結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年04月27日(月曜日)

日経ビジネス特集「挫折の核心 イオン」の「スーパーのナレッジ」

Everybody! Good Monday!
[2015vol17]

2015年第18週、
4月最終週です。

昼寝して床屋に顔を忘れけり
〈朝日俳壇より 東京都 池田合志〉

1年で一番いい季節。
こんなのんびりした気分にもなります。

つくしんぼ夜は屈伸運動す
〈同 奈良市 大年厨〉

俳句も、のんびりしています。

今週水曜日4月29日が、
昭和の日の祭日。

この日がゴールデンウィークの初日。

商人舎magazineの、
weekly商人舎日替わり連載。
「月曜朝一・2週間販促企画」
ここでもホップ・ステップ・ジャンプが、
提案されている。

先週がホップ、
今週がステップ、
来週がジャンプ。

この考え方をとっている企業は、
イオンとユニクロ。

あとの大手企業は、
52週マーチャンダイジングの影響か、
1週間ずつのプロモーション。
もちろんこちらは、
月間プロモーションと、
週間販促企画の組み合わせなのだが、
ゴールデンウィークは、
4月終盤と5月初旬が重なる。

だからホップ・ステップ・ジャンプを、
私は勧めている。

ユニクロはずっと絶好調。
イオンは昨年度、絶不調。

従ってホップ・ステップ・ジャンプだけが、
決定的な施策とはいえない。

だから自分の顧客と、
自分の店のこれまでの政策を見直しながら、
自分の企業、自分の店の作戦を、
立案して欲しいところだ。

もちろんゴールデンウィークの立案にしても、
すでに3カ月前からスタートして、
1カ月半前には決定しているだろうから、
今さらということではないのだが、
このあたり月刊『商人舎』3月号で、
㈱平和堂の夏原陽平さんが、
実に鋭い考え方を披瀝してくれている。

