芥川賞作家・津村記久子「コンビニの人」と小売業態3カ月天気予測
今日は朝から立教大学。
結城ゼミの今年最初のミーティング。
しかし正門は閉まっていて、
まだ通常の授業が行われているわけではない。
だからキャンパスはひっそりとしている。
「高村光太郎ふうにいえば」と、
『天声人語』を借りれば、
「人にいやがられる、刃物のような冬」。
しかし、マキムホール4階のゼミ室は暖かい。
全員が、一応、
卒業論文を終りまで書いて、
そのうえでの面談。
最後の最後の詰めを打ち合わせして、
仕上げにかかる。
来週の金曜日、20時30分が締切。
それを過ぎるともう一年やらねばならない。
私は「磨き」と呼んでいるが、
この作業が文章書き、論文作成には欠かせない。
一緒に頑張ろう。
今日の日経新聞最終面『交遊抄』。
「コンビニの人」
芥川賞作家の津村記久子さんが書いている。
「十年半勤めた会社の近くには、
コンビニエンスストアがあった。
昼寝のために昼休みの外食をやめて、
八年ぐらいの間、ほぼ毎日通いつめたと思う」
「その間、ずっと変わらず
店員さんとして働いていた二人のお姉さんがいた」
「雨の日も風の日も、
いいときも悪い時も、
二人はきびきびと
わたしの持ってきたものを
レジに通してくれた」
「わたしには密かに、
彼女たちのぶれない仕事ぶりが支えだった」
「昨年六月の退職の日も、
わたしはそのお店に昼ごはんを買いに行き、
一人だけいた方のお姉さんに
『今日で会社辞めるんですよ、もう一人の方は?』
と声をかけた。
とても驚き、残念だと声をかけてくれたお姉さんは
『あの子も昨日突然やめちゃったのよ』と言っ て、
少しだけ泣いた」
「彼女らは今何をしているのだろう、とときどき考える。
わたしの会社員生活を支えてくれたお姉さんたちの、
楽しく、穏やかな日々を願う」
『交遊抄』は有名な人が、
有名な友人を紹介するのが常。
ところが津村さんは、
名もないコンビニの店員さんとの交遊を書いてくれた。
ありがとう。
2008年下半期に『ポトスライムの舟』で、
第140回芥川賞受賞。
昼は会社勤務、夜は小説執筆。
津村さんは、「自慢話や美談、説教などは疲れる」という。
この精神、とてもいい。
『やりたいことは二度寝だけ』(講談社刊)は、
津村さん初のエッセイ。
あとがきに書いてある。
「何も残らないし、ひたすら地味で意味も無いけど、
読んでる間少しらくになった、と感じていただければ
これ幸いである」
忙しかった年末年始商戦のあと、
こんな本に触れるのもいい。
さて昨日の日経新聞に、
産業景気予測特集。
恒例の『主要30業種の天気図』1~3月編掲載。
各業種の生産、販売、操業率、収益などから
担当記者が判断したもの。
生活分野カテゴリー業種では、
食品・飲料は晴⇒晴
繊維・アパレル 晴⇒晴
医薬 曇⇒曇
家電 大雨⇒大雨
小売業の好調組。
コンビニ 晴⇒晴
ネットサービス 曇⇒晴
記者の感覚がわかる。
これに対してローソン社長の新浪剛史さんのコメント。
「コンビニエンスストアは、
安さでスーパーにかなわない。
付加価値競争が重要だ。
各社の出店攻勢で既存店の状況は厳しいだけに、
売上高を追うのではなく、利益にこだわる。
例えば、レジで注文を受けてから提供するコーヒーは
粗利益率が70%程度と高い。
デザートやサンドイッチなどを同時に購入するケースも多く、
もっと売っていきたい。
接客力が上がるとおせち料理の予約が増えたり、
固定客がついたりと効果も大きい」
津村さんの「コンビニの人」は、
自然な接客力を出していた。
小売業は業態別に分類され、曇組が大半。
百貨店は曇⇒曇
ドラッグストア 曇⇒曇
J・フロントリテイリング会長の奥田務さんのコメント。
「将来への不安や電気料金の引き上げなどで
消費を取り巻く環境は厳しい。
高額の衣料品や宝飾品などでは
スーパーで見られるような単価の下落は起きていない。
上質なものを求めるニーズは底堅い」
コンビニも百貨店も、
経営者は不思議に、
「スーパー」を意識している。
サービス業も曇組。
外食 曇⇒曇
旅行・ホテル 曇⇒曇
そして、ひどく悪いのが、みんなが意識するこれ。
スーパーは雨⇒雨
新浪さんも奥田さんも、
たとえに使うが、
こちらは雨模様。
ただしいつも思うが、
この「スーパー」は二つの業態が包含されている。
日本の商業統計小売業態分類でいえば、
「総合スーパー」と「食料品スーパー」。
前者の年商約6兆円、後者は17兆円。
合わせれば、23兆円。
国際的・学術的に言えば、
ハイパーマーケットとスーパーマーケット。
アメリカでもヨーロッパでも、
小売業の中核となる2大業態。
これが分類されていれば、
総合スーパーは雨でも、
食料品スーパーは曇くらいにはなるはず。
なにしろ、食品・飲料は、晴⇒晴なのだから。
こんなところで目くじら立てるのはやめよう。
読者の側で、そのくらいは読み取る必要がある。
このブログはそのお助けをするだけ。
「ひたすら地味」でも「すこしらく」を与えてくれる作家・津村記久子さん、
「コンビニの人」の「楽しく、穏やかな日々を願う」津村さん。
正月週間が今日、明日の土日で終って、
来週から通常営業に戻る。
お疲れ様。
「今日も一日、優しく、強く」
良い週末を。
〈結城義晴〉