auショップの食品販売と「トランプ亡霊」の民主主義
5月の爽やかな風を受けながら、
今日がやってきた。
今週は日曜から昨日の火曜まで大阪。
そして今日は、まさにピンポイントで、
横浜商人舎オフィス。
朝から来客。
別々に来てくれたが、
一緒に写真。
右が當仲寛哲さん、
真ん中が常盤勝美さん。
お二人とも商人舎magazineの常連執筆者。
當仲さんは、㈱USP研究所代表取締役所長。
USPは「ユニバーサル・シェル・プログラミング」
UNIXのシェルスクリプトを使って、
大量データを高速処理する。
その「ユニケージ開発手法」の提唱者。
常盤さんは、気象予報士で、
Weather Merchandiser第一人者。
今日は月刊商人舎の企画を相談した。
二人とも仕事の能力は高いし、
仕事の意欲も人一倍強い。
うれしいことだ。
明日から私はアメリカ出張。
その直前のアポイントで、
元気が出てきた。
そのアメリカ・ニューヨークでは、
あのフェアウェイマーケットが、
倒産申請。
アパレルのエアロポステールも、
チャプター11申請。
あんなに元気だった企業が、
あっという間に腐ってくる。
ホールフーズの第2四半期も、
既存店客数が▲2.1%、客単価も▲0.9%、
既存店売上高は▲3.0%。
恐ろしい。
日本では「au店舗で食品販売」
日経新聞の記事。
auはKDDIのサービスブランド名。
携帯電話を含む移動体通信事業、
ならびにKDDI提供のITサービス事業を行う。
全国に約2500店舗のショップを持つが、
2016年度中に1000店で、
地域の特産品やこだわり商品を中心に、
食品販売を始める。
売場には冷蔵機能付きの専用棚を設置。
商品は、例えば、
コーヒー専門店「丸山珈琲」の製品、
無添加野菜100%ジュース「順造選」など、
30~50品目。
そう簡単にうまくいくとは考えられないが、
あらゆる業態・フォーマットが、
食品を扱い始める。
それはアメリカでも同じこと。
ウォルグリーンやCVSファーマシー、
さらにダラーゼネラル。
もちろんウォルマート、コストコ。
それらがこぞって、
オーガニックやローカルを扱う。
ホールフーズといえども、
特別のポジショニングを維持することが、
難しくなってきた。
auショップが食品を扱うと、
ソフトバンクやドコモもやがて、
それに追随するだろう。
KDDIは食品販売とあわせて、
通販サイトの品ぞろえも拡大する。
現在は数千点だが、
それを日用品を中心に10万点に広げる。
これは完全に、
業態を超えた競争を意味する。
日米欧。
激変はまだまだ、
収まらない。
最後に英国エコノミスト誌。
“Trump’s triumph”の記事が話題になって、
あちこちで取り上げられている。
日経新聞が昨日の朝刊で翻訳して掲載。
タイトルは、
「トランプ氏指名、悲劇の始まり」
創設以来160年の歴史を持つ共和党が、
「テロリストの家族を殺すと言い、
支持者による暴力を奨励し、
とっぴな陰謀説を度々口にし、
保護主義的で経済的に無知で、
自分で自分の首を絞めるような政策を掲げる」
そんな人間を大統領候補に決めた。
「トランプが勝ち進めるのはここまでだとしても
同氏はすでに実害をもたらし、
今後数カ月でさらに被害が拡大する。
しかも同氏が大統領の座を勝ち取る可能性は
ゼロを大きく上回る」
このあと、激しい口調で、
トランプ批判が展開される。
「本誌エコノミストを含め、
グローバル化と米国主導の
自由主義秩序の恩恵を信じる人には、
実に恐ろしい世界観だ」
「幸いにもトランプ氏は
11月8日の本選挙で負けるだろう」
「だがそれもわずかな慰めでしかない。
というのも、たとえ本選で勝たなくても、
トランプ氏が大統領の候補指名を
獲得したこと自体が問題だからだ」
「有権者はこの先半年間、
民主党の対抗馬ヒラリー・クリントン氏が
ペテン師で嘘つきだと
繰り返し聞かされることになる。
その結果、たとえクリントン氏が勝っても
その言葉は人々の心に残る。
そう信じた人は
ペテン師が大統領になったと怒り、
クリントン氏は弱体化する」
「国連安全保障理事会であれ、
中国との2国間協議の場であれ、
米国とのあらゆる会合に、
本選挙までトランプ氏の亡霊が現れる」
トランプの亡霊。
「対立が絶えない共和党は、
実際に分裂するかもしれない。
たとえトランプ氏が負けても、
移民排斥主義と経済ポピュリズムを掲げて
党候補に指名される道があることが示された」
「今のところトランプ氏が勝利する確率は低いが、
何が起こるかはわからない」
しかし、
「同氏が党の候補指名を勝ち取ることは
共和党と米国、そして世界にとって、
悲劇を生む素地をはらんでいるのだ」
日経新聞on-lineの経営者ブログ。
IIJ会長の鈴木幸一さんはいつも鋭い。
トランプ共和党大統領候補に対して、
「選挙民が投票で政治家を選ぶという
民主主義の根幹にかかわる制度が、
極めて危うい状況になっているのではないか
という深刻な思いに至ってしまう」
「ソクラテスが投票によって有罪とされ
死を選んだという話から、
ヒトラーも選挙で多数を占めたという事実まで、
民主主義の根幹の制度が、
基本的に危うい構造であることは、
既知のことである」
「それが民主主義と表現の自由を標榜している
米国で起こっていること自体が、
ことの深刻さ を浮き彫りにしている」
そのとおり。
日本の政治にも、
日本の小売業界にも、
ポピュリズムの芽が生まれている。
善良なアンパンマンよりも、
攻撃的なバイキンマンが人気。
やなせたかしのバイキンマンには、
まだまだかわいげがあるが、
トランプの亡霊には、
民主主義の危うさがある。
〈結城義晴〉