「Retail Executive Summit」のITは「早い、安い、柔らかい」
9月12日、
新横浜から東海道新幹線のぞみで、
一路、京都へ。
秋晴れの静岡県富士市。
あいにくの白雲。
それでも、山頂だけ、
うっすらと顔をのぞかせた。
富士の峰。
新幹線から富士が見えると
今日一日、何か、
良いことがあるように感じる。
京都に着いてすぐに、
ウェスティン都ホテルへ。
今日は午後から、
「Retail Executive Summit」。
マイクロストラテジー・ジャパン㈱主催。
マイクロストラテジー社を一言でいえば、
「BIツールを提供するIT企業」。
BIツールとは、
「Business Intelligence tools」の略。
ITはもちろん、
「Information Technology」。
IT用語辞典の「BI」の説明を、
私の言葉でちょっと書き換えるとこうなる。
「企業の業務システムの一種で、
蓄積された膨大なデータを分析・加工し、
意思決定に活用できるような形式にまとめる道具」
まだ分かりにくい。
「保管されている膨大な情報の中から
必要なデータを検索したり、
特定の形式でレポートにまとめたり、
多次元分析を行ったりすることにより、
事業部門長や経営層には意思決定を支援し、
一般社員には資料を作成したり
事業の進捗を把握する業務を支援する」。
従来は、外部の開発会社に委託して開発し、
情報システム部門が独占する傾向にあった。
しかしBIツールは、
詳しい知識がない利用者でも
操作できるよう設計されており、
オフィスソフトなどに似た感覚で操作できる。
実際にはパソコンはもちろん、
スマホやタブレット端末を活用する。
米国のペンタゴンをはじめ、
世界の組織や企業が、
この会社のサービスを活用している。
組織があるところには情報があり、
組織が大きくなればなるほど、
情報が増えれば増えるほど、
それを便利に使うために
システムやツールのニーズが生じる。
小売流通サービス業では、
グローバルTOP10のうち、
9企業がユーザーとなっている。
今回のサミットには、
ユーザーを代表して
オーストラリアの卸売業メットキャッシュ社、
アメリカのラグジュアリーブランドCoach社、
その代表者が訪日。
私は、基調講演。
そしてパネルディスカッションのモデレーター。
日本、アメリカ、オーストラリア、
それから中国、シンガポール。
各国の製配販の経営トップと幹部が、
40名ほどが集まった。
はじめにポール・ゾルファガーリさん。
マイクロストラテジー社プレジデント。
事業展開と小売業向けの最新サービスを紹介。
続いて結城義晴の基調講演。
テーマは
「商売が変わる・経営が変わる」。
60分の中で、
世界小売業と日本小売業の
趨勢と課題を語った。
世界中どこでも、
顧客が変わり、
商売が変わる。
すると商品が変わり、
店舗が変わる。
だから経営戦略が変わる。
その中心に情報がある。
ちょっと盛りだくさんで、
終りの方は早送りとなり、
同時通訳の方々には、
迷惑をおかけしたかもしれない。
コーヒータイム休憩に入ると、
全員での記念撮影。
撮影者は印藤公洋さん。
マイクロストラテジー・ジャパン社長。
ご自身所有の大型の一眼レフカメラでパチリ。
もちろんブログ用に、
印藤社長も加わり、
再度、チーズ。
続いてのセッションは事例紹介。
はじめに、ラッセル・パーカーさん。
豪州の卸売業メットキャッシュ社CIO。
CIOはチーフ・インフォメーション・オフィサー。
つまりは情報システム担当のトップ。
IT導入におけるガバナンスのあり方、
市場における適合性の見分け方、
リテールアナリティクスの有効性などを
CIOの立場から発表してくれた。
2人目はダニエル・シュメルキンさん。
コーチ社のシニアバイスプレジデント。
つまり副社長。
彼女の語り口は明晰。
高級ブランドビジネスを成功に導くために、
ビッグデータとモビリティを、
いかに活するか。
その考え方と実務を、
わかりやすく語ってくれた。
