平成24年度「財界経営者賞」で平和堂・夏原平和社長が受賞
春が訪れたかと思うほど、
暖かい横浜。
つい「小春日和」などと言いたくなるが、
「小春」とは陰暦10月のこと。
今流の太陽暦では11月頃にあたる。
晩秋から初冬にかけて、
移動性高気圧に覆われた時など、
穏やかで暖かい陽気となる。
それが小春日和。
残念ながら今日は、小春日和ではないが、
もう本格的な春かと勘違いさせるほどの日和。
そんな日に、おめでたい話。
一昨日1月10日、
平成24年度「財界賞」「経営者賞」の贈呈式があった。
㈱財界研究所主催。
「百万人行かずとも我行かん」
「この日本国を蘇生させる」
こんなスピリッツを持つ財界人、産業人を表彰する。
『財界』創業者は三鬼陽之助。
1907年生まれの明治人。
㈱商業界創業者の倉本長治主幹は、
1899年生まれだから、
三鬼よりも8つ年上になる。
三鬼はダイヤモンド社、東洋経済新報社などを経て、
昭和28年に㈱財界研究所を創設し社長となり、
同時に『財界』を創刊、主幹となる。
㈱商業界は昭和23年創立、
月刊『商業界』も同じく昭和23年の創刊。
どちらも『財界』よりちょっと伝統がある。
倉本長治と三鬼陽之助は、
知り合いだったに違いない。
私も現在の村田主幹とは、知友である。
その三鬼の思いは、
「経営者にも文壇の芥川賞、直木賞のような賞があるべきだ」
そこで『財界』創刊の昭和28年度から財界賞を創設、
経営者賞は昭和30年度にスタート。
私は㈱商業界社長のとき、
同じような趣旨で、「商人大賞」をつくった。
2005年第1回受賞は、
ファーストリテイリング柳井正さん。
2006年第2回は、
ロックフィールドの岩田弘三さん、
2007年第3回は、
コメリの捧賢一さん。
そして2008年第4回は、
スタジオアリスの本村昌次さん、
2009年第5回は、
びっくりドンキーの㈱アレフ庄司昭夫さん。
庄司さんは故人となってしまった。
ここで商人大賞は途切れた。
私も商業界社長を退いていたし。
だから財界賞が59年も続いていることに、
敬意を表している。
私は行けなかったが、
商人舎編集チームが取材。
所は東京・丸の内の東京會舘「ローズルーム」。
財界研究所社長にして、
『財界』主幹の村田博文さんがあいさつ。
村田さんは、「いま何よりも民間企業の成長が必要」と強調。
「今回の受賞者は様々な問題を抱える日本で、
需要創造に積極的に取り組んでいる経営者」と評価した。
次に、女子レスリングの伊調馨選手登場。
いわゆる花を添えるという役目だが、
アテネオリンピック、北京オリンピック、
そしてロンドンオリンピックの、
女子63kg級金メダリスト。
身長166cmだが、受賞者全員が、
フォールされてしまいそうなくらい勢いがあった。
続いてすぐに授賞式。
選考委員を代表して、
作家の堺屋太一さんがプレゼンターとなり、
受賞者に表彰状とプレートが贈呈された。
その今年度の「財界賞」。
米倉弘昌さん。
日本経済団体連合会会長。
住友化学会長。
日本経済界のリーダーとして、
日中関係の改善に取り組んできたし、
政府に対しても積極的に発言してきた。
それが高く評価された。
「財界賞特別賞」は、
稲盛和夫さん。
日本航空名誉会長で、
ご存知、京セラ名誉会長。
当時78歳という高齢にもかかわらず、
経営破綻した日航の再建を引き受けた後、
わずか2年8カ月で再上場させ、
ナショナルフラッグを復活に導いた手腕が評価された。
「経営者賞」に選ばれたのは6人。
まず、岡藤正広さん。
伊藤忠商事社長。
「解は現場にある」をモットーに、
資源分野に偏らないバランスに優れた商社経営に
取り組んでいることが評価された。
続いて、東日本旅客鉄道会長の清野智さん。
東京駅丸の内駅舎を、
国のシンボルとして再生させたほか、
東日本大震災でも新幹線の無事故を守った。
安全への取り組みなどが評価された。
次は、
高原豪久さん。
ユニ・チャーム社長。
新興国への積極的な展開で業績好調。
現地浸透し、需要創造する企業のお手本との評価。
4人目は、
YKK会長CEOの吉田忠裕さん。
ファスナー最大手企業として、
世界71カ国・地域にグローバル展開。
その経営手腕が評価された。
そして、小売業界からは、
平和堂社長の夏原平和さん。
昨年9月の反日デモで、
中国・湖南省の店舗が破壊・略奪された。
現地幹部・従業員とともに、
わずか1カ月半で営業を再開させた。
その現地社会と一体となった経営が、
大きく評価された。
審査委員長・堺屋さんから授与され、
嬉しそう。
最後は木村皓一さん。
ミキハウスの三起商行社長。
「子供服のベンツ」と言われるまでに、
ミキハウスのブランド力を向上させ、
値下げをせずに経営。
さらにスポーツを支援し、
五輪メダリストを輩出している。
祝辞は日本商工会議所会頭の岡村正さん。
東芝相談役。
そして乾杯の音頭は、
キッコーマン名誉会長の茂木友三郎さん。
昔の財界賞は重厚長大産業が主流だった。
しかし村田さんの時代になって、
軽薄短小産業や小売り・サービス産業の経営に、
多くの賞が贈られるようになってきた。
当然のことではあるが、
とてもいい方向にある。
平和堂、ミキハウス、
ユニ・チャーム、YKK。
経営者が代表して賞をもらったが、
これは全従業員の名誉ある受賞だと思う。
そのことを私は強調しておきたい。
日本の平和堂の皆さん、
中国の平和堂の皆さん、
心よりおめでとう。
〈結城義晴〉