名人会忘年会と「インターネットの進歩と破壊」
昨日は、名人会の忘年会。
1989年に私は、
月刊『食品商業』編集長に就任した。
その時、筆者のみなさんが、
お祝いのゴルフコンペを開催してくれた。
故杉山昭次郎先生も、
荒井伸也さんもご参加くださった。
荒井さんは当時、
サミット㈱副社長だった。
そのメンバーのみなさんが、
一回きりで終わらせるのは、
もったいないということで、
2カ月に1回くらい、
ゴルフを楽しむ会をつくった。
それがいつからともなく、
「名人会」と名乗ることになった。
「迷人会」などと自嘲気味だった時もあるが、
段々、みんな図々しくなって、
いまや、こだわることなく、
「名人会」と称している。
2年前の9月に小森勝さんが亡くなって、
現在のメンバーは、
右から土井弘さん、
浅香健一さん、鈴木國朗さん。
もう26年も続いている会で、
鈴木さんも来年は還暦。
土井さんが今年69歳、
浅香さんが68歳。
いまだにみなさん、
悠悠自適の現役で、
ゴルフにも打ち込んでいる。
土井さんは、電通切っての流通通で、
現在は、東洋学園大学非常勤講師、
綜研情報工芸顧問。
大学では「広告論」を教授し、
商人舎magazineでの執筆は、
「日記調査と生活導線マーケティング」
浅香さんは、
㈱リテールマーケティング研究所所長。
立地論の専門家で、
ブログネームは「リッチマン」
鈴木さんは、
㈱アイダスグループ代表取締役社長で、
今年もヤオコー特集やチラシ特集で、
論陣を張ってもらった。
年を忘れつつ、
感謝申し上げたい。
そして今日は、
東京。有明。
TFTビルのブルーチップ㈱を訪問。
左は取締役営業担当の伊藤義明さん、
右が営業統括部長の鍋島丈夫さん。
社長の宮本洋一さんと対談。
実に、いい内容でした。
特に全国のローカルチェーンの経営幹部には、
最新の情報と必須の提言があって、
私もずいぶん考えさせられた。
ありがとうございました。
さて日経オンラインの経営者ブログ。
鈴木幸一さんが連載している。
㈱インターネットイニシアティブ会長。
「インターネットは進歩か、破壊か」
インターネットは小売業にも、
サービス業にも、
決定的な影響を与えている。
言わずもがな。
鈴木さんは言う。
「世界は、インターネットという
技術革新を前提として
仕組みごと変わっていかざるを得ない。
もはや、この巨大な技術革新を
止めることはできない」
そして我が日本に対する評価。
「日本は技術的な課題には素早く対応しても、
仕組みを変えてしまう
この技術の導入については、
後ずさりしながらしか
進もうとしていない」
後ずさりしながらしか進まない。
軽減税率に対する我が小売業界と同じ。
「社会制度から働き方に至るまで、
痛みが伴う仕組みを変えることほど、
日本が苦手とすることはない」
痛みが伴う変革。
日本が苦手とすることをやり遂げれば、
著しい成果を上げることができる。
鈴木敏文、柳井正、似鳥昭雄・・・。
「将来を考えるとき、インターネットに対し、
後ずさりの姿勢を変えない日本は、
インターネットを前提とした仕組みに変えようと、
積極的に対応をしている世界の国々に
後れを取るのではないか」
だからこれからの日本のリーダーは、
イノベーターでなければならない。
ただし、日本のインターネットの草分けは、
それに対する疑問も呈する。
「インターネットという技術革新を、
ある種の外的な要因であると考えると、
現在の世界のあらゆる文明を
破壊させるかも知れないと思ったりする」
そこでアルベルト・ジャコメッティを引用。
「文明ニハ進歩トイフモノハナイ、
タダ変化ガアルダケダ」
スイス人彫刻家。
「腕のない細い女」はいい。
箱根彫刻の森美術館所蔵。
「例ヘバ、エジプト或ハローマニ
キリスト教文明ガ入ル、
ソレハ変化デアッテ、発展デハナイ、
ソレハ一ツノ文明ノ死ニスギナイ」
「ソレ自体デハ
何千年モソノママ続クモノガ、
外的ナ力デ変化スル。
ツマリ、一ツノ文明ガ死ンデ、
他ノ文明ガ取ッテ代ル」
(『ジャコメッティ手帖』矢内原伊作著)
ジャコメッティが語ったように、
「インターネットという技術革新は、
進歩ではなく、近代というものに取って代わる
新しい文明をつくるのかも知れない」
鈴木さんはシニカルだ。
「その文明が
素晴らしい文明となるかどうかは、
別の話である」
チェーンストアという小売りの近代化に対して、
インターネットのEコマースは進歩ではなく、
それに取って代わる新しい文明となってしまう。
それが素晴らしいかどうかは、
別の問題として、
消費マーケットに浸透していく。
ただし現代化とは、
それらを包含しつつ、
アウフへーベンするものである。
後ずさりしながらの前進からは、
何も生まれない。
痛みを伴った仕組みの変革は、
能天気な全面肯定や、
根拠のない全面否定とは、
別次元のものなのだ。
〈結城義晴〉