セブン&アイの「企業統治」とマルトの「大切にしたい会社」
日経新聞が朝刊一面トップで報道。
「鈴木セブン&アイ会長退任へ」
「コンビニエンスストアを日本に根付かせ、
巨大流通グループを築き上げた
鈴木会長の引退劇は
企業統治の重みが増すなか、
経営者のリーダーシップの在り方が
問われる契機になる」
日経のキーワードは「企業統治」
セブン&アイ・ホールディングスには、
この3月に指名・報酬委員会が設置された。
目的は「役員人事などの手続きの
透明性を確保するため」
時事通信は問題にする。
「『独裁的』ともとれる
グループ中興の祖の言動に
待ったを掛けた要因の一つは、
社外取締役の存在だった」
セブン&アイの、この委員会は、
鈴木敏文会長と村田紀敏社長、
そして社外取締役2人がメンバー。
セブン-イレブン井阪隆一社長の退任案に、
社外取締役の2人の委員が反対。
意見が割れたまま交代案は
取締役会に提示され、
またまた社外取締役らの反対で否決。
この否決の責任を取る形で、
鈴木敏文会長が辞任を表明。
社外取締役の働きに評価の声が上がる。
企業統治のために、
カリスマトップを退任に追い込んだ。
しかし今回は、それだけではない。
「物言う株主」サード・ポイントも、
アメリカから批判の声を上げた。
さらに実質的なオーナー伊藤雅俊氏も、
この井阪退任には理解を示さなかった。
日経新聞『きょうのことば』は、
「企業統治」
「企業価値を維持、向上させるために
経営陣を監視する仕組み」
2015年は「企業統治元年」
このブログでも触れたが、
6月に東京証券取引所と金融庁が、
「コーポレートガバナンスコード適用」を始め、
上場企業には社外取締役の複数選任が、
事実上義務化された。
私もそれで、
一部上場企業の社外取締役に就任した。
「15年5月施行の改正会社法は
企業の統治形態として、
監査役会設置会社、
指名委員会等設置会社、
監査等委員会設置会社の3つを規定」
最も監視が厳しいのが、
指名委員会等設置会社。
このパターンは、
指名・報酬・監査の3委員会を設置し、
いずれも過半数を
社外取締役にする必要がある。
しかし、この最も厳しい制度を
導入した上場企業は、
約70社にとどまる。
セブン&アイは監査役会設置会社。
だから同社の指名報酬委員会は任意の組織だ。
それでも歯止めの機能を果たしたことになる。
日経の結論。
「一連の騒動は、
経営者の持つ強力なリーダーシップと
企業統治のバランスを
どう取るかという難しい課題を
企業に投げ掛けている」
ちなみにセブン-イレブン井阪社長は、
「社長を続投する意思がある」と表明している。
この事件に関しては、
Weekly商人舎で、
商業視点から特集する予定。
さて私は昨日から、
福島県いわき市。
㈱マルト商事の米国研修発表会。
宿泊は小名浜オーシャンホテル。
マルトに来ると必ず泊まる定宿。
太平洋から白い波が打ち寄せる。
この海の向こうから津波がやってきた。
写真右上に照島が見える。
高さ30mの凝灰岩の岩島。
白い岩肌がむき出しになった小島。
1945年、「照島ウ渡来地」として、
国の天然記念物に指定された。
毎年10月中旬頃、
海鵜(うみう)が飛来し、越冬する。
その小名浜オーシャンホテル、
ゴルフコースを併設していて、
真下に18番ホールが見える。
念願かなって、今日は、ラウンド。
左が㈱マルト専務の安島誠さん、
右が㈱ファミリー社長の安島由美子さん。
ファミリーはマルトグループで、
アパレル分野を担当する小売業。
楽しいラウンドだった。
そのマルトが昨年、受賞したのが、
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞。
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞は、
5つのステークホルダーを重視する。
①従業員とその家族
②外注先・仕入れ先
③顧客
④地域社会
⑤株主
「人を大切にし、人の幸せを実現する行動を
継続して実践している会社の中から、
その取組みが特に優良な企業を表彰し、
他の企業の範となることを目的とする」
2010年の第1回から、
経済産業大臣賞は、
企業規模を問わず特に優秀と認められる会社。
中小企業庁長官賞は、
中小規模で特に優秀と認められる会社。
それ以外に実行委員長賞、
及び審査委員会特別賞が授与される。
マルトは、
第5回経済産業大臣賞だった。
応募資格は、過去5年以上にわたって、
以下の5つの条件にすべて該当していること。
①人員整理を目的とした解雇や退職勧奨を
していないこと
(東日本大震災等の自然災害の場合を除く)
②外注企業・協力企業等、仕入先企業への
コストダウンを強制していないこと
③障がい者雇用率は法定雇用率以上であること
④黒字経営(経常利益)であること
⑤重大な労働災害がないこと
(東日本大震災等の自然災害の場合を除く)
マルトの経済産業大臣賞受賞の理由。
「地域のライフラインを守ることを使命とし、
2011年3月11日の
東日本大震災が発生した当日、
被害がひどい店舗もある中で、
『店を開けることが自分たちの使命』と、
本部からの指示ではなく、
社員自らが店を開けることを決めて再開した。
お客様、従業員、取引先を大切にし、
かつ地域社会に貢献する取組みを行っている。
その取組みを持続するために
安全性・健全性を高める経営を
行っていることが高く評価された」
これまで小売業では、
第1回審査委員会特別賞に㈱福島屋、
第2回審査委員会特別賞にめがねのヨシダ、
第3回実行委員長賞に、
㈱ケーズホールディングス。
第4回審査委員会特別賞に、
㈱パン・アキモトが受賞。
経済産業大臣賞はいわば大賞だが、
マルトは初めての小売業の受賞。
第6回の「大切にしたい会社大賞」も、
今年3月2日に決定された。
経済産業大臣賞はサトーホールディングス㈱、
厚生労働大臣賞は㈱エイチ・エス・エー、
中小企業庁長官賞は㈱日本ロック、
そして実行委員長賞は、
社会福祉法人アンサンブル会。
残念ながら第6回に、
小売業は入っていない。
だからこそ、マルトの大賞受賞は、
価値がある。
「この受賞に応える会社になれ!」
私は講義の最後にそう言った。
「大切にしたい会社」と、
「企業統治」されねばならない会社。
どっちが幸せなのか。
良く考えねばならない。
〈結城義晴〉