こどもの日の随想――菖蒲湯と鯉のぼり/まど・みちお「一つぶよ」
冬至の柚湯に対して、
端午の節句の菖蒲湯。
精油成分が含まれていると言われる。
いわゆるエッセンシャルオイルの成分。
成分名はアサロン、オイゲノール。
しかし端午の節句に、菖蒲湯。
その気分だけで、癒される。
そして伊藤園の新茶をいただく。
何度も書くが、
江島祥仁副会長からの贈り物。
ありがたい。
ひな祭りの歌は、
明かりをつけましょぼんぼりに♫
私がまず口ずさむのは、
甍(いらか)の波と雲の波
重なる波の中空(なかぞら)を
橘(たちばな)かおる朝風に
高く泳ぐや鯉のぼり
作曲は弘田龍太郎で、作詞は不詳。
二番、三番もある。
開ける広き其(そ)の口に
舟をも呑まん様見えて
ゆたかに振う尾鰭(おひれ)には
物に動ぜぬ姿あり
百瀬(ももせ)の滝を登りなば
忽(たちま)ち竜になりぬべき
わが身に似よや男子(おのこご)と
空に躍るや鯉のぼり
こちらは覚えてはいないから、
にわかには歌えないが、
なかなか、勇ましくて、
よろしい。
しかし今、一般的なのは、
近藤宮子作詞の小学唱歌。
やねよりたかい こいのぼり
おおきいまごいは おとおさん
ちいさいひごいは こどもたち
おもしろそうに およいでる
どちらの唱歌も七五調で、
リズムがいい。
近藤作の「こいのぼり」は、
しっかりと歌うことができる。
何しろ結城義晴は、
元早稲田大学童謡研究会幹事長。
初代顧問はあの西條八十先生。
日経新聞の巻頭コラム『春秋』は、
こどもの日だけに、昆虫を話題にした。
ウルトラマンの好敵手「バルタン星人」、
ゴジラと戦いを繰り広げた「モスラ」、
そして「仮面ライダー」。
みんな昆虫だ。
ちなみに映画「ゴジラ」のプロデューサーは、
富山省吾さん。
学生時代に、
年間200本の映画を見ていた。
童謡研究会にもときどき顔を出してくれた。
そして東宝に新卒入社し、
映画プロデューサーになった。
初志貫徹の人。
懐かしい。
『春秋』は「ジャポニカ学習帳」の表紙から、
「昆虫の姿がす でに消えていた」と指摘。
親や教師から苦情が寄せられた。
「虫は気持ちが悪い」
「まさに昆虫たちが、
平和をかき乱す怪物のように思わ れている」
学習帳こそ、たとえ、
「気持ち悪い」と言われようと、
それを載せるべき。
ジャン・アンリ・ファーブルが悲しんでいる。
北杜夫は号泣するだろう。
まど・みちおは無表情だろう。
その、まど・みちおの「アリ」。
アリを見ると
アリに たいして
なんとなく
もうしわけ ありません
みたいなことに なる
いのちの 大きさは
だれだって
おんなじなのに
こっちは そのいれものだけが
こんなに
ばかでっかくって・・・
「一つぶよ」
ぼくらの まえへと つづき
そして うしろへと つづく
えいえんの じかん
ぼくらの そとがわへと ひろがり
そして うちがわへと ちぢまる
むげんの うちゅう
きりがない はてがない さいげんがない
どこまでも どこまでも どこまでも
の なかの ぼくらよ 一つぶよ
と おもうことだけは でき
それだけしか できないのだとしても
その それだけよ 一つぶよ
(まど・みちお『いわずにおれない』より)
2015ゴールデンウィークも、
ラストスパート。
しずかに、
しかし、しっかりと、
ゴールを迎えたい。
〈結城義晴〉