プラネット30周年記念Partyと「ティンバーゲンの定理」
国会議事堂周辺にデモ隊が陣取る。
そして「戦争反対!!」と、
シュプレヒコールが上がる。
「戦争反対」だけとらえると、
これはすべての国民が否定するわけはない。
安倍晋三首相も例外ではなかろう。
問題は安全保障や外交や経済などが、
複雑に絡み合う複数の目標を、
いつ、いかに達成するかだ。
最高裁までが違憲と判断しそうな空気の中で、
強行する意味はあるのか。
安全保障関連法案の正念場。
参議院特別委員会の質疑は、中断。
しかし60年安保のときとは明らかに違う。
なんというか、緊張感が薄い。
当時のようなシビアな冷戦状態は消え、
テレビ・新聞などのメディアも、
二手に分かれて報道合戦を展開する。
一方で、プロ野球パシフィックリーグは、
ホークスのリーグ優勝間近。
大相撲は横綱白鵬の休場で、
むしろ盛り上がる。
憲法が散華してをる揚花火
〈朝日俳壇 いわき市・馬目空〉
七十年戦(いくさ)なき世の夏の空
〈同 笠井彰〉
もう秋の空だけれど。
さて今日は午後から、
汐留のコンラッド東京。
株式会社プラネット
30周年記念Party。
会場に到着すると、すぐに、
玉生弘昌さんと田上正勝さんにご挨拶。
玉生さんが代表取締役会長、
田上さんが代表取締役社長。
それから井上美智男さんと石橋光男さん。
井上さんは元副社長で現相談役、
石橋さんは元常務で現上級顧問。
井上さんとは3年ぶり。
コンラッド東京2階の風波に、
200人ほどの人々が参集して、
プラネットの30周年を祝った。
ほとんどがメーカー、卸売業、小売業の、
社長、会長、役員クラス。
そうそうたる顔ぶれだった。
冒頭に玉生弘昌さんの開宴の挨拶。
プラネット創業期のエピソードや、
その社会的な意義を、
玉生さんらしく淡々と語った。
来賓挨拶は三人の方々。
まずは製造業のライオン㈱から、
社長の濱逸夫さん。
玉生さんはライオン出身。
そのライオンとユニ・チャームが、
世界でも稀なEDI機能を有するプラネットの、
母体となった。
二番目は卸売業の㈱あらた、
社長の畑中伸介さん。
林周二『流通革命』を持ち出して、
それに反論しつつ、
卸売業の社会的意義を訴えた。
そして㈱インテック会長の中尾哲雄さん。
プラネットのシステムはインテックが担当して、
二人三脚で30年を駆け抜けて来た。
そしてノンフードの流通VANシステムを構築した。
三人の来賓の言葉は、
プラネットのInnovationを語りつつ、
この30年の時代の変化を示していた。
次は、「30周年記念論文表彰」。
審査委員長は石井淳蔵さん、
委員は玉生さんと私。
石井先生はもちろん流通科学大学学長。
壇上には最優秀賞と優秀賞の受賞者が上がった。
私も緊張して壇上に。
まず優秀賞の表彰は、
私がプレゼンテーターを務めた。
受賞者は折笠俊輔さん、
流通経済研究所主任研究員。
タイトルは、
「製配販福医連携と家庭商品カルテが
もたらす新時代の流通」
その講評が私の役目。
「プラネット30周年記念に、プラネットらしい内容の論文が多数、寄せられた。論理的、科学的で、専門的、そして何らかの社会貢献を訴え、その方法論を考察する。
最優秀賞の「小商圏商いの復権」は満場一致で決まった。その結論は「『儲けるため』でなく『地域に必要とされる店』になること」。これこそこの企画に最もふさわしい結論だ。
優秀賞の「製配販福医連携と家庭商品カルテがもたらす新時代の流通」は静岡県下田市の実証実験をベースに、製造業・卸売業・小売業と福祉・医療の連携を、ITシステムを通じて促進させるという内容の論文だ。プロの研究者の手による研究と執筆で、やはりこのコンテストのレベルを引き上げてくれた。
その他の佳作にも、選に漏れた論文にも示唆に富んだ内容が盛り込まれていて、この30周年記念の意義を高めてくれた」
論文集の講評の文章。
私のスピーチはこれを、
アドリブで展開させたもの。
最優秀賞の表彰と講評は、
石井淳蔵先生。
最優秀賞は、ライオン㈱H&H高山幹朗さん。
タイトルは、
「小商圏商いの復権~共生と感謝の経済」
おめでとう。
そして日本フィルハーモニー交響楽団の演奏。
はじめはカルテット。
後半はフルートの真鍋恵子さんが加わって、
最後のモンティ「チャルダッシュ」は、
とりわけ素晴らしかった。
そしていよいよ鏡開き。
16名のトップが登壇。
「ヨイショ!!」の掛け声で、
鏡が開かれた。
乾杯の挨拶と発声は高原豪久さん。
ユニ・チャーム㈱社長。
プラネット創業期のエピソードを紹介し、
今後の発展を祈念した。
そして舛酒で乾杯。
その後は、極上のフランス料理と懇親。
私は左隣の石井先生と、
故中内功さんの話をし、
右隣のITホールディングス㈱会長・金岡克己さん、
インテック㈱社長・日下茂樹さんと、
アメリカ流通業の話などした。
ヤオコー会長の川野幸夫さんには、
月刊『商人舎』9月号のお礼をし、
荒井伸也さんとは小説『他人の城』の昔話をした。
もちろん川野さんは日本スーパーマーケット協会会長、
荒井さんはオール日本スーパーマーケット協会名誉会長。
いろいろなみなさんと交流しているうちに、
あっという間にお開き。
閉宴の挨拶はもちろん田上正勝さん。
田上さんは、初々しく、
今後の決意を語った。
実にプラネットらしい30周年記念パーティ。
私も心から楽しんだ。
さて、日経新聞『大機小機』
私の尊敬するコラムニスト隅田川さん。
「2つの目標には2つの政策」
経済学の「ティンバーゲンの定理」を引く。
「政策目標の数と政策手段の数を
同じにせよというものだ。
2つやりたいことがあったら
2つの対応策を準備せよ」
そして政府の「地方創生」政策に苦言。
「これは、地方創生という1つの政策手段で
地域を活性化し、人口減少に歯止めをかける
という一石二鳥の考えだといえる。
しかし、2つの問題点がある」
「我々は地域を活性化し、
人口減少に歯止めをかける
という2つの政策目標を持っているのだから、
2つの政策手段が必要である」
すなわち「国は責任を持って少子化対策を講じ、
各地域は自らの創意を生かして
地域活性化を図ることに専念すればいい」
「ティンバーゲンの定理」は、
オランダ・ハーグ出身の経済学者
Jan Tinbergenによってもたらされた。
1969年に世界最初のノーベル経済学賞を受賞。
ハーグはあのフェルメールの出身地。
「N個の独立した政策目標を
同時に達成するためには
N個の独立した政策手段が必要である」
これは極めて重要。
国家の安全保障などN個の政策目標は、
ひとつかみの短絡した法案で、
同時に達成することはできない。
創業から30年、
プラネットは玉生さんを中心に、
この定理に則って、
イノベーションを起こしてきたに違いない。
そしてこれから30年、
田上さんたち若い力で、
やはりイノベーションを起こし続けねばならない。
しかし、心より、
おめでとうございます。
商人舎はまだ8年です。
〈結城義晴〉