結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年08月29日(土曜日)

8月末の倉本長治「商人の魂」とドン・ガバチョ「明日を信ずる歌」

2015年の8月が終わろうとしている。

8年前の今頃、
つまり2007年8月末、
私は㈱商業界代表取締役社長を辞して、
「無印」となった。
http://www.shoninsha.co.jp/modules/blog/wp-content/uploads/070901_4.jpg

あのころの名刺が、
机のすみに一枚だけ残っていた。
DSCN2967-5

この時も、実は、
倉本長治の言葉が、
私を元気づけてくれた。

「商人の魂を持ったジャーナリスト」
当時の私の肩書のない名刺の裏に、
「商人の魂」という言葉が書かれている。
DSCN2964-5

故倉本長治商業界主幹は書いている。
『あきないの心』より「商魂に徹する」

たくましき商魂とは、
他を圧倒するほどの勢力の旺盛さで、
私利追求をする精神のことではない。
真の商魂とは、
人間の永遠の姿に徹する
魂のあり方である。

人間としての商人が、
世の人びとの幸せに合致する営みに徹し、
その幸せが今日のみでなく、
明日の幸せにも通じるような
精神努力に命をかけるのを商魂という。

商いは経済行為であり、
金銭打算なくしては成立しない。
商人はその目的にかなうために必要な儲けを、
自分の報酬と資本の利益のほかに、
かならず確保しなければならぬ。

この儲けは正当なものであり、
積極的な奉仕の精神に合致するのであるから、
これは私利私欲ではなく、
世の人びとのために願う
商人の命をかけての悲願でなければならない。

飽くなき商魂のたくましさは、
かかる性質の利潤を追って、
私なき精神に見るべきなのである。
真の商魂は、
己を正しく評価する勇者にのみ
許される貴重なる精神である。

私は社長4年目の商業界の経営責任を、
予算を上回る決算によって果たして、
任期満了で退任した。

倉本長治は、
同じく『あきないの心』の中で、
「高志低身」として語り掛ける。

諸君はウンと胸を張れ。
深々と思い切り大気を吸え。
外見は腰の低い、
いつも笑顔を忘れない
世のつねの商人であっても、
俺たちはこれまでの商人とは
違うのだという自覚を持て。
どこまでも商人らしく、
おとなしく振舞い、
言葉はなごやかであっても、
心の中では、
烈々の理想を燃やせ。
高い誇りを持て。
いつ、どこへ行っても、
誰の前に出ても
コソコソするなかれ。
諸君は何ごとも
恐れるところはないのである。

恥多き商売の中にあって、
われらは高い誇りを抱いて、
人間として生きる最高の理想を、
自らの商売の中に求め、
商人としての使命が、
他のいかなる仕事、どんな職業、
あるいは宗教、学問、政治などの
あらゆる働きに比べても
寸分も劣らないものであることを
主張し、行動し、実現してもみせよう。

8年前の私は、
商業界から去りつつも、
この気概をこそ、
よりどころにしようとしていた。

それから・・・・・・。

きょうがダメならあしたにしましょ♪
あしたがダメならあさってにしましょ。
あさってがダメならしあさってにしましょ。
どこまでいってもあすがある♪
〈井上ひさし作詞『ドン・ガバチョの明日を信ずる歌』〉

1964年4月6日。
東京オリンピックの年。
NHK人形劇第1回が放映された。
『ひょっこりひょうたん島』

作者は井上ひさしと山元護久。
井上は言わずと知れた劇作家・文学者。
山元は早稲田大学少年文学会に属した、
私たちの先輩。

人形劇の主人公の一人がドン・ガバチョ。
声は故藤村有弘。

目立ちたがりでおしゃべりでうるさい。
権力欲、名誉欲、そして演説好き。
それがガバチョ。

対照的な人物は海賊トラヒゲ。
声は熊倉一雄だった。
ドン・ガバチョには物欲はない。
その分をトラヒゲが受け持って、
トラヒゲ・デパートというスーパーを経営。

いわゆる商魂たくましい商人だが、
なぜか憎めない。

藤村が歌うオペラ風の『明日を信ずる歌』
これは真の商魂を持った、
商人の歌でもあると思う。

最後にはガバチョとトラヒゲが合唱する。

青島幸男作詞・中村八大作曲、
『明日があるさ』は1963年に、
こちらは「若い僕」の、
切ない片思いの歌。

明日があるさ明日がある
若い僕には夢がある
いつかきっといつかきっと
わかってくれるだろ

似ていなくもないが、
ドン・ガバチョはおおらかで、
ほんとうに明日を信じさせてくれる。

これも8年前の私を励ましてくれた。
ほんとうに明日を信じなければ、
生きてはいけない。

そして、商人舎の名刺。
DSCN2971-5
振り返ると、そんな思いが強くなる。

急に涼しくなって、
2015年の夏が終わろうとしている。

〈結城義晴〉


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.