う時に
    「ハ~イ」と満面の笑みで挨拶された事を思い出しました。
    笑顔の挨拶が出来るか出来ないかは「微差」かも知れませんが、
    お客の側からは「大差」に感じます。

    厳寒の時候何卒お体ご自愛ください。

  • 一人ひとりの「笑顔」は微差かもしれませんが、
    それが全員となり、毎日毎日となれば、
    「大差」です。

    ご指摘の通り。

    『販売革新』もいい調査をしてくれますね。

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