結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年12月26日(土曜日)

「史上最も暑い年」の総括イメージは「黄色信号」だった

「史上最も暑い年」
今年はこう、呼ばれることとなった。

今年の漢字一字は「暑」が、
よかったのかもしれない。

アメリカ海洋大気局の月例気象報告書。
「過去136年間で最も暖かい11月」だった。
7カ月連続で月平均気温の最高記録を更新。

11月の世界の地表気温と海面水温は、
20世紀平均を上回り、
観測史上最も暑い年になる可能性が高い。

24日のニューヨークも、
最高気温は22度。

アメリカ合衆国の観測史上、
最も暖かいクリスマスイブだった。

暑い年の原因は、エルニーニョ現象だ。
熱帯太平洋東部の海水温が、
平年に比 べて高くなる現象。

それが世界各地に異常気象を引き起こし、
北半球では暖冬となる地域が多い。

エルニーニョは、
スペイン語で「神の子」を意味する。

その神の子の手は、
世界経済の波乱要因となった。

例えば天然ガス価格は16年ぶりの安値。
暖房需要の減少観測が原因。

日経新聞によれば、
「原油先物相場も軟調に推移」。
しかし天然ガスは暖房需要が多く、
その落ち込みは一段と鮮明。

この天候異変で、
世界的な農作物の不作。
だから食料品のインフレ圧力が懸念される。

環太平洋の農業国も、
軒並み不作や不安を訴える。

フィリピンでは、
「エルニーニョ現象の長期化で、
景気の下振れリスクがある」

タイではコメ農家が水不足に苦しむ。
7・8・9月期の農業部門はマイナス5.7%。

インドネシアでは雨期入りが 大幅に遅れ、
野焼きによる煙害が拡大。

ベトナムの稲作地帯メコンデルタでは、
主要な川の水位が過去90年で最低となり、
穀物や酪農に深刻な被害が出始めて いる。

オーストラリアは乾燥した気候が、
穀物生産に影響を与えている。

ブラジルでは大雨や干ばつで、
サトウキビや大豆の生育が遅れた。

日本の小売業がやはり、
11月の暖冬で不振。

私は嘆いた。
「あ~あ、お天気産業よ!」

しかし「史上最も暑い年」
あなどれない。

日経オンラインの経営者ブログ。
宮内義彦さんが、
今年1年を振り返りつつ、整理する。
オリックス・シニアチェアマン。

「今年は『難しい年だった』との、
一言に尽きるような気がします。
なおかつ、来年に向けても
世界がより良くなるという確信が持てない」

まず第1に政治面。
「シリアを中心とした混乱が
世界の不安定要因となりました」

世界のテロ組織を挙げる。
まずイスラム国のIS、
国際テロ組織アルカイダ、
アフガニスタン反政府武装勢力タリバン、
イスラム過激派ボコ・ハラムなど。

「世界の混迷はさらに深まる」

シリア難民受け入れ問題は、
欧州連合内で亀裂が生じた。

相対的に欧州の地盤沈下が進んだ。

今年の政治をめぐる全体的な情勢。
「国際協調より
国同士の対立色が強く出ている」

混迷、混沌。

残念ながら、
世界の情勢は、
ここから抜け出せない。

第2に経済面。

「中国が世界経済の主役に躍り出ている」
しかし、今年は中国の経済が停滞し、
それがインドを除くBRICsなど
新興国の力も削いだ。

「結局のところ、先進国に
頼らざるを得なくなった感があります」

では先進国は何をしているのか。
「すべての国が金融緩和を
徹頭徹尾進めてきました」

「それによって経済が
壊滅的な状況になる場面は避けられた」

けれど「金融緩和の結果が
どう帰結するかは分かりません」

「来年も金融緩和に頼った経済運営
という流れは変わらない」

「問題はどの国も本格的な
成長戦略を打ち出すだけの力がなかった」

「欧州の多くの国の経済は
腰砕けのような状態になっています」

宮内さんは、世界経済に対しても、
やや悲観的だ。

日本は、日銀は、どう判断するのか。

安倍政権の「新三本の矢」
➀名目国内総生産(GDP)600兆円
②出生率1.8
③介護離職ゼロ

これらの実現。

「そもそも人口が減っていくのに、
GDPを増やすということ自体
あまりにハードルが高く、
達成する見込みが小さすぎる」

「日本は人口問題に対する
危機意識がなさ過ぎる。
来年には欧米を参考にした
移民政策の是非を
議論すべきだと思います」

私も同感。

「介護離職ゼロの達成にしても、
実現までの手立てがみえない」

「これまでの実績からみると、
種々小粒の前向きな政策は生まれますが、
日本の根本的な課題については
避けて通っている感が拭えません」

「結局、経済を支えるのは
金融緩和の1本だけになりかねない」

第3に企業レベル。

「大手企業を中心に
業績は上向いてきました」

株価も日経平均が2万円に近づいた。

「多くの企業が収益の向上に注力し始めており、
日本経済の浮揚に向けた
若干の追い風になっている」

つまりは金融緩和と、
民間企業の努力が、
じわりじわりとプラスにもってきた。

「その間に本格的な成長戦略を
つくる必要があります」

これらを総合して、
宮内義彦の2015年のイメージは、
「黄色の信号」
signalmodel2

「前に進む青色の信号でもなく、
進まない赤色の信号でもありません」

「世界は混沌としており、
注意のランプがともっています」

見識と実績を備えた経営者の、
2015年の見方。

うなづけるところばかりだ。

注意ランプといえば、
山下達郎がコンサートを、
途中で中止した。

原因は喉の不調。
「どうしてもGの音がでない」

「このまま公演を続けることは
お客さまに対して不誠実」

「許されるなら、最初から
もう一度、演奏したい」

山下自身が判断し、盛岡公演は、
予定時間の半分の約90分で終えた。

振り替え公演を開催し、
チケットの払い戻しにも対応する。

山下は、エンターテイナーではなく、
ストイックなアーティストなのだろう。

「Gの声が出ない」
芸術家にとっては、
深刻な「黄色信号」だ。
smie074t319進めか、止まれか。

来年は、ひとつひとつ、
その場その場で、
判断しなければならない。

Think One Thing at a Time.

〈結城義晴〉


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