鉄道の便利さ&スピードと小売業の破壊的イノベーション「フォーマット」
東急東横線と東京メトロ副都心線、
今日から相互直通運転開始。
昨夜、レール締結式が行われた。
すでにメトロ副都心線は、
西武池袋線、東武東上線と、
乗り入れ済み。
埼玉県西南部から横浜まで、
乗り換えなしで行き来することができる。
だから㈱商人舎最高顧問・杉山昭次郎先生も、
乗り換えなしで商人舎オフィスまで来ることができる。
私も直通で「飯能の流通仙人」のもとに赴くことができる。
飯能・横浜が直通になるからだ。
私自身は最低、週に2回は、
池袋の立教大学に通う。
自分の研究室に寄って、
教室に行って講義する。
その往復が何より便利になる。
東京急行電鉄の2013年度予測。
東急線全線で輸送人員が前年比1.8%増加、
運賃収入は24億円増加。
一方、東京メトロの副都心線の利用者数予測。
これまでの1日33万人から44万人に増加。
この私鉄と地下鉄の連携の背景には、
「鉄道離れ」のトレンドがある。
私鉄大手16社の輸送人員は、
12年3月期に前期比マイナス0.5%。
関東の9社はマイナス0.8%。
東急電鉄だけが増加。
一方、JR東日本も今日から、
秋田新幹線スーパーこまちの営業開始。
専門マニア的に言えば、E6系新型車両。
秋田・東京間3時間45分。
東北新幹線はやぶさのE5系も今日から、
国内最高時速320キロ走行を開始。
東京・新青森間最短2時間59分。
これは従来より11分の短縮。
このはやぶさの時速320キロは、
フランスのTGVと並ぶ速さで、
現在の世界最速となる。
鉄道離れに対しては、
便利さとスピードで補う。
しかし便利さと混み具合は、
二律背反の現象となる。
便利さやスピードという一方向への進化は、
「近代化」の方向である。
対する「現代化」とは、
「二律背反」を問題解決することだ。
鉄道関係者はどんな結論を導き出すか。深い考察が求められる。
さて昨日のブログでは、
JAPANドラッグストアショーの交流を紹介したが、
その日本のドラッグストア市場規模は、
2012年度5兆9408億円で、
これは前年比2.4%増。
成長率で初めて3%を割って、
ドラッグストアの急成長も一段落。
店数は全国に1万7144店舗。
日本チェーンドラッグストア協会の発表。
食料品の売上げは、
12年連続増加。
化粧品や医薬品は横ばい。
業態ごとに、
主力商品分野は年々、
伸び率が低くなり、
横ばいとなり、
やがて減り始める。
ドラッグストアは医薬品や化粧品。
スーパーマーケットは加工食品や日配品、生鮮食品。
総合スーパーは衣料品、住関連品、それから食料品になる。
コンビニも雑誌、飲料、加工食品・菓子。
どの業態を見ていても、
徐々に、主力部門や成長部門が伸びなくなって、
新しい部門やカテゴリーを、
「ラインロビング」しなければならなくなる。
ラインロビングとは、LineをRobすること。
つまり他の業種業態が販売している商品群を、
盗み取って、自らの業態にはめ込むこと。
スーパーマーケットでいえば、
生鮮食品と加工食品、日配品の商品構成に、
まず惣菜をラインロビングし、
酒カテゴリーをラインロビングし、
ベーカリーをラインロビングし、
いま、ドラッグや化粧品をラインロビングしようとしている。
やがてアメリカのウェグマンズやホールフーズ、
そしてイータリーのように、
フードサービスをラインロビングし、
その融合を図るに違いない。
ドラッグストアは医薬品の薬局薬店から始まり、
化粧品やグロサリーをラインロビングし、
酒や加工食品・菓子をラインロビングし、
いま日配品や生鮮食品、惣菜をラインロビングしている。
コンビニも便利商品・便利サービスから始まり、
惣菜・弁当・おでんとうをラインロビングし、
いま、生鮮食品へと入ってきた。
通常はこのラインロビングを重ねていくと、
新しいビジネスモデルが登場してくる。
そしてその時期はもうとっくにやって来ている。
それが私が提唱する「フォーマット」の時代。
こんな新しい商品が売れる。
こんな新しい技術がある。
それも小さな持続的イノベーションではある。
しかしそれが煮詰まってきたとき、
破壊的なイノベーションが起こる。
1930年のマイケル・カレンによるスーパーマーケット。
グロサリーストアからの業態転換だった。
1960年、ハリー・カニンガムによるディスカウントストア。
これはバラエティストアからの転換。
サム・ウォルトンもこの流れに乗って、
ウォルマートを開発する。
1980年代のスーパーストア、コンビネーションストア、
クォリティ&サービス・タイプ、リミテッドアソートメントストアなどなど。
これは1930年から50年経過した後の、
スーパーマーケットの第2の転換だった。
そして1988年のサム・ウォルトンによるスーパーセンター。
ディスカウントストアとスーパーマーケットの結合だった。
いずれも歴史に残る破壊的イノベーションである。
いま、何か、そんなことが起こるような気配だ。
鉄道の変革とドラッグストアの食品の伸び率低下から、
イノベーションの連想を抱く週末である。
〈結城義晴〉