結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年02月28日(木曜日)

バンコク・サイアム地区のセントラル・グループとビッグCと「業界話」

2013年2月最後の日。

朝6時ごろに羽田空港到着。
タイはバンコクから6時間で帰国。

現地時間夜の10時半の搭乗で、
6時間弱のフライト、
そして時差2時間。

日本について、まるまる1日が活用できる。

しかしフライト中にずっと熟睡できるわけではない。
だから活用できるけれど、辛い。

帰国し、帰宅して、朝風呂につかり、
すぐに東京・芝へ。
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東京タワーをみると、
日本に帰ってきたんだなあ、
という感慨がわいてくる。

これ以外に、この感慨を味わわせてくれるのは、
富士の山だろうか。

芝・大門、カスタマー・コミュニケーションズ㈱。
定例の取締役会。

米倉裕之社長以下、
社員・従業員、みな頑張って、
会社がどんどんよくなっている。

役員会が終ると、
すぐに上野駅から常磐線スーパーひたち23号に乗って、
福島県の湯本駅へ。

㈱マルト創業50周年記念式典に参加。
その模様は明日のこのブログで。

さて、糸井重里の『ほぼ日刊イトイ新聞』。
巻頭言は「今日のダーリン」。

糸井重里が、「業界」について書いている。
「なんとなくなじめない話というのがあります。
それは、じぶんのいる『業界』を憂えることです」

「仮にね、お笑いの業界の人である芸人さんが、
『この業界は、いまこんなふうに苦しい』
というようなことを熱心に話し合ってるようなこと」

「映画業界であろうが、農業の世界であろうが、
家電業界であろうが、出版業界であろうが、
広告業界であろうが、レストラン業界であろうが、
どこも、『業界としての行き詰まりや欠点』があります」

糸井さんはズバリ言う。
「『業界全体』について憂えたり考え込んだりするのは、
まず最初にやることじゃないだろう、という気がします」

賛成。

「業界全体に逆風が吹いているときでも、
じぶんは、どういう仕事をして前に進むか、
つまり稼いでいくかを考えることが
第一だと思うのです」

業界のことよりも、
自分の店、自分の企業、
自分の仕事を語りたい。

「『最近はレストラン業界は、どうなんだろう』
と真剣に語り合ってるレストランよりも、
『なんとかおいしい料理を出して、よろこんでもらおう』
と、一所懸命に腕をふるっている店のほうが、
お客さんたちも通いますよね」

「なんか、ほんとはするべきことから逃げて、
みんなが『業界話』ばかりしてる気がするんだよなぁ」

糸井さんは『ほぼ日』というインターネット業界にいて、
日夜、そのイノベーションを考えている。

だから「業界話」のつまらなさを理解することができる。
私もそう思う。

さて、タイの小売業レポート。
近代化された主な小売業企業は、
セブン-イレブンを展開するCPオール、
テスコロータスを営むエカチェイ・ディストリビューション・システム、
ハイパーマーケットを展開するビッグCスーパーセンター、
百貨店を主体にしたセントラル・バッタナー、
そして同じく百貨店のザ・モール・グループ。
以上がベスト5。

2009年の数値でちょっと古いが、
CPが1370億バーツ、
テスコロータスが1123億バーツ、
ビッグCが703億バーツ、
セントラルが574億バーツ、
ザ・モールが401億バーツ。

1バーツは現在、約3.1円だから、
それぞれ3倍してもらえば、日本円での規模がわかる。

コンビニのセブン-イレブンはガリバー状態だが、
他の業態はそれぞれに、ほぼ2社ずつが、
マーケットを分け合っている。
つまり「複占」の状態。

私たちが最初に訪れたのは、
バンコク中心部のサイアム・スクエア。
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まず、
商売の神様の前で、
合掌。

この地区の中核は、
セントラル・ワールドプラザ。
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セントラル・バッタナー・グループが、
2006年にオープンさせた巨大複合商業施設の核店舗。

セントラル・ワールドプラザを真ん中に、
ZENと伊勢丹の3つの百貨店で構成される。
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さらにホテル、ワールドトレードセンターが隣接する。
総敷地面積は100万㎡と東南アジア最大級。

