新約聖書とボブ・ディランとスカーレット・オハラの「明日という未来」
ボブ・ディランが来日して、
歌っている。
しかしまったく自分でギターを弾かない。
ピアノの弾き語りが多いそうだ。
日経新聞の文化欄。
ディランも72歳。
ずいぶんと変わった。
何もかも失ったときにも、
まだ未来だけは残っている。
私は今日、
仙台へ。
朝、東京駅から、
東北新幹線はやぶさに乗り込む。
蔵王の姿が見えた。
仙台に着くと卸センターへ。
TERAOKAニューバランスフェア2014。
ここで講演。
月刊『商人舎』2月号の特集タイトル。
そのまま講演の演題にした。
冒頭に新約聖書のローマ人への手紙。
「艱難が忍耐を生み出し、
忍耐が練達を生み出し、
練達が希望を生み出す。
この希望は
失望に終わることがない」
しかし、今日のテーマの本質は、
客数主義とホスピタリティ。
1時間40分、
あっという間に
終わってしまった。
ご清聴を感謝したい。
今日のDaily商人舎は、
西友 増税後に約400品目を
平均7.2%値下げでEDLP戦略徹底
西友というよりも、
ウォルマート。
そのイデオロギーともいえるEDLPを、
消費増税後の今、強調する。
当然のことだ。
今こそ、
自分の本来の戦略を、
前面に押し出して闘う時だ。
さて日経新聞一面コラムは『春秋』。
トヨタ生産方式をテーマにした。
「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」。
しかしこの方式のヒントは、
米国のスーパーマーケットから得られた。
「消費者は、セルフサービスで
食料品や日用品を手に取っていく。
まさに必要なときに、必要なものを――」。
ジャスト・イン・タイムの仕組み。
故北野祐次関西スーパー社長の、
「じゃんじゃん売れても品切れしないシステム」。
それがスーパーマーケットの本質。
昭和20年代のこと、
「自動車産業の競争力を
押し上げた新しい生産方式は、
流通業から刺激を受けての産物だった」
小売業にかかわるものにとって、
誇らしい歴史的事実だ。
『春秋』はこの後、
コメ生産農業法人の
トヨタ生産方式導入を指摘する。
一方、同じ日経新聞最終面『私の履歴書』。
今月は豊田章一郎さん、
トヨタ自動車名誉会長。
今日のタイトルは、「父の死」。
父・喜一郎社長の特筆すべき点。
「その一つは国際性だ」。
1929年、欧米に出張し、
フォードやシボレーと
正面から競合する大衆乗用車づくりを決意。
「2つ目はスピーディーな決断と実行」。
「最後に現場の重視」。
喜一郎氏はよく、
『ナッパ服精神』と言った。
小売業で言えば、
「前垂れ精神」だろうか。
「エンジニアだ、
工場長だといって、
きれいな作業服で
きれいな手でいたのでは
人はついてこないよ。
技術者の本分はあくまで
現地現物にあるんだ」。
ヘンリー・フォードは、
食肉の解体現場を見て、
オートメーションを思いついた。
小売業や食肉産業が、
20世紀を代表する自動車産業に、
貴重なヒントを与えた。
トヨタの「現地現物」主義は、
ウォルマートのサム・ウォルトンに通ずる。
Retail is Detail.
小売りの神は細部に宿る。
これも現場の細かなことが、
ことさらに大切だということ。
今年の商人舎標語は、
こまかく、
きびしく、
しつこく、
なかよく。
アンテナを張っていると、
毎日のようにわかることがある。
多くの事実や事例が、
ひとつの方向に向かっている。
意外にも、
わかりやすい時代に
突入したのかもしれない。
それにしてもボブ・ディラン。
何もかも失ったときにも、
まだ未来だけは残っている。
考えてみるとこれも、
わかりやすいテーゼだ。
映画「風と共に去りぬ」では、
主人公のスカーレット・オハラが、
最後の言葉をつぶやく。
“After all,
tomorrow is another day”
「明日は明日の風が吹く」なんて、
翻訳もあるが、
私は、このニュアンスは、
むしろディランに近いと思う。
「結局、
明日という別の日があるんだわ」
ビビアン・リーが強烈だった。
そして今日の講演。
「艱難が忍耐を生み出し、
忍耐が練達を生み出し、
練達が希望を生み出す。
この希望は
失望に終わることがない」
聖書は深い。
〈結城義晴〉