総合スーパー大量閉店時代と花王・澤田道隆の「付加価値」
国民の休日。
敬老の日と秋分の日に挟まれた日。
1985年12月27日に祝日法が改正されて、
固有名詞を有する祝日に挟まれた日を、
連休にすべく定められた。
敬老の日と秋分の日、
この時期は彼岸の最中。
だから国民の休日「彼岸の一日」とでも、
考えたらいいか。
私は横浜の実家に戻って、
昨年亡くなった父を悼み、
89歳の母と食事した。
さて、苦言。
流通業界の看板新聞は日経MJで、
これは月水金曜発刊の専門紙。
しかし今日は休刊。
今一番新しいのが21日(月曜)版。
その月曜版一面特集は、
「GMS大量閉店」到来
ユニーグループ・ホールディングスが、
まず総合スーパーの約50店を閉鎖すると発表。
続いてイトーヨーカ堂も約40店を閉鎖。
一面に一番大きく掲げられている図表は、
棒グラフと折れ線グラフ。
折れ線グラフが「全国スーパー売上高」
棒グラフが「全国スーパー店舗数」
一番下に(注)日本チェーンストア協会調べ。
「全店ベース」とある。
この図表はこの特集の中で、
全く意味をなさない。
日本チェーンストア協会は、
総合スーパー企業が中心となって組織された。
そこに食品スーパーマーケット企業が参加した。
さらにそれ以外の業態の企業も、
加盟して、今年5月15日現在、
通常会員59社。
「それ以外の業態」の企業を列挙すると、
(株)アブアブ赤札堂
(株)キャンドゥ
(株)ケーヨー
ゼビオ(株)
(株)ゼンショーホールディングス
(株)大創産業
DCMホーマック(株)
(株)ニトリホールディングス
(株)丸井グループ
この日経MJの図表には、
これらの企業の売上げと店舗数も含まれる。
さらに多数の食品スーパーマーケット企業の、
売上げと店舗数が大量に加えられて、
「総合スーパーの苦戦傾向は続く」と、
図表にタイトルされている。
日本チェーンストア協会の2014年度は、
売上高12兆9382億円、店舗数9390店。
1店平均売上高は、13億7787万円。
この図表の意味するものは、
平均売上高14億円弱の店舗群の、
総売上高と総店舗数である。
もちろんこの表の下に、
3社の経営数値が入っていて、
これは実にいい表だ。
イトーヨーカ堂1兆2859億円、181店、
イオンンリテール2兆1172億円、344店。
そしてユニー7456億円、226店。
それぞれ1坪あたり売上高は、
188万円、151万円、139万円。
古典的チェーンストア理論は教えた。
「坪当たり売上高は下がってもいい、
坪当たり投入人時を下げよ」
しかしここまで下がったら、
利益は出しにくい。
1997年が総合スーパーの
売上げピークの時だった。
その時点の1坪あたり平均売上高は327万円、
2014年のそれは167万円。
従業員1人あたりの売上高は、
1997年3635万円、2014年2961万円。
これも図表の上の方に記入されているから、
日本チェーンストア協会全体の数字だろうが、
人時生産性は全体に下がっている。
まだまだ業態の概念が、
専門紙でも薄い。
かねてからお願いしているが、
日本チェーンストア協会が、
少なくとも、傘下の、
総合スーパー店舗の実績だけでも、
抜き出して追加統計表を作ってくれると、
ほかにない資料となる。
いつもいつも、
協会の会議室を使わせてもらっていながら、
こんなお願いをして、
恐縮至極。
しかしそこから、
総合スーパーの改革は始まる。
アメリカでは、
ウォルマート・スーパーセンターが、
現在も最強のフォーマットで、
これが総合スーパー業態だ。
私は「食を制する闘い」を、
三つのフェーズに分けているが、
その第2フェーズは、
スーパーマーケット対スーパーセンター。
アメリカと日本の小売業を、
比較研究する際にも、
これは主要テーマである。
詳細は月刊『商人舎』8月号【特集】
アメリカ小売業テキスト
世界最大消費大国の「食を制する者、流通を制す!」
さて初代スポーツ庁長官に、
鈴木大地さん、就任。
「バサロ泳法」で1988年ソウル五輪金メダル。
種目は競泳男子100メートル背泳ぎ。
2013年日本水泳連盟会長。
日本オリンピック委員会理事、
順天堂大学教授も歴任。
1967年千葉県生まれの48歳。
これは実にいい。
コメントは、
「泳ぎは後ろ向きだったけど、
前向きに頑張りたい」
もう一つ、日経新聞『経済観測』に、
花王社長の澤田道隆さん登場。
59歳。
聞き手は編集委員の田中陽さん。
「株価の乱高下より、
天候異変からくる消費者心理の変化のほうが
我々のビジネスに大きな影響を与えている」
小売業も同じ。
卸売業も同じ。
「トイレタリーも化粧品も今春以降、
市場全体の売上高は、
前年同月比2~6%くらいのプラスだ。
一方、数量はそれほどでもない。
商品単価が上がっている証拠だ」
売上高、売上数量は微増、
商品単価アップ。
「昨年4月の消費税率引き上げ以降、
買い控えの時期が
想定より長かったこともあるが、
売上げは堅調に推移している。
大企業を中心に
賃上げの効果がでている」
店頭売価に関して。
「最近のスーパーなどの
チラシを見てもわかるように
トイレタリーが安売りの対象商品から外れた。
これは消費増税後から顕著だ」
私はコモディティ商品に関しては、
小売り側も徹底してコストをかけなくなって、
チラシに載る頻度が下がったと思う。
「新しい付加価値を伴った
特徴のある新製品が
業界全体で多く投入されている」
「新しい価値を消費者が評価している」
「価格に敏感だった消費者が
自分のライフスタイルにあった商品を
手にするようになった」
もちろん、ノンコモディティは、
顧客に付加価値を提供する。
「プライベートブランド商品も
付加価値型に変わった」
これはクォリティブランドと、
ライフスタイルブランドの伸長を意味する。
花王㈱2014年12月連結決算。
売上高 1兆4017億円で、前年比6.6%増、
営業利益1333億円、同6.9%増、
経常利益1388億円、同8.4%増。
6月末の上半期決算も絶好調。
売上高6952億円、4.4%増だが、
営業利益は601億円、21.8%増、
経常利益612億円、18.9%増。
この数字を見ていると、
澤田さんの言の重さも、
倍増する気がする。
シルバーウィーク、
もうあと1日。
バサロ泳法も、
最後の大詰めだ。
〈結城義晴〉