サンフランシスコのとんがり店舗と悲惨な店舗
2015年11月、
結城義晴のアメリカ23日間研修旅行。
大詰めを迎えた。
長かったようで、
短かったようで。
とにかく疲れたけれど、
マラソンに例えれば40キロ地点を超えて、
最後のスパート。
頑張ります。
さて野村総合研究所の今夏の調査。
日本を訪れた中国人旅行者に聞きました。
インターネットで6000人が回答。
約4800人が再び「必ず来る」「多分来る」。
ありがたいことだ。
そして再来日の関心事は、
「地方都市観光・レジャー」が28.1%でトップ。
地方都市にとって、朗報。
今は、大都会でのインバウンド消費が隆盛、
それが地方に及ぶ。
「大都市観光・レジャー」は26.7%だった。
日本列島全国で、
観光大国を目指したい。
ただし必須な要件が、
まずは三つ。
第1に、ネットでの積極的な情報発信、
第2に、無線LANの整備、
そして第3に、観光地での中国語表示の充実。
アメリカに来ていても、
ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、
そしてここサンフランシスコ。
それだけでなく、
テキサス州のサンアントニオや、
オースイティンは素晴らしい観光地だ。
日本もそういった条件を整えて、
地方都市の活性化を図りたい。
さて平和堂の研修会は、
ダラスからサンフランシスコに移動。
昨日は、20日金曜日。
終日の視察は、
とんがり店舗フォーマット。
明日から早い人は、
サンクスギビング休暇に入る。
まずバークレーのホールフーズ。
朝から店の前の駐車場には
たくさんの車が並ぶ。
いつみても見事な青果部門。
この店は壁面のステンドグラスが特徴で、
なんとも言えない空間を作っている。
青果から、チーズ・ワイン売場が隣接している。
この部門をホールフーズは新しく、
「ラグジュアリーデパートメント」と、
分類して、マネジメントしている。
その次に地ビールとワインの売場。
アメリカでは大ブーム。
ここまでが、青果に次ぐ第二コーナー。
この部分が新しい試みで、
それは見事に完成している。
次にバルク売場。
壁面のデザインとバルク商品の、
カラーコントロールは、
言葉も出ないほどすばらしい。
そして奥壁面が対面のミート&シーフード。
鮮魚の品揃えはどこよりも豊富だ。
魚はヘルスフードだから、
ホールフーズにとって、
かけがえのない商品群だ。
平和堂の団員も、
売られている商品やその売られ方を、
真剣に観察。
レジはステンドグラスの壁を挟んで
青果の反対側。
この店舗は、
青果売場からワンウェイに近い形で、
お客を誘導する。
店舗左手がイートインスペース。
バリスタのカフェコーナーが、
その中心にある。
朝日が降り注ぐ日にはガラス戸を開ける。
本当に素晴らしい快適な空間。
一方、ホールフーズの小型店。
入口にはサンクスギビングのデコレーション。
青果のバナナ売場。
フックに吊るす売り方は、
この小型店から始まった手法。
これが受けて、他の大型店舗にも、
水平展開された。
そして、青果から穀類のバルク販売に続く。
量り売りは必要な量を購入できる。
これは環境に配慮した売り方。
次にセルフセレクションのデリにつながる。
それからピザの対面売場、
チーズ売場へと連続。
狭い売場に、商品を縦や前に積み上げ、
目いっぱいの工夫をしている。
ミート&シーフード売場もコンパクト。
奥壁面沿いには、
フレームが少ないリーチインケース。
商品が実によく映える。
2列に並ばせた銀行方式のレジ。
行列はできるが、
意外に早くチェックアウトできる。
ホールフーズやトレーダー・ジョーの繁盛店は、
必ず銀行方式を採用する。
順番どおりに公平にチェックアウトができるから、
お客はストレスを感じない。
それがポイントだ。
並ばせるのは仕方ない。
しかしストレスを最小限にする。
それが必須の仕事だ。
そしてアラメダのセーフウェイ。
花卉売り場はいつみても美しい。
バルーンや垂れ幕などで、
シーズンのプロモーションを打ち出す。
ウッディな床とスポット照明の多用。
この店の特徴。
セーフウェイの中でも、
群を抜く売場の管理状態。
店舗奥の調剤薬局コーナー。
ライバルのクローガーは、
ファーマシーを店舗入口に設ける。
どちらがお客の利便性が高いか。
天井は張らないスケルトン方式。
快適感をつくると同時に、
ローコスト。
ベーカリーやデリをまとめた店舗右翼。
スーパーマーケット第2位のセーフウェイ。
業績不振で、投資会社サーベラスに売却され、
これまた不振に喘ぐアルバートソンと統合された。
セーフウェイの現場は、
モチベーションが下がっているはず。
しかし、このアラメダの店は、頑張っている。
その理由のひとつは、
隣接するトレーダー・ジョーの存在。
隣同士で切磋琢磨しあっている。
トレーダー・ジョーは
店頭では花を飾ってお客を迎える。
バナナは1本売り。
1本19セント。
スナックフーズだ。
サンフランシスコに来たら
もちろんバークレー・ボウル。
同じバナナでも、
この品種の多さとこの量。
トマトの品揃えも圧巻。
野菜のほとんどはバラ売り。
葉物もみずみずしい。
世界中から野菜や果物を仕入れる。
珍しい果物のオンパレードに、
平和堂のメンバーも興味津々。
バークレーにあるアンドロニコスも視察。
一応、高級スーパーマーケット。
天井を張った伝統的なスタイルだが、
店がドヨンとしている。
スティール什器を使ったグロサリー売場。
驚くほど床が汚い。
お客は入っているが、
明らかにシニアの伝統顧客。
高級スーパーもレギュラースパーマーケットも、
イノベーションがない店は、
どんどん退場させられる。
アンドロニコスは、
ピークには13店展開していたが、
今は相次ぐ閉鎖で5店舗。
そのうちの1店がこのバークレーの店。
しかし悲しくなるほどの体たらく。
ポジショニングを喪失した店の末路は、
悲惨だ。
昼食はインナウトバーガー。
出来立てのハンバーガーを食べさせる。
ドライブスルーが併設されている。
注文を取るスタッフ。
われわれも注文をし、
ドリンクバーに並ぶ。
何十人が来ようが、
淡々とスピーディに動くスタッフたち。
そのオペレーションは必見だ。
おいしいハンバーガーを頬張り、
喜ぶメンバー。
こちら団長、副団長も笑顔。
天候に恵まれた一日。
サンフランシスコ湾に浮かぶように、
ダウンタウンの街並みが見える。
とんがった店を次々に見て回った。
感動した。
しかしかつての高級スーパーの、
現在の悲惨な姿。
背筋がぞっとする店を訪れ、
第10回平和堂アメリカ研修団は、
複雑な思いを抱くとともに、
イノベーションへの気概を燃やした。
(つづきます)
〈結城義晴〉