ヤオコー社長・川野澄人さんとHarvardBR「稲盛和夫の経営論」
今日は朝から、
埼玉県の川越へ。
㈱ヤオコー本社を訪問。
今年3月期決算で、
営業収益3073億5300万円、前年比12.1%増。
経常利益133億4200万円、12.7%増。
関東7都県に142店舗を展開する。
日本小売業ランキングでは42位。
スーパーマーケットでは、
堂々の第6位に躍進してきた。
39歳の若き経営者。
こんなにじっくりと対面で話し合うのは、
初めてだったが、大いに感心した。
私は今朝、起きるとすぐに、
自分で話し過ぎないように、
と決意してきた。
川野さんもときどきメモしたりして、
先輩の言うことを熱心に聞いてくれた。
その態度、姿勢が、素晴らしくて、
私はいっぺんでファンになってしまった。
前にも書いたけれど、
亡くなった将棋棋士の元名人・米長邦雄が、
ずっと年下の羽生善治らを、
「先生」と呼んで敬意を払っていた。
私もライフコーポレーションの岩崎高治さんや、
この川野さんらを、そんなふうに見ている。
日本の小売業の未来は明るい。
アメリカのホールフーズやウェグマンズ、
トレーダー・ジョーにも、
クローガーやテスコにも、
負けない、いい企業をつくってほしい。
午後からは、小澤(こざわ)三夫さんと懇談。
現在、取締役販売部長で、
ヤオコーの現場のキーマン。
小澤さんは、2008年10月、
第1回日本スーパーマーケット店長大賞を受賞。
その時、私も審査に加わっていて、
小澤さんほどこの第1回の大賞に、
ふさわしい人材はいないと確信した。
久しぶりに話して、
小澤さんの成長ぶりに驚いたし、
これまた意気投合して、固い握手。
小澤さんは1989年にヤオコーに入社したが、
その時、「いい会社」だと直感した。
今日はそのヤオコーの良さと強さを、
あらためて認識して、
実に有意義な一日だった。
本部を辞して、川越西口店へ。
今年3月13日にオープンした512坪の新店。
ウニクス川越というショッピングセンターの、
核テナントとして入っている。
関西の北野エースが、
テナントとして入居している。
HarvardBusinessReview9月号は、
特集「稲盛和夫の経営論」
三部に分かれている。
第一部は稲盛和夫経営講演選集。
第二部は「稲盛経営に学ぶ」として、
5人の論者が語っている。
そして第三部が、
稲盛さんへの直接インタビュー。
この中で稲盛さんは語る。
「人の心は、はかなくて頼りないものです。
でもひとたび素晴らしい心の結びつきができれば、
これほど頼りになるものもありません。
私はそのことを信じて、
人の心と心の結びつきをベースにおいて
経営を行ってきたのです」
小売業は人間産業だ。
だからこそ、製造業以上に、
「人の心を大切にする経営」が求められる。
「私は物事を判断する際には、
『人間として何が正しいのか』ということを
真っ先に考えます」
倉本長治の『商売十訓』の第一訓。
「損得より先に善悪を考えよう」
「経営に当たってはルールとか慣行とか、
いろいろなものが存在しますが、
それらを超えて人間として正しい生き方、
考え方をしていくことが大切だと思っています」
「そしてそれが結果的に
利益をもたらしてくれるのです」
稲盛さんは30代前半に、
石田梅岩を知って、
「これだ」と思った。
倉本長治は石田梅岩研究の、
第一人者だった。
そこで、稲盛、語る。
「売る側も買う側も、
お互いが利益を得られる商売こそが、
正しい商売だと思っています」
これはまさに近江商人の「三方良し」
売り手良し、買い手良し、世間良し。
稲盛さんの座右の銘。
「謙虚にして驕らず」
そして言う。
「事業の場合も欲ではないですね――。
欲ではなく、好奇心です。
事業に関する好奇心は
尽きることがありません」
欲ではなく、好奇心。
素晴らしい。
ヤオコー会長の川野幸夫さんにも、
考えてみれば稲盛経営に通じるものがある。
「人の心を大切にする経営」
川野澄人さんにも、小澤三夫さんにも、
そのDNAは受け継がれている。
〈結城義晴〉