民事再生法適用申請スカイマークとLCC雛形サウスウェスト航空
スカイマークの民事再生法適用申請。
日経新聞は一面トップ。
朝日、毎日は一面の左サイド。
朝日・毎日のトップは、
イスラム国人質事件。
スカイマークは国内航空会社3位で、
東証1部上場企業。
この業界は、
JALとANAの複占+アルファ。
マーケット・リーダーとチャレンジャー、
そして数々のマーケット・ニッチャー。
そのニッチャーのスカイマークが、
フォロワーになろうとして挫折した。
2010年に日本航空が、
会社更生法適用申請。
5年ぶりに今度は、
3位のスカイマーク倒産だから、
航空業界はある意味で、
成熟衰退産業だ。
規制の強い業界は、初めから、
寡占、三占、複占であることが多い。
日本航空、全日本空輸、
そして東亜国内航空改め日本エアシステム。
JAL、ANA、JAS。
これが長らく続いた。
しかし三番手JASがJALに吸収され、
その代わり規制緩和で新規参入した、
スカイマークが三番手に。
それ以外には、
AIRDO、スカイネットアジア航空、
さらにスターフライヤーなどなど。
年商規模は、
ANAホールディングスが1兆6010億円、
日本航空が1兆3093億円で、
スカイマークが859億円だから、
ほとんど複占。
世界の航空連合も三占。
スターアライアンス、
ワンワールド、
スカイチーム。
年商859億円のスカイマークの、
負債総額は710億円。
これでは民事再生法も仕方ない。
1996年、
HIS澤田秀雄社長らの出資で、
新規参入航空会社の第1号として、
鳴り物入りで設立。
機内サービスを始めコストを削減し、
普通運賃を半額程度にディスカウント。
平均搭乗率80%以上を記録。
しかしどんな商売も、
単なるディスカウントは、
長続きしない。
すぐに効果が出ることは、
すぐに真似されて、
その効果は逆転する。
大手2社はその規模に物を言わせて、
割引運賃をスカイマーク並みに値下げ。
スカイマークの平均搭乗率は、
60%を切って、赤字転落。
そこに登場したのが、
IT企業ゼロ㈱西久保愼一会長。
スカイマークに出資し、
やがて社長就任。
ここからが面白い。
航空機を店舗と置き換えて、
読んでもらいたい。
まず、それまでの中型機767を順次、
燃費効率の高い小型機737に転換し、
それで効率化を果たす。
客室乗務員の制服はポロシャツにして、
地上勤務と兼任させる。
マルチ・タスクだ。
パイロットの制服も、
ポロシャツとウィンドブレーカーに。
業界の常識を破った。
さらに運航管理システムの自社開発などで、
低価格運賃を実現。
以前の単なるディスカウントから脱して、
2012年3月期には、年商802億円。
営業利益は152億円。
ローコスト・キャリアー(LCC)として、
脚光を浴びることになる。
しかし好事魔多し。
今度は国際線参入のために、
エアバスの超大型機A380を、
一挙に6機購入する契約を結ぶ。
総額1915億円。
結局、この契約は解約され、
その損害賠償などを巡って、
資金繰りが悪化。
まったく皮肉なことに、
無借金経営であったために、
メインバンクもなく、
あえなく民事再生法申請。
スカイマークは、昨年、
グリーンシートを全席導入した中型機A330を開発。
座席が2割も広いサービスを誇示した。
さらにミニスカートの制服を採用したりして、
瞬間的な話題をさらった。
〈出典:flightliner.jp〉
これはもう、末期症状。
西久保氏は社長を退任、会社を去る。
59歳。
LCCの雛形を作ったのは、
アメリカのサウスウェスト航空。
杉山純子著『LCCが拓く航空市場』に、
詳細に紹介分析されている。
杉山さんは、立教大学ビジネスデザイン研究科出身。
修士論文でこの研究をし、
それがすぐに単行本になった。
そのLCCの特徴は、
第1に単一機材の採用。
これは小売業に置き換えると、
シングルフォーマット戦略。
第2は主として小型ジェット機の採用。
これは小型店政策。
第3は、ポイント・トゥ・ポイントによる、
2地点間の直行運行。
これは小商圏主義。
第4は、セカンダリー空港の活用。
これは脱大都市圏出店。
第5は、サービスの簡素化と、
必要なサービスの有料化。
そして第6は、インターネットによる直販。
その上、第7に、家族的な社風。
「顧客第二主義」を標榜する。
つまり顧客よりも従業員を優先する。
アメリカの小売業で言えば、
トレーダー・ジョーとアルディを、
足して2で割ったようなビジネスモデル。
それに対してスカイマークは、
古い中型総合スーパーから、
スーパーマーケット経営に切り替えて、
業績を回復させるも、
今度は大型総合スーパーを志向し、
そのために資金繰りが苦しくなって倒産。
そんな小売業と似ている。
無謀な店舗投資などはしなくとも、
派手な販促や無駄なセールを連発して、
ジリジリと経営を悪化させる。
こんなことも、
小売業ではよく見受けられる。
LCCのサウスウェスト航空と、
民事再生のスカイマーク。
小売サービス業に、
よく当てはまる。
ただし、小売業は、
トレーダー・ジョーとアルディに、
分化している。
それだけ競争が激しく、
参入障壁が低い世界だと考えることができる。
LCCの考え方の本質は、
大いに学べるが、
もう少し競争レベルが先行しているのが、
米国リテーリングの世界だ。
〈結城義晴〉