結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年03月06日(水曜日)

イノベーションへ⇒伊勢丹新宿店とローソンのリピート率活用

春がやって来ている。
いい季節です。
私は本来、花粉症だが、
今年は昨年の4倍とも5倍ともいわれるのに、
それほどきつくはない。

帯状疱疹の薬を飲んだからだろうか。

もしそうだとすると、
帯状疱疹も悪くはないことになる。

昨夜、商人舎オフィスを、
立教大学大学院結城ゼミの第4期生が、
訪ねてくれた。
20130306161912.JPG
この春、見事修了して、マスターとなった3人。
私の隣から、
武藤麻代、内田憲一郎、香川耕太郎。

エノテカのワインをプレゼントされて、
とてもうれしかった。

さて朝日新聞の『天声人語』
堀口大学翻訳の批評家グールモンの短章。
「女を悪く云う男の大部分は
或る一人の女の悪口を云って居るのである」
なるほど、心当たりもある。

「人はごく狭い知見や印象で全体を語りがちだ。
だから文中の『女』は何にでも取り換えがきく。
たとえば若者、オジサン、アメリカ人、医者、新聞記者……
そして生活保護受給者もまた、しかりではないだろうか」

ごくごく狭い知見や印象で、
全体を見てはいけないし、
全体を判断したり語ったりしてはいけない。

まったくもって、
自戒とすべし。

さて日経新聞最終面の『交遊抄』
ヤオコー社長の川野清巳さんが、
「消えない絆」と題していい話を披露。

「全く異なる2つの個性を持つ恩人がいる。
ヨークベニマル前社長の故大高善二郎氏と現社長で弟の善興氏」

この出だしだけで、「同感」と相槌を打ってしまう。

「理論派でシャイなところもある善二郎氏は、
生き方を含め良き相談相手だった」

欲しい人材を採用できなかった時には、
「求める人は社内にいると
神様が言っているのではないか」。

「善興氏は逆に社交的で現実的なタイプだ。
仕事の細かいことまで相談に乗っていただいている」

「商売には近道はないよ」。

善二郎さんは、2006年に逝去。
善興さんは言う。
「関係を通じ積み重ねた絆は消えない」

私も善二郎さん、善興さん、
お二人と交遊があったし、今もある。

川野さんの文章を読んで、
ひたすら善二郎さんを懐かしんだ。

朝日新聞の記事。
「GE調査 日本の経営力低い?」

ゼネラル・エレクトリックが、
世界の経営幹部に行った調査。

昨年10月から12月に、
世界25カ国の3100社の経営幹部に尋ねた。
テーマは「イノベーション(革新)」

3100社の81%が、
日本は「環境整備が進んでいる」と答えた。

しかし日本の企業幹部は41%しか、
「環境整備が整っている」と答えなかった。

日本の自己評価は、
全12項目のうち7項目で25カ国中最下位。

海外からは高い評価、
自己評価は低い。

一橋大学教授の米倉誠一郎さんの分析。
これは「経営力の低さの表れ」。

経営力ともいえるが、
自信の欠如だろう。

イノベーションへの挑戦。

代表的な企業だけではない。
中小企業こそ、
この挑戦の精神は求められている。

挑戦といえば、
伊勢丹新宿本店の改装が終って全面開業。

三越伊勢丹ホールディングス大西洋社長のコメント。
「進化し続ける店。日本一、世界一を目指す」

目玉は情報発信スペース21カ所の新設。
これは定期的に内容が入れ替わる。
具体的には旬の商品やライフスタイルを提案。

投資額約90億円で、
初年度店頭売上高約2150億円の計画。
これは2011年度比5%増。

小売業のイノベーションへのチャレンジであることは間違いない。
必見の店舗が新宿に登場した。

日経新聞の記事。
「進化するコンビニ ビッグデータ、売れ筋発掘」
これもイノベーションの事例。
コンビニ年間売上高10兆円に迫る。

全国約1万店となったローソン
その大ヒット商品は「焼パスタ ラザーニャ」。
昨年10月の発売から20日足らずで100万食販売。
2秒に1食売れる計算。

ここには、ポイントカード「ポンタ」の購入データ活用がある。
現在の会員数は約5100万人で私も会員になっている。

誰が、どこで、何を、何回買ったかがわかる。
つまりID-POSデータ

私は今年がFSPとCRMの本格化元年だと唱えている。
フリークエント・ショッパーズ・プログラムと、
カスタマー・リレーションシップ・マネジメント。

ローソンが着目したのは「リピート率」。
同じ顧客が同じ商品を繰り返し購入する比率。

この数値が高いほど、
より息の長いヒット商品につながる。

私が取締役を務めるカスタマー・コミュニケーションズ㈱の、
ID-POS活用ノウハウのもっともポピュラーなものが、
この「リピート率」。
ABC分析では振り落とされてしまうデータだ。

「焼パスタ ラザーニャ」は発売初日で0.5%のリピート率だった。
通常の0.3%より高い。

例えば、昼食に食べた若い女性が、
仕事帰りにも買うケースが多かった。

ローソンはたった「0.2ポイント」の差を、
「ヒットの波頭」ととらえて、
「店に並べるスペースを一気に広げよう」と決めた。

コンビニはこれまでずっと「単品管理」で売れ筋を発見してきた。
それがポイントカードや電子マネーの普及で、
業界全体で年間延べ150億人分の膨大な購買履歴の「ビッグデータ」となる。

ローソンの新浪剛史社長
「ビッグデータの活用でコンビニの経営は大きく変わる」
ID-POS活用はローソンが一番進んでいる。

セブン‐イレブンは電子マネー「ナナコ」の購買データを活用する。
酒と惣菜の同時購入率を分析。

酒の品ぞろえを強化して同時購入率を調べると、
2011年春は28%だったが、12年夏には35%に上昇。

ファミリーマートは共通ポイント「Tポイント」を活用。
約300億円を投資して情報システムを刷新。

コンビニ業界あげてイノベーションへの競争を激化させる。

しかしこの記事は、
セブン&アイ・ホールディングス鈴木敏文会長の言葉で終わる。
「消費者が求めるのは新しいモノ。
データに縛られすぎると、消費者ニーズを見誤る場合がある」
いつもクール。
そしていつも正しい。

データがビッグデータになろうが、
現場で顧客を見て、
商売する原点を忘れてはならない。

〈結城義晴〉


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