消費増税「外税表示と還元セール禁止」/平和堂米国研修事前講義
日経新聞が一面トップで報じた。
朝日新聞は経済欄で記事にし、
讀賣新聞は掲載しなかった。
消費税増税に関連した政府の新方針。
三つある。
第1は来年2014年4月、
消費税が5%から8%に増税されること。
これがまず確定した。
第2は、「外税」を一時的に認めること。
2004年に消費税込みの総額表示が義務付けられた。
しかし「総額表示義務」を特措法案で時限措置として緩める。
2017年3月末まで「1000円+税」のような形で、
本体価格と消費税を分けて示す「外税方式」の価格表示ができる。
これは大いに評価できる。
そして第3に、これが問題になっているのだが、
「消費税分還元セール」などを禁止すること。
私自身は、国民が消費税を納めることは、
明確に認識してもらう必要があると考えている。
だから「消費税分」を小売業や卸売業、製造業が負担して、
それを「還元」と称するセールなど「邪道」だと思っている。
ただし政府がこれを「禁止」とするのは、
これは政府の「邪道」だ。
政府・自民党には、
「消費税引き上げに伴う転嫁対策に関するプロジェクトチーム」がある。
野田毅座長。
このプロジェクトチームが、
増税分の価格転嫁を円滑に進めるための「特別措置法案」を了承。
現在開催されている通常国会に提出する。
私が『食品商業』編集長だった1997年、
消費税は3%から5%に引き上げられた。
この時、イトーヨーカ堂が「消費増税分還元セール」を展開。
成功を収めるとダイエーやジャスコ(当時)などが追随。
しかしこの時、大手小売業が値引き分の負担を、
取引先に「協力」させるという事態が生まれた。
今回は、この「優越的地位の濫用」を防止するために、
「消費税分還元セール」などを禁止するという。
「優越的地位の濫用」は、独占禁止法違反で、
それはそれで厳格に処分すればいい。
そして消費税増税に関しては、
消費者にきちんと負担してもらうのが、
大人の国家の在り方だ。
たとえ邪道の「消費増税分還元セール」を、
小売企業がやったとしても、
これを禁止するのはいかがなものか。
ここには「士農工商」的なものが感じられる。
「士」が「商」を見下して「禁止」する。
私にはひどく不愉快だ。
しかし「還元セール」を展開する小売業は、
それが10%に上がった時にも、
さらに将来、もっと上がるときにも、
ずっと還元セールをやり続けるのか。
消費税を納めるのは、
そのことを決定した政治を選択した国民の義務である。
それを重く重く認識するポリティカルな国民をつくるためにも、
「消費増税分還元セール」などやるべきではない。
これは小売業側のポリシーの問題となるし、
商人としての在り方にかかわることである。
さて、昨夜、今日と、滋賀県彦根市。
昨日は店舗視察をした後、
夜は㈱平和堂の幹部の皆さんと情報交換。
コーネル・ジャパン第1期生・2期生・3期生と揃って、
その同窓会のようになった。
間もなく季節が終わろうとしている鴨。
老舗料亭「伊勢幾」の鴨鍋に舌鼓を打ちながら、
熱いひと時を過ごした。
右から、取締役店舗営業本部長の夏原行平さん。
一般食品営業部長執行役の福嶋繫さん(後ろ)。
取締役営業推進室長の夏原陽平さん。
そして常務取締役の平松正嗣さん(左)。
行平さんがコーネル1期生、陽平さんが2期生、
そして福嶋さんが3期生。
会話も食事も酒も進んだ。
愉しかった。
今日は朝から、
その㈱平和堂のアメリカ研修会事前勉強会。
場所は、南彦根のアルプラザホール。
平和堂は年に2回、アメリカ視察研修を行う。
私は、そのコーディネート役。
2011年から始まったアメリカ視察は、
店長やバイヤーといった中堅社員が対象。
すでに4回を数え、参加者も180名を超えた。
今年は4月と10月に開催される。
この事前勉強会では、
4月に参加する人たちと、
前回の参加者たちが一堂に集い、
情報を共有しあう。
全参加者数は85名。
前回の参加者たちは、
7人の代表が視察で学んだことを報告し、
その後、自らの仕事に取り組んだ内容を発表。
夏原平和社長をはじめ、
幹部、エリアマネジャーたちが、
その発表を聞いている。
そして鋭い質問が飛び、意見が提案される。
もちろん、私が一人ひとりの報告に対して、
講評する。
夏原社長は前回、アメリカ視察に同行、参加した。
最後にその夏原さんの総評。
「スーパーマーケットへの想いが大事。
想いが高くないと視察する意味がない。
昨秋、皆と一緒に視察し、
ポジショニングの重要性を共通の認識とした。
アルバートソンのようになってはいけない」
「アメリカだからできる、
日本では無理と思っては、
いけない。
お客様のために、
できることを実践したい」
夏原さんの口調がよかった。
「やろかと思えばできる。
無理やと思えばできない」
その通り。
一方、これから参加する人たちは、
前回参加者の発表を聞いて、
事前にイノベーションの方向性を学ぶ。
この連鎖が、何よりも貴重で、
企業として良い結果を生み出す。
昼食時には、前回参加した人たちのディスカッション。
積極的な意見交換で、
皆の顔も輝いている。
彼らが現場を変えている。
夏原社長も彼らへの想いを語る。
好循環の連鎖が起きている。
そんなことを実感しつつ、
次回の参加者たちへ、
事前の90分間のガイダンス講義。
成瀬義一先生の「商人よ、正人たれ」を、
冒頭で強調した。
中身は、
「鳥の目、魚の目、虫の目、心の目」。
そしてディスカッションと最後の講話。
次のツアーの団長は、夏原行平さん。
4月のツアーが楽しみだ。
報告会と事前勉強会が終了し、お疲れ様会。
夏原さん、経営企画部長・西川好人さんと一献。
ずっと一日中、話し続けた。
だから、ビールもワインも、近江牛も、
実に美味かった。
消費税増税に対しても、
アメリカからの学習においても、
いつなんどきも、
「商人」は「正人」であるべきだ。
そのことを強く感じた彦根での2日間だった。
〈結城義晴〉