パンセ「二つの無知」とセブン&アイ逆行高とわらべや日洋
今日からシルバーウィーク。
ほんとうにすがすがしい。
秋らしい一日。
今日の土曜日、明日の日曜日、
そして月曜日が敬老の日、
火曜日が国民の休日、
水曜日が秋分の日。
なんというか、この並びが美しい。
店は書き入れ時。
精一杯、顧客に奉仕したい。
力一杯、仕事に邁進したい。
そしていつも、
明日を見つめていたい。
今日もブレーズ・パスカルの『パンセ抄』。
前にも書いたけれど、
原著者ブレーズ・パスカル。
編訳者・鹿島茂。
出版社・飛鳥新社。
2012年7月14日初版。
ブレーズ・パスカル(Blaise Pascal)は、
フランスの哲学者、数学者・物理学者。
1623年6月19日に生まれ、
1662年8月19日に、
39歳で早世。
死後、遺稿が『パンセ』として出版された。
訳者の鹿島さんが前書きで語る。
「ポスト・モダンどころか
ポスト・ポスト・モダンの時代に
突入したいまの日本社会が
直面している問題のことごとくが
正面から取り上げられ、
考えに考え抜いた末に出した、
目を背けたくなるほど直截的な解答が
あたえられている」
「『パンセ』は350年の時空を飛び越えて、
われわれ現代日本人が抱える問題意識に迫る」
「世間はものごとを正しく判断する。
というのも、生まれついての無知の中にあるからだ。
この無知こそが人間の真の本拠地である」
大衆の感覚、反応、そして判断。
無知だからこそ貴重だともいえる。
「知識というものには二つの端があり、
その二つの端は互いに触れ合っている」
面白い観察と発想。
「最初の端は
生まれついての純粋な無知である。
すべての人間は生まれたときには、
この無知の中にある」
「もう一方の端とは、偉大なる魂が、
人間の知りうるすべての過程を経巡ったのちに
そこに辿りついて、
自分は何一つ知っていないということを
発見する無知である」
「彼らは自分たちが出発した
その無知に戻って、
自らに出会うのである。
だが、これはおのれ自身を知っている
賢明な無知である」
すごい。
「一方、この二つの無知の中間にある人たち、
すなわち生まれついての無知から出発しながら、
もう一方の無知には辿りつけないでいる人たちは、
これで十分と判断した
釉薬(うわぐすり)のような知識しか持っておらずに、
知ったかぶりをする」
「こうした人たちこそ世を迷わし、
すべてを誤って判断する」
世を迷わさないよう、
自戒しなければならない。
「民衆と真の識者が世間の動力をなしているが、
中間の連中はこの動きを軽蔑し、
それによって軽蔑される。
彼らはありとあらゆることを誤って判断するが、
世間は正しく判断する」
果たして、
安全保障関連法案に関するさまざまな情報。
そして商売やビジネスの領域のさまざまな情報。
まさにポスト・モダンの問題。
それぞれ、どうなのだろう。
商売に関しては、
民衆とは顧客である。
だからパスカルによれば、
民衆と顧客が正しく判断する。
日経新聞『銘柄診断』
セブン&アイ・ホールディングスの株価が、
逆行高を演じた。
一時前日比4%高の5254円まで上昇。
終値でも2%高。
理由は、「イトーヨーカ堂、約40店舗閉鎖」の報道。
それが株式市場から好感された。
果たして株式市場は「民衆」なのか。
一方、同じ日経新聞の『投資情報』
わらべや日洋が、
2016年2月期連結純利益の見通しを発表。
前期比26%減の20億円との予測。
同社はセブン-イレブンの惣菜弁当ベンダー企業。
従来予想は5%増の29億円の見込み。
それが一転減益の予測。
これ、実は重大なこと。
理由は、いくつかある。
第1に、5月稼働の岩手県新工場の不振。
第2は、人手不足による労務費の膨張。
第3は、10月からの最低賃金引き上げの影響。
売上高予測は前年比5%増の2115億円。
ほぼ100%がセブン-イレブンからのもの。
だからわらべやが不振であることは、
セブンの惣菜弁当に陰りが見えていること、
あるいは陰りが見えるだろうことを示唆する。
セブン&アイ・ホールディングスの好業績と成長は、
セブン-イレブンの新規出店力に負ってきた。
だからイトーヨーカ堂の店舗閉鎖にも、
株価が上がった。
しかしセブン-イレブンに、
ちょっとでも暗雲が立ち込めると、
セブン&アイにも雨雲が見えてくる。
真の識者のひとり、鈴木敏文会長が、
この状況をどう判断するか。
そこに大いに興味がある。
釉薬知識の中間の人間の声に、
耳を傾けてはいけない。
〈結城義晴〉