A&Pとセーフウェイの「すぐに役立つことはすぐに役立たなくなる」
昨日の商人舎magazine。
Daily商人舎は、
米国A&P二度目の倒産話。
1970年代まで、A&Pは、
アメリカ食品産業の王者だった。
その後、1980年代になると、
セーフウェイがとって代わった。
そして1999年、クローガーが、
フレッドメイヤーを1億3000万ドルで買収して、
全米トップのスーパーマーケットとなる。
それから21世紀に入ってからは、
クローガーがマーケットリーダー。
しかしA&Pが、
三番手で居続けることはなかった。
2010年に一度、
連邦破産法11章を適用申請し、
今また、二度目の倒産。
一方、セーフウェイも、
クローガーに抜かれてからはぱっとせず、
今年初めに投資会社サーベラスに、
94億ドル(1兆1280億円)で買収され、
アルバートソンと統合させられる。
結果として、年商575億ドル、
1ドル120円換算で6兆9000億円。
社名はアルバートソンになるかもしれないが、
2014年決算は3億8500万ドルの損失。
一方、クローガーは絶好調で、
46四半期連続既存店が増収。
アメリカを解説するには、
このA&Pからセーフウェイ、
そしてアルバートソン、
クローガーまでの歴史的経緯を、
自分の目で見て、自分の耳で聞いて、
経験していなくてはならない。
それが「魚の目」である。
賢者は歴史に学ぶ。
愚者は経験にのみ学びたがる。
レース型競争から、
コンテスト型競争へ。
そのプロセスのなかから、
ポジショニング戦略が生まれてくる。
解説者はそれを、
実感していなければならない。
一方、大阪の万代も、
平和堂やライフ、ヤオコーとは、
異なる進化を見せる。
オープンセールの鰻売り場は、
土用丑の日と重なって、
これも超お買い得。
ここで、関西地区で、平和堂と万代が、
同じような売り場傾向ではないことが重要だ。
それこそがポジショニングの差異を示す。
同じ売り場や商品の傾向ならば、
大きいほうが勝つ。
A&Pはこのポジショニングが、
全く理解できない会社となった。
だから二度目の倒産状態の現在も、
年商は58億3100万ドル(6976億円)、
店舗数は301店。
その規模を日本に持ってくると、
ライフコーポレーションよりも、
ユナイテッド・スーパーマーケットよりも、
アークスよりも大きい。
もちろん平和堂や万代よりも、
スケールは大きい。
セーフウェイ+アルバートソンは、
セブン&アイ・ホールディングスよりも、
巨大だ。
そしてこちらは、
ポジショニング戦略を、
競争の中から身をもって理解していても、
それを店や売り場に実現することができない。
なぜなら強烈な個性の企業が、
アメリカでは目白押しだからだ。
カット・スロート・コンペティション。
喉を斯き切る競争。
かつては圧倒的なボリューム競争と、
激しい価格競争だった。
しかしいま、
ウォルマートのポジショニングは、
圧倒的だ。
クローガーも、
揺るぎのないポジショニング。
さらにホールフーズ、
トレーダー・ジョーなど、
模倣困難性と希少性を備えた、
絶対的な個性的チェーンストアがある。
そこにウェグマンズ、スプラウツ、
さらにアルディ、ウィンコフーズ。
ニューヨークに行けば、
フェアウェイマーケット、ゼイバーズ、
それにイータリーやチェルシーマーケット。
とんがりとこだわり。
半面、A&Pもセーフウェイも、
相対的にまったく特徴のない企業となった。
際立った個性を主張できなくなった。
アウトスタンディングなポジショニングを、
確立できなくなった。
だからこの程度の規模では、
太刀打ちできない。
ここで最も重要なこと。
「すぐ役立つことは、
すぐに役立たなくなる」
すぐに役立つ模倣を繰り返していると、
そこにはイノベーションが育たなくなる。
それがセーフウェイ+アルバートソン、
そしてA&Pだった。
〈結城義晴〉