セントラルワールドには、
海外の人気ブランドショップから、
専門店チェーン、飲食チェーンなどが入っていて、
これは国際級。
つまり上海や香港、シンガポール、
さらに東京やニューヨーク、ロンドンにも劣らない商業集積。

国際級のショッピングセンターは、
国際空港と同じで、すぐに世界水準となる。

入口をはいると、コンコースには、
大きなシャンデリア。

中間層の上の層から、アッパーな客層を狙う。
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イギリスの「マークス&スペンサー」が入っている。
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アメリカのファストファッション「フォーエバー21」。
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そしてジャパン・テクノロジー「ユニクロ」。
この店がバンコク1号店。
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ショッピングセンター中央には、
大きな吹き抜けが設けられ、
回廊式のエスカレーターで上階まで運ぶ。
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その吹き抜けにプロモーションの垂れ幕。

セントラル・グループは、
主に3つのバナー名で百貨店を運営する。
第1がセントラル、第2がロビンソン、
そして第3が高級百貨店のZEN。

そしてセントラルグループは、
スーパーマーケットもチェーン展開している。
Central Food HallとTopsの2バナー。

このセントラル百貨店の7階に、
「セントラル・フード・ホール」がある。
まぎれもない高質スーパーマーケット。
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日本でいえば、
伊勢丹百貨店の中のクイーンズ伊勢丹、
そごう西武のシェルガーデン、
大丸のピーコックストア、
そして阪急百貨店の阪食、
そんな位置づけ。

入口のプロモーションスペースには、
ドライフルーツや果物味のチョコなどがカラフルに並ぶ。
その奥がフルーツ&ベジタブルコーナー。
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季節の果物プレゼンテーションが見事。
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オーガニック野菜も扱う。
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バルク販売のナッツ類。
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対面式のハム・ソーセージ売場。
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そして、これも対面方式の精肉売場。
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インストア・ベーカリー売場。
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ショーケース販売のチーズ売場。
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食品を宝石のように販売する。

右サイドには、冷凍食品、
グロサリー・HBCが配置されている。
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清潔感が漂うデリカテッセン売場。
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対面販売を強調する高質スーパーマーケットではあるが、
しかしこれはよくできたスーパーマーケットそのもの。

しかしこの店の特徴は、
フードサービスコーナーが売場に併設されていること。

お客は、その場で食べてもいいし、
持ち帰ってもいい。
ニューヨークのイータリーとまではいかないが、
かなり斬新な試みを展開。

パンやデザート・飲料を販売する「health brown」ショップ。
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サンドイッチやパスタを注文するグリルコーナー。
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ここには、カウンター席が設けられている。

こちらはタイ料理のショップ。
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小売りの売場とイートインコーナーの混在と融合。
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レジは2カ所で、ひとつは、
青果部門入口横にある3台のコンビニエンス・レジ。
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こちらはグロサリー・HBC売場の横にある10台のメイン・レジ。
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そして通路をはさんだワインセラー。
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その横のカスタマー・サービスのコーナー。
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店長のChertsak Kanpakdeeさん(中)に話を聞いた。
右は、エスコートしてくれたチャチャイ・トングラタナハンさん。
タイ小売業協会専務理事。
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「2006年にオープンし、現在、1日客数は約5000人。
フードサービスと物販は1対9の比率。
さらに物販は、フードが7割、ゼネラル(その他)が3割。
130人体制で運営している」

店長として心掛けていることは、
「クレンリネスの徹底です」。

店長は数値を日本のように、くわしくは知らない。
しかし、答えてくれた数値は、
現場をあずかる店長としての実感だろう。

さて、セントラル・ワールドプラザに隣接する伊勢丹。
セントラル百貨店とは通路で結ばれている。
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伊勢丹の5階に、
伊勢丹スーパーマーケット。
その入口では北海道スィーツフェア。
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セントラル・フード・ホールに比べると、
全体にせまくて、天井高も低い。
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日本人向けの、旧来のスーパーマーケットが、
百貨店の上階にあるという感じ。

品揃えは、日本製品が多い。

そしてこの精肉売場。
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スカスカの売り場に、愕然としつつがっかり。

それでも、日本人の固定客が、
しっかりとついている。
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惣菜売場は通路を挟んで別途展開。
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日本人客をターゲットにした店。

