クレオ講演「Tide of Time」とSMトレードショー開幕
訃報。
2月8日、松本清さん、逝去。
㈱スーパーアルプス代表取締役会長。
肺の難病を患って、療養中だった。
テレビタレントに負けないカッコ良さ。
ゴルフはシングルの腕前。
それでいてスーパーマーケットが大好き。
商品が大好き、人が大好き。
間違いなく次代のリーダーだった。
無念でならない。
心より哀悼の意を表し、
静かに見送りたい。
合掌。
フリーアナウンサー住吉美紀さん。
NHKを退社した後、大活躍。
一昨年の商人舎忘年会に出てくれたが、
その後、仕事に忙殺されて、
最近はインフルエンザにかかってしまったほど。
レギュラーの仕事だけで4本。
フジテレビ系「知りたがり!」は、
月曜日から金曜日までの毎日14:00~15:52。
TOKYO FMの「Blue Ocean」も、
ウィークデーの毎日、8:30~11:00。
BS朝日「おスミつき」は月曜日の22:00~。
そしてサンデー毎日の対談「すみきちのぶっちゃけ堂」は、
毎週火曜発売。
その対談の相手に、作家の高村薫さん登場。
高村さんの最新作『冷血』の発売記念イベントで、
丸善書店丸の内店で公開対談が行われた。
その模様が『すみきちブログ。』に掲載されている。
「この『冷血』は、読み切るのが
ある意味“しんどい”作品だ。
それは、読み手に逃げ場がなくなるから」
高村作品はほとんどこの手の小説だ。
「細かな感覚や感情の動きを
ひとつひとつ並べるように人間の内面を描く執拗さは
まるで点描画だ」
住吉美紀は観察力もあるし文章力も上級。
「しかし、私たちはしんどくても、
先を先をと読み進める欲望を掻き立てられる。
それは、そこに描かれる、単純ではない人間の内面が、
自分が日常的に追われている、
自らの感情の執拗なモヤモヤと重なるから」
そして結論付ける。
「つまり、快、不快を超えた共感と現実味を覚えるのだ」
この対談で住吉美紀の心に、
いちばん鋭く刺さった高村薫の指摘。
「今の世の中、
短い言葉で上手く言い表すことを
好む傾向がある」
鋭い。
感服。
「テレビのコメント然り、ツイッターの140文字然り。
正解・不正解、善・悪……いろいろなものが
あまりに単純化されて語られることの多い昨今」
まさにその通り。
これを「短絡」と称する。
「高村さんのように、敢えて
その逆に挑む方がいるというのは、
今の日本にとっては救いではないか。
少なくとも、私は高村さんとお話をして、
なんだかホッとしたのである」
点描画のように、
あるいはロシア文学のように、
あるいは長編論文のように、
丹念に、執拗に、
コツコツと重ね、積み上げていく。
小売業の仕事とは、
本来、そんなものだ。
「エイやっ」と、
やっつけるものではない。
それをウォルマート創業者のサム・ウォルトンは、
こういった。
「Retail is Detail」
私は訳した。
「小売りの神は細部に宿る」
さて、今日は、朝から原宿へ。
㈱クレオの社内スタッフ向けの講演。
9時半の原宿竹下通りは閑散としている。
会場はクレオ本社の会議室。
クレオは、昭和39年に創業。
POPの印刷物製作からスタートし、
現在はスーパーマーケットを中心に、
マーケティングおよび広告・プロモーションの
トータルエージェンシーとして活動している。
社員数485名、年商111億円。
その社内教育のためのセミナーが、
今日から3日間行われるが、
私は初日の講義を担当する。
横井司社長をはじめ、
経営幹部、スタッフの皆さん、
60名ほどの聴講者が集まってくれた。
私のテーマは「2013チェーンストアのTide of Time」
現在の日米欧の最新動向を、
スライドを使って解説した。
ホワイトボードを使って、
「コンバイン」の概念を、説明。
伝えたいことが山ほどあって、
90分の講演が、120分ほどに延長。
最後に質疑応答の時間をとった。
横井社長が「アルディ」について質問してくれた。
長い時間のご清聴、心から感謝。
その後、昼食をいただきながら情報交換。
私の隣は、担当してくれた倉林武也さん。
教育研修部部長マーケティングプランナー。
その横は大阪から聴きにきてくれた藤野英人さん。
執行役員大阪第一営業部長。
倉林さんは私の最新刊を持ってきてくれた。
『1秒でわかる!小売業界ハンドブック』(東洋経済新報社刊)
もちろん、その場で、サイン。
マーケティング・カンパニーの人たちだから、贈る言葉は、
「鳥の目 虫の目 魚の目 心の目」
ありがとう。
一方、東京ビッグサイトで開幕したのは、
第47回スーパーマーケット・トレードショー2013。
会期は15日までの3日間。
初日の今朝は、
同時開催の第8回こだわり食品フェア2013との合同開会式。
開会の挨拶は㈱アークス社長の横山清さん。
フェアを主催する新日本スーパーマーケット協会会長。
横山さんからは、
今回のショーの出展者数が1370社・団体、2625小間になり、
前回を上回ったとの報告があった。
インフレファイターを自任する横山さん。
消費税増税やインフレターゲットなどの難しい課題を、
新内閣とともに乗り越える意気込みを語った。
続いて、来賓挨拶。
農林水産省からは事務次官の皆川芳嗣さん。
日本食文化を世界遺産にして、
巨大な世界の食料市場を取り込みたいと挨拶。
経済産業省からは、
大臣官房審議官の羽尾一郎さんが挨拶。
食のサプライチェーンを強化して、
高付加価値化や効率化を支援したいと語った。
その後、壇上でテープカット。
10時20分からは、
横山会長による恒例のSMTSスピークス。
「食の終焉とスーパーマーケット」
グローバリゼーションは人類を幸せにするのか、
という問いがテーマだ。
資源・食料価格の高騰、円安、作況の不確実性。
本当に様々な課題がある。
「昨日、今日と同じように、
明日が当たり前にやって来るのだろうか」
そんな危機感が横山さんにはある。
2014年には消費税の引き上げを控える。
食品スーパーマーケット業界は、
厳しい安売り競争の真っ只中にある。
だから消費税増税のインパクトの大きさを、
身をもって知っている。
物価が上昇し、デフレは緩和され、
不況を脱出できるに違いない。
そうした楽観的シナリオに対して、
横山さんは「身構えている」ようだった。
身構えるときの姿勢は、もちろん、
「Retail is Detail」
「小売りの神は細部に宿る」
こうでなくてはいけない。
しかしスーパーアルプスの松本清さん、
本当に残念だ。
心が痛む。
再び、合掌。
〈結城義晴〉