京都やまむらやの「レジ前のキス」と「音楽する幸せ」
今日は、人日の節句で、
「七草」の日。
横浜の空は美しい。
紫式部著『源氏物語』は全54帖(じょう)。
その34帖・35帖が、
「若菜上」と「若菜下」。
この2巻が、平安中期の大長編の中で、
秀逸の小説となっている。
そして「若菜」は七草に通ずる。
大野晋・丸谷才一の対談集、
『光る源氏の物語』は実に面白いが、
その「若菜」編に、以下の句が出てくる。
江戸時代の『犬子集』という俳諧の集にある。
源氏ならで上下に祝ふ若菜かな
『源氏物語』の「若菜」の帖が、
上下巻あることをもじって、
身分の高い人も低い人も、
上下そろって若菜のスープを飲む。
そんな俳句というか川柳というか、
滑稽俳諧。
年末年始、ゆっくりと、
この対談集を楽しんだが、
いま、「若菜下」まで読んできて、
七草の日を迎えた。
ピッタリ。
さて、Weekly商人舎の、
日替わり連載・水曜日は、
HERSTORYのペルソナマーケティング講座
昨日の記事が実にいいし、おもしろい。
vol.23のタイトルは、
“エグゼ50”トレンド。
正社員で働く50代のキャリア女性市場を、
管理職(エグゼクティブ)に就いている意味から
「エグゼ50」と呼ぶ。
エグゼ50の現在の関心事は、
「“夫源病(ふげんびょう)”の予防」
夫の言動がストレスとなり、
心身に不調をきたす症状。
そこで夫源病”予防を意識した提案。
「京都のスーパー『やまむらや』は、
去年11月22日(いい夫婦の日)から
11月29日(いい肉の日)まで、
夫婦がレジの前でキスをすると
100g=734円の牛カルビを安くする
というイベントを実施しました。
唇なら5割、頬なら3割の割引率で、
ほとんどの夫婦は唇を選んだそうです」
実にいい。
2月14日のバレンタインデーには、
絶好の企画。
別に夫婦でなくてもいいし。
Weekly商人舎の日替わり連載は、
月曜が2週間販促企画、
火曜が2週間天気予報、
水曜がペルソナマーケティング講座、
木曜が今週のお惣菜、
金曜がABCLランキング。
充実のラインアップです。
月刊『商人舎』購読者とその五人組しか、
読むことはできませんが、悪しからず。
さて、1月4日の朝、
DVMsどうぶつ医療センター横浜に行った。
待合室で東京新聞を、
隅から隅まで読んだ。
そのコラム『心にふれる話』
村上一樹さんが書く。
「音楽が持つ力」の物語。
指揮者の山下一史さんは、
「巨匠カラヤン」最後の弟子。
東日本大震災の発生時には、
仙台フィルハーモニー管弦楽団の、
正指揮者だった。
大震災の直後には、葛藤にさいなまれた。
「音楽などしてはいけないのでは」
私も『店ドラ』を書いていたから、
発行すべきかどうか、迷った。
山下さんが、再び指揮棒を振ったのは、
震災から約2週間後の大阪。
楽団を指揮しながら、
不思議な感情が生まれた。
「音が出る時に湧き上がって来る喜び。
ああ、これは音楽ができる喜びなんだ」
その時に実感した。
「誰かのためではなく、
自分が幸せになるために
音楽をやっている。
その姿に観客も
幸せになってくれるのだ」
商売も仕事も、
指揮者と同じ、
音楽家と同じ。
アーティストと同じ、
アスリートと同じ。
自分が幸せになるために、
商売をやる。
その姿の真摯さに、
顧客も幸せになってくれる。
もちろん顧客のために、
商品やサービスを販売する。
その商品やサービスの価値のご利益と同時に、
それを販売する人びと自身の幸せを感じ取って、
顧客も幸せになってくれる。
ただし真摯でなければいけない。
ピーター・ドラッカー先生。
「マネジャーとして、始めから、
身に着けていなければならない資質が、
ひとつだけある。
才能ではない。
真摯さである」
自分の仕事に誇りを持つ。
そして仕事に従事することに、
幸せを感じる。
それが顧客を幸せにする。
七草も人を幸せにする。
『源氏物語』「若菜上下」も、
もちろん読めば幸せになる。
やまむらやのレジ前のキスも、
夫婦を幸せにする。
そして音楽も商売も、
人を幸せにする。
そのためには、
企画し、運営する本人自身が、
そのことに幸せを感じなければいけない。
〈結城義晴〉