スコットランド独立否決「直接民主制」と星野仙一引退「幸と福」
独立に賛成が161万7989票。
反対が200万1926票。
32の自治体で投開票が終り、
NHKがBBCのニュースを和訳して、
インターネットで流し続けた最終結果。
スコットランド独立の住民投票。
登録有権者は約430万人。
投票率は多くの地区で80%を超える
賛成44.7%、
反対55.3%。
結果は「独立」が否決されたが、
投票までの動向は、
拮抗した。
そして大きな影響を、
現代社会に投げかけた。
一言でいえば、
民族主義の高揚だろう。
スペインのカタルーニャやバスク、
ベルギーのフランドル、
イタリアのシチリア。
中国では香港市民が、
現在の「一国二制度」の矛盾に、
見切りをつけかねない。
日経新聞欧州総局編集委員の大林尚さんは、
鋭い指摘をしている。
「民主政治の手続きを踏んだとはいえ、
今回の住民投票は英国という大国の帰趨(きすう)を
スコットランドの住民だけが左右する欠陥を抱えていた」
「EU周縁には2度の大戦を経て
英仏などが決めた国境線を
覆そうという動きがうごめく」
それでも、大林さんの結びの言葉はいい。
「直接民主主義という誰もが得心する手段で
新たな国境線が引かれるのを退けたのは、
さすが英国というところだろうか」
この直接民主主義による、
禍根を残さない方法論も、
今後の国際社会に、
影響を及ぼしてもらいたいものだ。
今日は一日、
横浜商人舎オフィス。
奥歯が疼く。
夕方、東京・広尾。
フランスレストラン「ア・ニュ」。
フランス語で「ニュ」は「裸」、
「ア・ニュ」は「ありのまま」。
ミシュランの一つ星。
そのフルコース。
絶品の一品がこれ。
フォアグラとトリュフのリゾット。
トリュフはこの固まりを、
惜しげもなくスライスしてくれる。
彦根での松茸と鱧に続く、至上の喜び。
今夜の仲間は、
本庄周介さん(左)と小泉潤一さん(中央)。
そしてオーナーシェフの下野昌平さん。
本庄さんは㈱伊藤園代表取締役副社長。
小泉さんはマイクロストラテジー・ジャパンの、
アカウントエグゼクティブ。
先のリテール・エグゼクティブ・サミットの事務局。
下野さんは本庄さんの義理の弟さん、
つまり妹さんのご主人。
そして本庄さんと小泉さんは、
大学時代のクラスメートで親友。
ともに私との縁で、
二人は25年ぶりの再会。
私もその仲間に入れてもらって、
超一流のフレンチとワインを堪能。
学生時代の話や、
食品業界、小売流通業界の話題、
そしてITの趨勢。
楽しいひと時だった。
酔っぱらった勢いの思いつきで、
最後に新しい「指標」づくりの提案をした。
みんな、憶えているだろうか。
帰りの首都高から見える東京タワー。
美しかった。
さて星野仙一。
成績不振の責任を取り、
今季限りで退任。
東北楽天ゴールデンイーグルス監督。
岡山県の倉敷商業高校。
かつての名門。
この時代、岡山県には、
後の大洋ホエールズの平松政次、
ヤクルトスワローズの松岡弘など、
凄いピッチャーがいた。
明治大学時代は、
ライバルの法政大学に、
田淵幸一・山本浩二・富田勝の三羽烏がいた。
懐かしいなあ。
田淵の大きな弧を描くホームラン。
もって生まれた才能にあふれていた。
星野はそれと格闘した。
プロ野球で中日ドラゴンズに入ると、
読売巨人軍のあの9連覇。
王・長嶋が仇敵だった。
1983年4月3日、
阪急ブレーブスとのオープン戦が引退試合。
先発投手として登板し、
先頭打者の福本豊にレフト前ヒットを打たれた。
福本は小柄な盗塁王。
努力に努力を重ねて、
自分の特徴を生かした。
星野の現役時代の通算成績は、
146勝121敗34セーブ。
現役引退してからは、
二度、中日の監督でリーグ優勝。
阪神タイガース監督でもリーグ優勝。
そして楽天で日本一を勝ち取る。
現役時代は不運の脇役、
マネジャーとなって花を開かせた。
サラリーマンも小売商人も、
こんな星野仙一には、
大いに共感するだろう。
体はプロとしてはふつう、
気力で闘う。
まあ、幸福な野球人生だ。
日経Web刊の『経営者ブログ』。
ユニ・チャーム社長の高原豪久さんが、
「幸福な働き方とは」と題して書いている。
1961年7月生まれの53歳。
39歳のときに、
創業者で父の高原慶一朗さんから、
社長をバトンタッチされ、
グローバル化戦略で、
ユニークな経営を進める。
井村雅代さんの言葉からブログを書き始める。
あのシンクロナイズドスイミング日本代表監督。
「超一流になりたければ、
良い点を伸ばすことは当たり前であり、
欠点を徹底的に潰さないと
超一流にはなれない」
「欠点を潰すには、
誰かが指摘しないといけない。
愛があれば叱りなさい」
まず高原さんは、この言葉を提案。
「真摯に受け止め、
勇気をもって実践すべき」。
ピーター・ドラッカーは、言う。
「自分の強みを知れ、
そしてそれを伸ばせ」
井村さんが言うのは、
「欠点を徹底的に潰せ」。
正反対。
しかし井村さんのは「超一流」の条件。
ドラッカーはすべての人へのアドバイス。
超一流は欠点があってはいけない。
だから欠点を潰すために、叱る。
長所を伸ばす。
その時には、褒める。
私は当然、ドラッカー派だ。
しかし会社には様々な人間がいる。
「愛をもって叱る」ことも必要だし、
「愛をもって褒める」ことも不可欠だ。
高原ブログは、
次の起承転結の「承」に展開。
「『幸』と『福』という二つの文字の意味は
実は大きく違います」
「幸」は、
「原因が自分にない、
偶発的に外部から与えられたこと」。
対して「福」は、
「原因が自分自身の努力や苦労によって
かち得たもの」。
「示偏(しめすへん)は神様を意味し、
旁(つく り)の部分は
『田畑の収穫で俵を積み上げた様子』を表します」
「神様が認めてくれるほどの
努力の積み重ねの結果が
福という文字の意味」。
このあたりはちょっと、
説教くさい。
余談だが、
星野の野球の話に戻ると、
田淵幸一は「幸」の人、
福本豊は「福」の人か。
「愛があるから叱る」こと、
「幸」と「福」の違い。
ユニ・チャームはもう一度、
これを徹底するようだ。
そして最後に、
「仕事の仕方を変える」ために、
「時間の長さでは勝負しない!
一人で全てを完結しようと考えない!」
それが高原流「幸福な働き方」。
私は高原さんのブログを読みながら、
星野仙一を考え続ける。
選手時代にはずっと、
自分でやり遂げようとした。
ピッチャーという役目には、
それは最大の必要条件だ。
しかしマネジャー時代には、
「一人完結」を否定した。
体力的に恵まれていたわけでもない星野の野球人生、
「幸」よりも「福」が勝っていた。
監督時代の星野は、
叱ることも、
褒めることも、
どちらも上手かった。
それは星野が「福」の人だからだ。
説教くさいけれど、
「神様が認めてくれるほどの努力の積み重ね」が、
人生を豊かにする。
〈結城義晴〉