ダイエーの「子会社化」と「流通・未来・自分たちでつくる会」米国へ
「イオン、ダイエーを子会社に」
日経新聞一面の記事。
「とうとう、この時が来たか」
私には、そんな感慨が強い。
企業総合面には、
「イオン、スーパー『1強』に
売上高5兆円超」。
現在、イオンはダイエーの第2番手の株主だ。
それでも流通企業グループとしては、
ダイエーはイオンの傘下との認識がある。
しかしダイエーの現在の筆頭株主は、
総合商社の丸紅グループ。
丸紅は2006年に、
産業再生機構からダイエー株式を取得、
翌2007年、再建のパートナーとしてイオンを選択。
保有株式は、
丸紅㈱が18.41%、
丸紅リテールインベストメント㈱が10.87%、
合計29.28%
その丸紅からイオンは、
株式公開買い付け方式で24%を取得する。
日本ではよく「TOB」と表現するが、
Takeover Bidの略。
英語ではTakeoverあるいはBidと短く表現したり、
アメリカでは、Tender Offerといったりする。
今回の目途は4月。
イオンが保有するダイエーの株式は19.85%。
丸紅から取得する24%と合計すると、
全発行済み株式の4割強となる。
これは主導権が、
丸紅からイオンに移ることを意味する。
現在、代表取締役会長の川戸義晴さん、
取締役専務執行役員の山下昭典さん、
そして取締役常務執行役員の川本敏雄さんがイオン。
山下さんはグループ事業管掌兼総務人事管掌、
川本さんは営業グループ長。
一方、代表取締役社長の桑原道夫さん、
取締役専務執行役員の山﨑康司さんが丸紅。
山﨑さんは商品グループ長。
そして取締役常務執行役員の白石英明さん、
取締役執行役員の玉虫俊夫さんが、ダイエー出身。
白石さんは財務経理管掌兼マネジメント・システム改革プロジェクトリーダー、
玉虫さんは総務人事本部長。
ここにイオンから過半数の役員が派遣されることになる。
イオンは純粋持ち株会社だが、
そこにダイエーが子会社として加わると、
その連結売上高は6兆円を大幅に超え、7兆円に近づく。
総合スーパーとスーパーマーケットを合わせた事業は、
イオンが4兆2000億円、ダイエーが8000億円で、
合計5兆円。
日経企業総合面の見出しはそのことを言っている。
ライバルのセブン&アイ・ホールディングスは、
イトーヨーカ堂、ヨークベニマル、ヨークマートに、
新たに傘下に入れた近商ストアを合計して約2兆円。
もちろんセブン&アイはコンビニのセブン-イレブンが、
単体として圧倒的なトップ企業であるし、
その加盟店売上高は3兆2805億円となるから、
両者拮抗していて、強みが異なってきたと見ることができる。
ダイエーに関して言えば、
2008年度以降、1期も最終黒字化ができていない。
日経の記事では、2013年2月期も赤字のよだうし、
既存店売上高は09年度から、
毎年2~5%ずつ前年割れが続く。
つまり、丸紅主導の現体制では、
再建ができていないという見方ができる。
総合的な判断として、ダイエーは今後、
イオンのもとに集中して、再び再建を目指す。
一方の丸紅は、
「ダイエーの経営から事実上、手を引くことで、
今後は川上分野の食糧事業などに力点をおく」。
日本チェーンストア協会の統計では、
2012年まで16年連続で既存店売上高はマイナス。
イオンと、その傘下に入ったダイエーは、
それを覆すための方策を探る。
日経の記事はこう結論付ける。
「地域密着に徹し、
拡大を望まないスーパーでない限り、
もはや選択の余地はない」
ここでいう「選択の余地」とは、
アークスを含めて、大資本の傘下に、
入っていくかどうかの選択の余地である。
地域密着に徹する。
急速な拡大を望まない。
これはローカル・スーパーマーケットの生き方だ。
この戦略を明確に志向しない企業、
あるいは戦術だけで戦略を持たない企業は、
M&Aの嵐の中に巻き込まれる。
「西友を傘下に置く米ウォルマート・ストアーズも
日本でのM&Aを志向する。
消費増税を控え、どの陣営と組むか、
選択を突きつけられる」
しかしイオンやダイエーにとっても、
ウォルマート西友にとっても、
もちろんセブン&アイにとっても、
規模の論理だけで問題が解決することはない。
働く人間のモチベーションや、
顧客の満足感を抜きにした成長はあり得ない。
エンプロイー・サティスファクションと、
カスタマー・サティスファクション。
規模がこの二つの要素に、
大きく好影響を与える仕組みを生み出さねば、
規模はむしろ足かせとなる。
さて私は、今日から渡米。
4月4日までダラスとサンフランシスコを巡る。
イオンリテールワーカーズユニオン主催の、
「流通の未来を自分たちでつくる会アメリカ版セミナー」。
そのコーディネート役。
全国のイオンリテールおよびグループ各社から、
推薦された優秀な組合員が集まってきた。
総勢48名。
朝7時、前泊した成田のホテルから
バス2台で成田空港へ向かう。
そして8時から、
成田空港の会議室で結団式。
ツアー団長は阪口浩一さん。
イオンリテールワーカーズユニオン中央執行副委員長。
私からもメッセージ。
今朝の日経新聞の記事を引き合いに出しつつ、
イノベーションの決意を迫る。
そして皆に贈った言葉は、
「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」。
この言葉をかみしめて9日間、
学び続けてもらいたい。
そして恒例の記念写真。
並び方をコーディネート。
ユニオンフラッグを掲げて、ガッツポーズ。
元気に、旅立ち。
野下聖子さんに見送られて出発。
野下さんは㈱イオンコンパス営業担当で、
今回のツアー企画をまとめてくれた。
心から、感謝。
では、行ってきます。
〈結城義晴〉