スペインのカルフール、ハイパーマーケットの混迷
昨日は「桜桃忌」。
太宰治の忌日。
1948年6月13日、
太宰は愛人の山崎富栄と、
玉川上水に入水自殺した。
38歳。
遺体が上がったのは6日後、
つまり6月19日。
この日は、太宰の誕生日だった。
そこでこの日を「桜桃忌」とした。
太宰は新戯作派・無頼派の作家。
私も20代までは無頼派を気取った。
今は見る影もないけれど。
多分、この桜桃忌に合わせたのだろうが、
谷崎潤一郎の新しい書簡が見つかった。
友人の佐藤春夫宛の2通。
文学の巨匠となると、
手紙まで価値が出る。
原稿用紙に筆で手紙を書く。
大谷崎らしい。
1933年、『春琴抄』執筆中のもので、
谷崎は当時、46歳。
「物の哀れを感ずることも更に深し、
これ青年時代の恋愛と異なる処也」
これは『春琴抄』のモデルで、
後に三番目の妻となる松子に対するもの。
松子は当時、大阪・船場の商人の妻。
その船場の商家の
「崩壊を手伝ふ結果となる也、
これ実に心苦しき事」
しかしそれをバネにして、
創作に取り組む。
「喜ぶべき事ハ(中略)創作熱は
頗る旺盛なること(中略)
殆んど無限に書きたき事あり」
凄い。
さてバルセロナ報告。
スペインのカルフール。
スペインではシェア第2の小売業。
バルセロナ郊外のショッピングセンターに入居。
カルフールの世界年商は747億ユーロ。
140円換算で10兆4580億円。
店舗数は1万0860。
しかしここ数年は売上げ減らし続けている。
その理由は海外店舗の閉鎖、撤退。
しかしスペインでは、
メルカドーナ、エルコルテ・イングレスに続いて、
第3位。
カルフールは1999年に、
フランスのプロモデスと合併して、
世界第2、ヨーロッパ第1の小売業となった。
そのプロモデスが1976年に、
スペインに進出していた。
スペイン国内では、4つのフォーマットを展開。
ハイパーマーケットのCarrefour174店、
スーパーマーケットのCarrefour Market、
エクスプレスストアのCarrefour Express、
合わせて123店。
そして都市型小型店のCarrefour City285店。
この店は一番得意なハイパーマーケット。
プレゼンテーションも現代的で、
通常のハイパーとは異なる。}
カルフールは最近、
アップスケールを試みている。
リーチインケースは最新式。
しかしコカ・コーラ売り場は、
圧巻に陳列。
まるで大陳コンテストに参加しているようだ。
そして食品の脇に化粧品売り場がある。
メルカドーナはスーパーマーケットだが、
必ず化粧品売り場を併設する。
それと同じ考え方。
家電以外のノンフーズは、
ハイパーマーケットらしい天井の高さ、
ボリューム陳列。
しかし顧客の顔は見当たらず、
2階売り場も2ユニット70%引きのパネル。
スペインでアップスケールを目指したカルフール。
アップスケールが単なる高価格化にしかなっていない。
それが、残念ながらまだ、
バルセロナの顧客に受け入れられてはいない。
日本の総合スーパーにも、
同じ現象が見られる。
オーシャンのように、
割り切ってハイパーの広さを強調し、
総合品揃えの便利さと、
大量販売低価格に徹するのが、
不況の中に喘ぐスペインにふさわしいのか。
それともカルフールのように、
アップスケールを志向するのか。
悩みは深い。
カルフールタイプを目指すならば、
思い切ってノーマル百貨店まで、
グレードを上げる。
それをギリギリまで安く売って、
ディスカウントデパートメントストアを試みる。
スパインのカルフールに関しては、
よく見えてくるから不思議。
日本の総合スーパーを見ていると、
なかなか割り切った判断はできない。
これもスペイン視察のご利益かも知れない。
〈結城義晴〉