百貨店の今夏商戦「早仕掛け」撤回を笑いつつ、フランクフルトに発つ
厚生労働省の毎月勤労統計調査。
4月の実質賃金指数は、
前年同月比でわずかだが0.1%上昇。
実質とは「物価上昇による目減り分を除いた数値」
これは2年ぶりの上昇。
マクロデータで、
ようやく賃金の伸びが、
物価の伸びを上回ってきた。
そうすると経済の好循環が生まれる。
所得増→支出増→消費増→
生産増→所得増→支出増→
この好循環。
勝った者はますます強くなる。
この好循環と同じ。
そして好循環のサイクルをつくれば、
もう、しめたもの。
4月の常用雇用者数も、
前年同月比で2%増。
総務省の家計調査では、
4月の勤労者世帯の実質消費支出額は、
前年同月比0.5%増。
一方、物価上昇も鈍化傾向を示す。
4月の全国消費者物価指数のうち、
生鮮食品を除く総合指数は、
前年同月比0.3%上昇。
昨年4月の消費増税要因を除くと、
ほぼ横バイ。
政府と日銀のインフレターゲット政策は、
ちょっと思い通りにはならないよいうだが、
賃金上昇と物価下落で、
実質的な購買力は高まる。
商売はやりやすい。
商売の追い風が吹き始めた。
しかし、そんな環境の中で、
ちょっと笑ってしまう話が、
日経新聞に書かれている。
百貨店がこぞって、
今夏のセール開始時期を遅らせる。
昨年、ほとんどの百貨店は、
6月末から夏の商戦をスタートさせた。
三越伊勢丹だけ、
7月中旬スタート。
しかし景況感の改善が追い風となって、
伊勢丹は「通常価格販売期間」を延ばして、
収益が上がった。
そこで他の百貨店も、
右へ倣え、となる。
高島屋は7月8日スタート。
昨年より2週間近く遅くする。
大丸松坂屋百貨店も、
7月8日に繰り下げ。
阪急うめだ本店も足並みをそろえる。
そごう・西武は7月1開始。
かつて百貨店の夏のセール開始は、
7月中旬が通り相場だった。
それが1990年代から前倒しされ始めた。
そして最近は7月1日前後の開始となった。
しかし三越伊勢丹だけが、
2012年から7月中旬に戻して、
収益改善に取り組んだ。
つまり異なるポジショニング戦略を展開したわけだ。
この際、同社が大手アパレルとの連携を図る。
その結果、昨年7月の各社の売上高。
高島屋が前年同月比4.3%減、
大丸松坂屋百貨店は2.6%減。
一方、三越伊勢丹は3週遅れで0.9%増。
この三越伊勢丹に今年は、
各社が追随する形となった。
マーケット・リーダーが伊勢丹。
他社はみんなフォロワー。
笑える話とは、
「前倒しをしても売り上げを伸ばせず、
商機をいかせなかったこと」
早仕掛け・早仕舞い・際の勝負。
早仕掛けしても、
単に値引きセールするだけでは、
話にならない。
百貨店の早仕掛けならば、
知恵とアイデアを出して、
夏を存分にアピールすべきだ。
今年1月。
極寒のニューヨークでは、
ウォルマートが衣料品売場のトップに、
水着を早仕掛けした。
ドキっとする売場だった。
それがなければ、
早仕掛けも全く意味がない。
遅仕掛け、あるいは並び仕掛けで、
単にセールするだけならば、
またしても三越伊勢丹に、
してやられるだろう。
「今の消費者は価値を認めれば
値下げしなくても買う。
逆に価値を感じない物は
値下げしても買わない」
オンワード樫山の馬場昭典社長は辛口コメント。
全くの同感。
一方で、ユニクロの5月。
国内既存店売上高は前年同月比12.3%増。
増加は2カ月連続だが2桁の増加が目を引く。
ユニクロはスーパーマーケット並みに、
52週マーチャンダイジングを展開する。
だからユニクロが早仕掛けすれば、
他の追随を許さない。
百貨店の横並びを見て、
ユニクロは今夏、早仕掛けするに違いない。
総合スーパーも、
中身のある夏商戦の早仕掛け。
目一杯、百貨店から顧客を奪うことが出来る。
なにしろ、総合スーパーのGMSは、
もともとディスカウント・デパートメントストアなのだから。
これから向かうドイツでは、
ヘルムート・コール元首相が、
意識不明だとか。
85歳。
腸の手術後に、危篤状態に陥った。
西ドイツ時代を含む1982~98年に首相を務めた。
そして1990年10月、
歴史に残る東西ドイツ統一を実現させた。
私は1995年、ケルンで、
目の前で演説を聞いたことがある。
ド迫力の政治家だ。
もちろん信念も持っていた。
心配しつつ、
ルフトハンザに乗り込む。
では、行ってきます。
あとはよろしく。
〈結城義晴〉