結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年02月16日(土曜日)

日本スーパーマーケットシステムの父・北野祐次逝く

訃報、再び。

北野祐次、逝く。
享年90。

2月12日午前3時46分。
肺炎のため逝去。

関西スーパーマーケット名誉会長、
オール日本スーパーマーケット協会名誉会長。

それよりなにより、
日本の食品スーパーマーケット産業に、
これほど重大な影響を与えた人はいない。

北野さんが創り出した「システム」が、
日本のスーパーマーケット全体に普及し、
それをここまで進化させた。

いや、「システム」の概念を、
悪い意味での職人の世界であったスーパーマーケット業界に、
はじめて定着させたのが北野さんだった。

鮮魚部門を筆頭とする日本の鮮度管理システムは、
間違いなく世界最高峰である。

アメリカやヨーロッパのそれよりも、
はるかに完成度が高く、
世界一厳しい目を持つ日本の消費者に、
満足を与える仕組みは、
北野祐次によって生み出された。

それはまったく、
信じられないほどのイノベーションだった。

私は1977年4月1日に、
㈱商業界に入社し、
『販売革新』編集部に配属された。

そしてすぐに関西スーパーに取材に出かけ、
当時の北野祐次社長に面会した。

とにかく何でも公開して、
包み隠さず教えてくれた。

翌1978年の初めに、私は、
「関西スーパー1週間研修」を体験した。

伝説の店「関西スーパー広田店」がオープンした直後で、
この店は日本中のスーパーマーケットのモデルだった。

私はそのモデル店で、
1日ずつ、青果・鮮魚・精肉・グロサリーの4部門を学び、
さらに店長実務の研修を受け、取材をし、
『販売革新』誌に、連載特集を書いた。

大ヒットした。
それがもととなって別冊『関西スーパースタディ』が生まれた。
これは日本のスーパーマーケットの教科書になった。

そしてこれが、私の原体験となった。
結城義晴に、
スーパーマーケット応援団となる決意をさせた。

北野さんは大正13年の生まれ。
20歳で徴兵され、幹部候補生となる。
しかし終戦。
戦後、すぐに国鉄に入る。
北野さんの仕事の体験はここから始まる。
本当によく働いた。

その後、結婚し、国鉄を辞め、
鰹節の卸売の商いに転職。

その取引先がスーパーマーケットだった。

北野さんは卸売業の掛け売りの苦しさを味わっていた。
その売掛金を回収に行った先で、
スーパーマーケットを目撃した。
福岡県小倉の丸和フードセンターだった。

スーパーマーケットでは、
顧客がわざわざ現金で買い物に来てくれる。
セルフサービス方式で自分で買って帰ってくれる。

衝撃を受けた北野さんは、
自分もスーパーマーケットを起業する。
1959年(昭和34年)12月のことだった。

最初は苦労の連続だった。

しかし活路を求めて、1967年(昭和42年)、
初めてハワイに赴く。

「タイムズ」という店の店長に言われた。
「食べるものだけ売るのが、
スーパーマーケットだよ」  

これが、北野さんの原点となった。
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「今晩のおかず屋」というわかりやすいコンセプトも、
ここから導き出された。

コンセプトが固まれば、
あとはシステムづくりに邁進するだけ。

それが「関西スーパー・システム」となった。

私は2009年の夏、
北野さんにインタビューした。

北野さんは、
スーパーマーケットへの「愛」を、
語ってくれた。
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スーパーマーケットを語れば語るほど、
北野さんは元気になっていった。
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「最後は『人』です。
その人の『和』です」
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北野さんはそう言って、
大きな額の書を、指さした。

私たちは並んで写真を撮った。
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その後、2010年2月19日、
関西スーパー創業50周年感謝の集いが、
開催された。

私は記念講演をした。
「スーパーマーケットの100年を考える」

記念式典の後の懇親会の冒頭で、
北野さんはご挨拶をされた。
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それが最後の公のスピーチとなった。

今は、静かにご冥福を祈りたい。

「日本のスーパーマーケットは、
大丈夫ですよ。
立派な産業として、
現代化を果たします。
関西スーパーも井上保社長を中心に、
北野さんの遺志を継ぎますよ。
みんなで応援しますよ。
安らかにお眠り下さい」

合掌。

〈結城義晴〉


4 件のコメント

  • 「関スパ」「北野社長」といえば、我々世代には、
    巨人、大鵬、たまごやきに匹敵する偉大なる企業と人です。
    最近、尊敬する大先輩たちが、多く他界されることがすごく寂しく感じています。

    合掌

  • 北野先生のご逝去を悼み心よりご冥福をお祈り申し上げます。先生のご功績は結城氏の言葉そのものです。敢えて補足すれば、先生のご功績がなければSM業界はいまだ五里霧中にあったと思っています。現役を引退された後、それまでお世話になったお礼を申し上げたくお目にかかれたことをありがたく感謝しています。 ダイエー入社間もなく中内さんの紹介状を携えて、当時、革新的な週間補充システムを開発していた関スパ伊丹店でご指導をいただいたことはその後の私の小売業ビジネスに対する思想と情熱に多大なる糧となりました。北野先生、安らかにご永眠ください。

  • 小濱裕正さま、ありがとうございます。
    小濱さんからこんなお言葉を頂戴し、
    北野さんはもちろんのこと、
    関西スーパーマーケットのみなさんも、
    オール日本スーパーマーケット協会の皆さんも、
    もちろん私もうれしく思います。

    ありがとうございます。

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