夏原さんは営業企画室室長兼経営戦略室統括、
3月号の特集は「52週MDの錯誤」。

さて、日経ビジネスが今日、
2週合併号を発刊。
特集「挫折の核心 イオン」

実はサブタイトルが本当の趣旨。
だから私はこちらを大きくする。
「セブンも怯えるスーパーの終焉」

三部構成、三本立て。

Part1は、イオンの業績が悪いという話。

岡崎双一さんが登場する。
イオンリテール社長。

イオン九州社長の柴田祐司さんと、
商品担当執行役の岡田英二さんが、
それぞれに店舗での商売と、
商品やブランドの開発について、
発言する。

そしてもちろん、
イオン社長の岡田元也さんも、
話に出てくる。

要は「イオン化」が挫折し、
「解体」で出直しするとの分析。

私は日経ビジネスとは、
ちょっと考え方が異なる。

Part2は、セブン&アイの業績はいいが、
かつての親会社イトーヨーカ堂には、
「最後通牒」が突きつけられているという話
もちろん会長の鈴木敏文さんから。

そして絶好調のセブン-イレブンにも、
「変われ!」と号令がかけられている。

Part3は、小売企業の「適者生存の条件」。
ライフコーポレーション社長の岩崎高治さんと、
イズミ社長の山西泰明さんが発言する。

全体のトーンは、明確だ。
古典的なチェーンストア理論が、
現在の「スーパー」を行き詰まらせている。
規模拡大が破綻の原因。

特集の全体構成は、
極めて、普通。

特集の第一部で、
イオンはケチョンケチョンに、
貶される。

今週のイオン経営者候補研修の講演で、
私も強調した「膨張と成長」。
このブログでも何度も紹介しているが、
故田島義博学習院大学院長の言葉。

店数や見せかけの規模が
大きくなることを「膨張」という。
「成長」は実質的な経営品質を伴って
規模が拡大することだ。

日本最大小売業のイオンが、
膨張になってしまうか、成長と評価されるか、
今、その分岐点に立っていることは確かだろう。

日経ビジネスは、「膨張」だと断じる。

一方、セブン&アイの第二部。
これもこのブログの1月5日版で触れたが、
今年の年頭所感で、鈴木敏文さんが、
「脱チェーンストア」を宣言した。

「チェーンストアとは、
本部で仕入れた商品を
複数の店舗に一括供給する経営手法」。
記事ではこう、表現されている。

それがダメになった。
だから「個店経営」に転換せよ。

この定義と論旨だけで考えれば、
それは間違いがないように見える。

しかし定義は画一的すぎるし、
現実はそんなに単純な話ではない。

そしてこのストーリーの中で、
ちょっと見過ごせない記述がある。

「『伊藤雅俊・名誉会長から受けた教育が
伝統になってしまっている』
失敗の理由を、鈴木会長はそう指摘する」

「”聖域”と化していたものこそ、
チェーンストアという考え方であり、
それに基づいた事業のやり方である」

私は1月5日のブログで書いた。
「いまや、『店舗は自動販売機』、
などというチェーンストア論は、
全く通用しない」

古いチェーンストア論が通用しないのは、
そこにはマーケティングの概念が、
薄い、あるいはない、からだ。

プロダクト・アウトは効果を発揮しづらくなり、
マーケット・インこそ成果を上げる考え方だ。

ただし伊藤雅俊さんは、
私もよく知る名経営者だから、
その名誉のために言っておくが、
マーケティングの人である。

伊藤さんが創り出したグループの社是は、
「基本の徹底と変化への対応」だが、
これは商いやチェーンストアの原理原則を徹底し、
同時にマーケティングしようという考え方だ。

だから「伊藤さんの教育」には、
マーケティングの要素が、
抜けていたはずはない。

それが「伝統」となり、
組織内で硬直化し、硬直化させ、
聖域化したことが問題なのだろう。

その聖域化を象徴させて、
「チェーンストアという考え方」と、
鈴木さんは表現する。

結城義晴は1月5日のブログの中で続ける。
「私はチェーンストアの現代化を標榜し、
近代化チェーンストア論を、
包含しようと考える」

否定するのではなく包含する。

それでも日経ビジネスの記述は、
「鈴木が伊藤を否定する」と読めるから、
これはセブン&アイにとっても、いけない。

第三部はライフとイズミ。
岩崎さんは「売り手の論理」に陥りかけ、
そこから「顧客目線」の会社への回帰を訴える。

山西さんはローカルブランドによる、
「3%の差異化」を語る。
90%がナショナルブランド、
7%がプライベートブランドとして、
あとの3%がローカルブランド。

山西さん、3%とは、
ちょっと控えめすぎるのではないか。
私はそう思った。

沖縄のサンエーでは、
ローカルブランドが3割を超える。

そして日経ビジネスの特集の結論。
「そのためには、
現場の『知(ナレッジ)』を、
広く、深く、速く、
経営に反映するチェーンストアへと
進化することが不可欠だ」

「規模を追うことで乖離した
現場と経営の距離を縮められるのは、
ナレッジしかない」

ここでも「チェーンストア」という言葉が
何気なく使われているから、
先に否定された「チェーンストア」の定義は、
変質している。

はじめの定義は、
「チェーンストアとは、
本部で仕入れた商品を
複数の店舗に一括供給する経営手法」

それが「ナレッジ」によって、
店舗現場と本部経営の乖離が、
縮められ、埋められる。

ドラッカーと結城義晴の「知識商人」は、
もっともっと産業の未来を見つめているが、
この乖離を埋めることにも、
当然ながら役立つものだ。

この特集にひとつ、注文。
「スーパー」と表現される小売業を、
日経ビジネスは対象にした。

しかしそれは総合スーパーと食品スーパーを、
二把一絡げにしている。

川野幸夫さんも横山清さんも荒井伸也さんも、
これに対しては大いに憤慨するはずだ。

川野さんは、
日本スーパーマーケット協会会長、
そしてヤオコー会長。
横山さんは、
新日本スーパーマーケット協会会長で、
アークス社長。
荒井伸也さんは、
オール日本スーパーマーケット協会会長、
元サミット会長。

この日経ビジネスの特集は、
総合スーパーを主に論じている。
しかし食品スーパーが混同されて、
ライフの岩崎さんも登場させられている。

この「業態」概念が日経ビジネスには、
薄い、あるいは、ない。

イオンリテールやイトーヨーカ堂、
そしてセブン-イレブンの現状を、
散々挙げてきて、
ヨークベニマルやマックスバリュには、
傘下にある企業という観点でしか、
触れられていない。

つまり量販店としての「スーパー」と、
かつての深夜スーパー「コンビニ」の区別はあるが、
総合スーパーと食品スーパーの差異はない。
欧米で使われるハイパーマーケットと、
スーパーマーケットの業態の区分がない。

最後の最後の一文は、
「さもなければ、
『スーパーの終焉』は避けれない」

ここでいう「スーパー」は、
明らかに総合スーパーだ。

残念ながら日本で一番部数を誇る経済誌が、
「業態概念」を欠いている。

まだまだ、私たち小売業側の活動も、
不足ばかりだ。

春愁や名を忘れ顔残りゐる
〈朝日俳壇 武蔵野市 佐脇健一〉

商業や小売業という産業が、
春愁のなかで、名を忘れられている。

しかし、ゴールデンウィークには、
目いっぱい消費を喚起して、
その存在感を高めたい。

業態ごとに。

では、みなさん、
Good Monday!

〈結城義晴〉


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