ライフ押上駅前店訪問とニトリ社長交代の「愛嬌と度胸」
北極振動(Arctic Oscillation)
日本列島を覆う寒波。
ニューヨークなど北米を襲う大雪。
その原因が「北極振動」らしい。
北極と北半球中緯度地域の気圧が、
相反して変動する大気振動の一種で、
北極付近で寒気のため込みと放出が繰り返される。
年を越してから、
北極付近の気圧が高くなった。
一方で、アメリカ東部や日本など、
中緯度地域の気圧が低くなった。
このため、北半球では、ほぼ同時期に、
偏西風の南北方向の蛇行が強まった。
そこで北極から流れ出した寒気が、
偏西風の蛇行に沿うように南下した。
ああ、寒い。
昨年は1月2月にニューヨークに滞在して、
あのときも、極寒だった。
ああ、寒い。
けれど、北極振動が原因と知ると、
「地球の運動なのだから」と許す気になる。
さて、その寒い朝、
東京スカイツリーへ。
ライフの押上駅前店。
地階と1階がライフコーポレーションの店舗。
セントラルスクエアというフォーマット。
2階はニトリ。
ライフは地階が600坪、
1階が400坪。
ニトリは900坪。
12月5日にオープンして、
絶好調のままに年末年始を経過した。
ライフコーポレーションの上柿景吾さんが、
ずっと案内してくれた。
管理本部兼広報部兼社会環境推進部担当課長。
その後、秋葉原のライフ本社へ。
2時間以上もインタビューと情報交換。
依田宏さん(右)と上田隆さん。
依田さんは首都圏営業企画部RE担当部長、
上田さんは管理統括本部担当部長、
兼広報部長兼社会環境推進部長。
いい店、いい話でした。
ありがとう。
さて押上の東京スカイツリーの店で、
ライフとコンビネーションを組むのが、
ニトリホールディングスのニトリ。
そのニトリホールディングスが、
社長交代の記者会見。
日経新聞は夕刊で、
「唐突な退任」と見出しを付けた。
何か、知っているとでもいいたげ。
しかしこの交代は、
極めて順当。
2月21日に正式に就任するのは、
白井俊之さん。60歳。
現㈱ニトリ社長にして、
ニトリホールディングス副社長。
まあ、予定の継承で、
その時期が早まったか、
といったところ。
創業者の似鳥昭雄さんは、
ホールディングス社長で71歳。
今後も、代表権を持つ会長として残る。
白井さんは、
生粋のニトリのチェーンストアマン。
1979年に宇都宮大学工学部卒業後、
当時年商29億円の㈱ニトリ家具に入社。
社員は100人にも満たない規模だった。
「完成されたものほど、
つまらないものはない」
このニトリの求人コピーに惹かれた。
店長など現場のキャリアを積み、
実務に関しては「ピカイチ」。
2004年常務取締役、2008年専務取締役、
そして14年、ニトリ社長に就任し、
ニトリホールディングス副社長を兼務する。
似鳥昭雄さんの右腕。
ニトリホールディングスは、
2013年2月期に300店3000億円を達成。
昨年2月期に4000億円、
昨年10月400店達成。
1店平均年商10億円、
2年で100店、1000億円を上積みする。
今年2月期にはニトリ時代から、
通算29期連続の増収・営業増益を達成する。
来年は30期連続増収増益。
それが似鳥さんの花道との見方が強かったが、
「意思決定を単純化、迅速化する」ために交代。
今後の課題は、
ニトリは「32年3000店」を目標に掲げる。
その目標時点の店数は、
国内1000店、海外2000店。
現在は、台湾と中国、
それからアメリカに出店しているが、
海外店舗数はまだ40に満たない。
記者会見のコメントが面白い。
似鳥さんの発言。
「実務は私以上に詳しい。
物事を即断即決できる」
「私がCEOで、白井さんがCOOとなる」
「白井さんとは苦楽をともにしてきた。
作り上げたものを否定して、
リスクに果敢に、未来に向けて挑戦してきた」
「彼は逃げる姿勢を見せない。
そして、性格が明るい」
「愛嬌も度胸もあり、一番、
条件にあっているんじゃないかなと思う」
「愛嬌と度胸」
この二つの特性は似鳥昭雄自身のものだ。
そしてこのユニークさがニトリの真骨頂。
「常に私に報告に来るから安心だ。
彼しかいないなと前々から思っていた。
満を持してのエースが登板する。
もうちょっと早くてもよかったが」
「ただ、私もまだ20代
という気持ちでやっているので、
死ぬまで現役でいたいと思っている」
白井さんのコメント。
「今までのことは全面的に
否定するようにと言われている」
「何ができるかではなく
何が重要なのかという点を考え、
職務に励んでいきたい」
何があっても、時期はどうでも、
この社長交代は、ニトリの、
専門経営者時代到来を意味している。
そう言えばライフコーポレーションも、
清水信次会長という創業者から、
岩崎高治社長への交代で、
専門経営者の時代を体現して、成功した。
愛嬌と度胸。
場合によってはそれを否定することも、
白井俊之には許されている。
〈結城義晴〉