タイでは日本製品にあこがれる顧客が多い。
だからこの層をターゲットにした商売は大いに成り立つだろう。

ユニクロはジャパンテクノロジーを前面に出して、
現地の消費者をしっかりつかんでいる。

しかし伊勢丹はいつの間にか、
日本人をターゲットしてしまっている。
途端にマーケットは縮んでいく。

ターゲティングは、
確かなポジショニングによって、
客層を広げることができる。

これがポジショニング戦略の要の考え方。

そして、このサウヤム地区で、
セントラルワールドプラザと道を挟んで真向かいに位置するのが、
ビッグCスーパーセンター。
ハイパーマーケット業態を中核に展開する企業。
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ビッグCは、もともとセントラルグループの事業部門だったが、
フランスのスーパーマーケット企業カジノに売却された。
さらにこの企業が2010年にタイのカルフールを買収。
ハイパーマーケットの数は国内最大。

2階、3階がスロープで結ばれた総合スーパー。
1階にはテナントが入る。

2階は食品と日用品。
そしてドラッグストア。
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主通路は広い。
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カルフールが創造し、完成させたハイパマーケットの店づくりを、
忠実に再現している。

食品部門はベーカリーが導入部。
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ベーカリー売場から続く惣菜コーナー。
この惣菜コーナーは、持ちかえり用。
フライやミニ寿司など、
すぐに食べられる商品を対面でお勧めしている。
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鮮魚売場は、
氷を敷き詰めた平台で丸モノを販売。
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精肉売場では、多段セルフケースでのパック販売と、
平台ケースでのバラ販売を併用。
ひき肉も平台のバラ販売。
お客は必要な分だけすくって、袋に入れる。
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奥壁面には惣菜売場。
サラダやチキンローストなどが並ぶ。
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青果売場は売場全体のほぼ真ん中を占める。
ウォルマートのようなサイン。
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葉物コーナー。タイは野菜の種類が豊富だ。
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奥主通路沿いに冷凍食品コーナー。
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ビッグCのプライベートブランドのアイスクリーム。
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酒売場は時間帯によって販売できない。
だからこの時間は閑散としている。
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飲料売場では、ペプシの量販。
単品量販がハイパーマーケットの手法。
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2階のエスカレーターを登ると、
3階にはフェイスケア売場が登場する。
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2階のレジはごらんのとおり。
人がよく入っている。
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2階から3階へはエスカレーターで大型カートごと移動。
これはハイパーマーケットの常識。
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3階は、衣料品、家電、スポーツ用品、
それに家庭用品など非食品を展開。

主通路ではプロモーションアイテムを訴求。
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家電売場はまさにウォルマートのようだ。
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そして衣料品も比較的ハイセンス。
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タイでは、ほとんどの店が、
セキュリティシステムを入口に設けている。
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1階のテナントのひとつは、
イギリスのドラッグストア「ブーツ」。
現在はアメリカのウォルグリーンの傘下に入った。
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そして香港資本のドラッグストア「ワトソン」。
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ドラッグ・チェーンをほぼ、
隣同士で競い合わせている。

ビッグCスーパーセンターには、
実にお客がよく入っている。
高度成長時代を迎え、
中間層がボリュームゾーンとなってきたタイ。

日本の高度成長時代に、
ダイエーを中心とした総合スーパーが、
圧倒的な強さを発揮したように、
いまのバンコクでは総合業態が、
お客のニーズをジャストミートでとらえ、
ウォンツを満たす。

一方、コンビニが「後進の先進性」で、
異常に発達している。

ハイパーマーケットとコンビニに挟撃され、
食品スーパーマーケットは、
高所得層をターゲットとするしかない。


低所得層の食品ニーズは、
伝統的な市場が支えている。

この構造が、サイヤム地区を訪れるだけで見えてくる。

しかし、タイの小売業の人々は、
「業界話」で「内向きの論理」をもってはいない。
協会専務理事のチャチャイさんが、
そしてChertsak店長が、
それをよく示していた。

自分の仕事、自分の店、
そして自分の会社を、
より良くしようと考えていれば、
業界全体の衰退や低迷の話を、
語る暇はないのだ。

その意味でも、私たちは謙虚に、
タイ小売業に学ぶことができる。

〈結城義晴〉


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