結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年08月13日(火曜日)

日本の高質スーパーマーケットと田村弘一・大久保恒夫・千野和利

蝉がジイジイ鳴いて、
盆の入り。

日本の夏。

帰省ラッシュで、
高速道路も公共交通も。
渋滞と混雑。

“雨に走れば”
9秒77。

モスクワの世界陸上。

男子100メートル走のウサイン・ボルトは、
雷鳴と強い雨のなか、
今季自己最高。

世界最高記録は、9秒58。
ボルト自身が2009年、
ベルリンでマーク。

熱闘甲子園。
真っ盛り。

優勝候補も古豪も新鋭も。
1回戦には都道府県すべての代表が出る。
だからこの時には日本人はみな、故郷の人になる。

暑いけれど、
やっぱりいい夏だ。
日本に生まれて良かった。

さて日経新聞・企業欄の記事。
「高級スーパー、消費上向き復権」

ケーススタディは、
成城石井と阪食の阪急オアシス。
クイーンズ伊勢丹、そして紀ノ国屋。

クォリティ&サービス型スーパーマーケットは、
アメリカで1980年代あたりから起こってきた。

しかし高級スーパーマーケットは、
それ以前からあった。

私たち日本の小売業関係者にとって、
一番馴染みの深い企業は、
ロサンゼルスのゲルソンズだった。
当時は新興のブリストルファーム、
サンフランシスコのドレーガーズ、
さらに全米の大都市郊外の高級住宅地に、
様々な高級スーパーマーケットがあった。

アメリカには大富豪がたくさんいて、
彼らは揃って高級住宅地に住んでいる。

1982年だったか、
私はゲルソンズのCEOアラン・シャーンに、
単独インタビューを試みたことがある。

シャーンは述懐していた。

「私は、このゲルソンで、
ハイスクールの時に、
ボックスボーイとして
仕事をスタートさせました。

そして大学に行って、その間もずっと、
ゲルソンで働き続けました。
そんな家族的な風土がゲルソンの特長なのです」

アラン・シャーンは、
もうひとつ印象的なことを言った。
「私たちは、
このビバリーヒルズで創業した。
だからこういったハイクラスの
マーチャンダイジングをする店になった」

さらに付け加えた。
「もしロスのダウンタウンで創業していたら、
ボーイズよりももっと上手に、
低所得の顧客に対応しているに違いない」

ボーイズとは、当時、
ロサンゼルス・ダウンタウンにあった店。
安売りのスーパーマーケット。

アメリカの場合、徹底的に、
地域対応・顧客対応していくことが大切であって、
高級化が良いというわけではない。

日経の記事は、
高級スーパーを表現する。
「通常のスーパーより
平均の商品単価が2~3割高い」

この記述は「高額スーパー」を意味している。

都市部の高所得層やシニア層。
彼らを中心に今、嗜好品の単価上昇傾向が出ている。
「高額のワインなどの販売が堅調だ」。

つまりアベノミクスで消費が堅調になってきたから、
高級スーパーが調子がいい。

そういった論調か。

初めに成城石井が登場する。
現在100店体制。
近年、年間10店ペースで出店を続け、
2013年12月決算期には、
新規出店数13~15店。

首都圏から近畿圏、名古屋圏も店舗網を拡大。

大久保恒夫前社長時代に、
新しい成城石井の基礎を築き、
原昭彦現社長もその軌道を外さない。

都心部の駅ビル、ショッピングセンター立地に、
売場面積100~600㎡の小型店舗を出店。

最近はこういった商業集積のリニューアルが盛ん。
だからおのずと出店スピードもアップする。

独自開発のマーチャンダイジングによって、
プライベートブランドも充実させ、
それを卸売りまでする。

このところ、高級スーパーマーケットは、
不振にあえいでいた。

その不況の中でも成城石井は、
「わが道を行く」の観あり。

同じく、不況でも好調だったのが、
関西の阪食。
店名は阪急オアシス。

千野和利社長就任以来、
「高質食品専門館」のコンセプトを標榜し、
三つの考え方を推し進める。
第1が専門性、
第2がライブ感、
第3が情報発信。

これらのコンセプトが実現され、
関西では抜群の「阪急ブランド」の上に、
成り立っている。
わたしはそれが、
阪食の最大の強みだと見ている。

「高質食品専門館」コンセプトを導入した店は、
平均売上高2.6%の伸びを示す。

一応、既存店のテコ入れが一巡。
2012~2013年度は5~6店の新規出店。
2014年度以降は毎年10店弱へと加速。

阪食は百貨店の食品売場から、
ショッピングセンターの店、
さらに商店街の小型店まで、
マルチ・フォーマットをこなす。

これも、出店スピードをアップさせる。

日本の「高級スーパー」といっても、
成城石井、阪食ともに、
「高質スーパーマーケット」を標榜する。

その「高質スーパーマーケット」の生みの親は、
クイーンズ伊勢丹だ。
故田村弘一社長時代に一世を風靡した。

田村さんは伊勢丹ブランドのファッション性を、
徹底的に活用した。

現在、三越伊勢丹ホールディングス傘下、
三越伊勢丹フードサービスのバナーが、
クイーンズ伊勢丹。

その後、低迷。
しかし今年5月末、
JR武蔵境駅高架下に出店。
来秋にはJR目白駅駅前に進出予定。

記事には紀ノ国屋も出てくる。
会社は売却され、現在、JR東日本傘下。
JR品川駅駅ビルに1年4カ月ぶりに出店。

スーパーマーケットは、
不況に強い商売だとされる。

しかしその中で高級スーパーマーケットは、
不況に弱い。

だから今、ちょっと良い兆しが、
見え始めたのかもしれない。

しかし長かったデフレ時代にも、
成城石井と阪食は成長していた。

本来、ここに、
高質スーパーマーケット問題の焦点がある。

記事には書かれていないが、
大事なことは三つ。

田村弘一さんが考え出したストア・コンセプト、
大久保恒夫さんが創り出したマネジメント、
そして千野和利さんのマーケティング。

それらに特徴を持つこと。
すなわちアウトスタンディングなポジショニング。

アラン・シャーンのゲルソンの、
徹底した顧客対応もポジショニングのためである。

蝉がジイジイ鳴いて、
盆の入り。

“雨に走れば”
9秒77。

熱闘甲子園。
真っ盛り。

日本の夏。
目いっぱい顧客を
喜ばせたい。

〈結城義晴〉


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