最後のセッションは、
パネルディスカッション。
ディスカッションテーマは、
「今、小売業が取り組むべき経営課題と、
それを支援するITのあり方とは」
パネラーは、今日の発表者に加え、
イオングループの縣厚伸さんの4人。
縣さんは現在、ツヴァイ社長。
はじめに、「情報」に関して、
モデレーター役の私から、
ふたつのことをおさらい。
そのうえで、4人のパネラーに、
2つの質問を投げかけた。
皆さん、質問には、
実に丁寧に答えてくれた。
その中から、
印象的な発言を一部紹介しよう。
「顧客は情報社会の中で、
その情報の大きな波に動かされている。
だから顧客のニーズの予測をし、
ニーズを吸収できる、
『マインドセット』が大事になる」
コーチ社のシュメルキンさん(右)。
「顧客を知り、ニーズを知り、
新たなドメインに対応するために
組織の枠を超えたIT活用が必須だ」
メットキャッシュ社パーカーさん(左)。
縣さんは長らく、
イオンの情報システム最高責任者だった。
そのキャリアに基づいて、
三つの有用な指摘をしてくれた。
「変化に対応しなければならない。
競争に勝つためにITを活用しなければならい。
しかし小売業は遅れていた。
経営者層には必須の要件となってきた」
「その時、成果に対して
コミットメントする体制が大事」
「IT活用に関して、
トップはビジネスを変えよと要求する。
ミドル層は売上げアップとコストダウンを求める。
現場は仕事が楽になり、その分、
顧客へのサービスレベルを上げたいと要望する。
各層で、ITへの期待は異なる」
「最適なオムニチャネルの構築が
求められているし、
競争相手より、
よりお客を知るためのIT構築が必要」
「経営トップにこそ、
ITへの理解が求められる。
IT戦略のない経営戦略はあり得ない」
縣さんの切れのいい発言と、
豊富な経験に基づく視点。
実に鋭かったし、
わかりやすかった。
私もITリテラシーの問題とレガシー問題、
さらに「ゼロ戦化現象」などを語って、
パネルディスカッションをまとめた。
情報システムは何よりも、
「早い、安い、柔らかい」で、
なければいけない。
そして情報システムはいつも、
顧客と現場を、
向いていなければいけない。
印藤社長のお礼の挨拶で、
サミットは無事終了。
忙しい中、
参加してくださった皆さんに、
心から感謝したい。
このところ、
紀文正月フォーラムといい、
このRetail Executive Summitといい、
パネルディスカッションは実に有益だ。
㈱万代社長の加藤徹さん。
㈱成城石井社長の原昭彦さん。
ほかにも多くの経営トップが参加してくれた。
ありがとうございました。
サミット終了後は、
バスで移動し、懇親の食事会。
会場は、老舗料亭「左阿彌」。
円山公園に敷地1000坪を有する閑静な料亭。
敷地内には、二つの茶室がある。
茶室の中で食事することもできる。
もちろんわれわれは、
大広間での食事会。
懇親会の挨拶は、
主催者のポール・ゾルファガーリさん。
乾杯の発声は、
突然の指名で結城義晴。
残念ながら懇親会まで残れない人もいたが、
それでも30名ほどが参加。
マイクロストラテジーのスタッフの皆さんも、
サミットを終えて、笑顔で参加。
楽しい会話と美味しい京料理。
いい懇親会だった。
㈱フジ社長の尾﨑英雄さん。
㈱オギノ営業企画室長の手塚帰一さん。
そしてコーネル・ジャパン奇跡の2期生の3人。
左から㈱関西スーパーの柄谷康夫さん、
取締役開発本部長。
万代の西水啓介さん。
現在、㈱スター社長。
右は㈱平和堂の夏原陽平さん、
取締役営業推進室長。
楽しい夕べだった。
「Retail Executive Summit」の成功を祝い、
最後にマイクロストラテジーの皆さんと。
右から印藤社長、
アカウントエグゼクティブの小泉潤一さん、
そしてセールスディレクターの北村守さん。
皆さん、お疲れ様でした。
初秋の京都。
例年より紅葉が早いという。
秋はもう、そこまでやってきている。
〈結城義晴〉