ユニクロの「キッズ強化」とイトーヨーカ堂の「大衆百貨店化作戦」
日経新聞『消費ビズ』に、
「ユニクロ、東レと子供服」の記事。
ファーストリテイリングが例によって東レと組んで、
新素材「ウォームパデット」の子供服を開発。
ポリエステル繊維を極小のボール状に加工し、
それをまたポリエステルの生地で包み込む。
絡み合った繊維の間に空気が入り込む。
だから羽毛に近い保温性が保てるし、
洗ってもいい。
この新素材を中綿に使用する。
手洗いができるジャケット。
子供は汚すから。
この商品は2015年1月から一斉に販売。
税別価格は2990~4990円。
子供は成長が早い。
タンス在庫があったとしても、
すぐにサイズが合わなくなる。
だから購買頻度が高い。
アメリカのチェーンストアは、
キッズ・ファッションが極めて重要な領域だ。
ウォルマートのJUSTベーシックスは、
Jのジーンズ、
Uのアンダーウェア、
Sのソックス、
Tのティーシャツ。
しかしそれと同じくらいキッズは重要。
ユニクロのキッズのアイテム数は、
約300から450になる。
売場は1.5倍から2倍。
さらに今月のうちに、
子供服を扱う店舗数を680店に増やす。
これは6割増。
2013年9月~14年5月の第3四半期までの、
ユニクロの国内キッズ売上高は330億円。
前年同期比プラス14%。
しかし全売上高の5.8%。
年間では単純計算すると、
440億円くらいか。
少ない。
ということは伸ばす余地がある。
日経には矢野経済研究所の市場データがある。
日本国内の子供服とベビー服の2012年の売上高、
6990億円。
ユニクロは6.3%のシェア。
「まだまだ」。
柳井正さんの声が聞こえるようだ。
しかし、スポーツを押さえ、
これでキッズを確立して、
総合スーパーの衣料品は、
さらにユニクロに侵食される。
赤ちゃん本舗や、
西松屋チェーンも、
戦々恐々だろう。
一方、イトーヨーカ堂。
これは一昨日の日経新聞。
「百貨店PBで衣料テコ入れ」
セブン&アイ・ホールシングス傘下のそごう・西武百貨店と、
ヨーカ堂が衣料品事業で共同開発をスタート。
2014年度中というから、勝負はこの秋冬。
肌着など3アイテム。
3年で50億円の売上げ目標。
ブランド名は、
「リミテッドエディション IYコラボ」シリーズ。
「上質な素材を使い、
国内工場で縫製するなど製造工程にもこだわり、
百貨店レベルの品質の高さを前面に打ち出す」。
そごう・西武の「リミテッドエディション」は既に、
2014年度売上高約1000億円。
百貨店PBとして最大規模。
そこでIYコラボは、
最初に女性向けの肌着を
税抜き1790円で販売。
さらに14年度中には、
着圧機能を備えたストッキングを500~700円、
男性向けワイシャツ4900円を投入。
イトーヨーカ堂約150店と
そごう・西武全店で販売。
価格帯は、例えばワイシャツは、
従来のヨーカ堂アイテムより2000円程度高い。
この試みは、いい。
もっともっと早く、
やるべきですらあった。
イトーヨーカ堂の2013年度、
衣料品事業売上高約2040億円。
全体では赤字。
あのヨーカ堂の衣料が赤字。
隔世の感あり。
かつては圧倒的に強かったヨーカ堂の衣料。
これはすなわち、
総合スーパーの業態フォーマットの問題でもある。
今月の月刊『商人舎』9月号で、
アメリカの「百貨店」と、
「いわゆるGMS」の業態整理をした。
従来の日本の百貨店とGMSの分類が、
間違いであったことの解析。
どんな難しい問題も、
解決してみればシンプルだ。
まさにそんな感じ。
その考え方からすると、
セブン&アイのそごう・西武百貨店と、
総合スーパー・イトーヨーカ堂。
もっともっとコラボすべきだ。
アメリカのメイシーズ百貨店。
840店の巨大チェーンだが、
高級百貨店をブルーミングデール、
大衆百貨店をメイシーズにしている。
私はヨーカ堂は、
メイシーズになるべきだと思う。
つまり、もっともっと高級化せよ。
古典的なチェーンストア理論など、
まったく無視してよい。
そして、そごう・西武は、
さらにアメリカのニーマンマーカスのように、
もちろんブルーミングデールのように、
超高級百貨店になる。
今回の「リミテッドエディション」。
IYコラボなどの言葉をつけずに、
堂々と百貨店アイテムであることを、
顧客に表明したほうがよろしい。
それがユニクロを模倣しない、
ポジショニング戦略である。
〈結城義晴〉