教育の実験室化問題とボランタリーチェーン協会50周年
教育はもつとも実験室化しては
ならぬものでありながら、
もつとも実験室化しやすいもの
〈福田恆存〉
いつものように朝日新聞『折々のことば』
ただし昨日の連載。
福田恆存は大正元年生まれの、
評論家、翻訳家、劇作家、演出家。
「教育・その本質」(1957年)からの引用。
福田は「人は造り変えられる
という『妄想』を強く警める」
編著者の鷲田清一さん。
「人を造り変えるどころか
育てることすら
十分にはできないもの」
「それより、子どもが
そこにいれば勝手に育つ、
そのような場所をどう用意しておくかが、
大人の責務ではないのか」
まったくその通り。
私の教育に対する信条は、
「邪魔をしないこと」
一人ひとりに、大人として接する。
親のエゴをこどもに押し付けてはならない。
教育は実験ではない。
しかし実験のように教育してしまう。
恐ろしい。
これは大人の教育も同じ。
来週火曜日から、
商人舎ミドルマネジメント研修会。
第9回になる。
育つための「場所」を用意して、
そのための知識を教授する。
そして、応援する。
すると、自ら育つ。
それが一番いいし、
一番早い。
今日は一日中、
月刊商人舎6月号の原稿書きと責了仕事。
夕方、学習院マネジメントスクール講義。
その報告はまた、明日。
今日は昨日の報告。
日本ボランタリーチェーン協会
創立50周年記念大会
会場は虎ノ門ヒルズフォーラム。
第一部は記念式典。
まず日本ボランタリーチェーン協会会長、
井上毅さんのあいさつ。
「サービス業の分野では
生産性向上の有力な手段として、
ボランタリーチェーンの推進があげられます。
最近ではサービス業にも
ボランタリーチェーンが適応可能だ
ということが認められつつあります」
有形財の領域から無形財の世界へ。
すべてのビジネスが転換し、進化する。
ボランタリーチェーンも同じだ。
そして表彰式。
経済産業大臣賞は、
全日本食品㈱代表取締役会長
齋藤充弘さん。
中小企業長官賞は、
オールジャパンドラッグ㈱取締役
泉田幸雄さん。
西川八一行さん。
そして農林水産大臣賞は
協同組合セルコチェーン理事長
佐伯行彦さん。
代理受賞の方もいたが、
おめでとうございました。
それから功労賞のみなさん。
続いて功労者表彰が行われ、
最後に受賞者の皆さんが一堂に会す。
第1部の最後に、
協会50年の歴史をスライド上映。
私もちょっと登場しました。
流通詩人の「元気を出そうよ」
第2部は記念講演。
中小企業庁長官の豊永厚志さん。
テーマは、
「稼ぐ力のある中小企業に向かって」
中小・小規模企業白書をもとに、
それを読み解くことで、
見えてくる現実と課題点を整理・解説。
勉強になった。
第3部は懇親会。
会長あいさつの後、
祝辞は経済産業省の星野剛士さん。
経済産業大臣政務官。
「全国津々浦々の
サービス業をはじめとする、
中小企業者等の生産性の向上のため、
中小企業等経営強化法が
成立をいたしました」
次に農林産業省の丸山雅章さん。
食料産業局審議官。
「少子高齢化の時代を迎え、
地方都市部を問わず、
人口が減少しています。
とくに地方では
小売業の後継不足や廃業など、
買物弱者対策が大きな問題となっています。
こうした課題に対応するには、
地域に密着する小売業の力が重要です」
乾杯の音頭は、末澤壽一さん。
日本ハム㈱代表取締役社長。
「我々の業界にはこれから、
もっともっと大きな変化が待ち受けています。
消費者ニーズも変わってきました。
その変化を先取りし、対応し、楽しむ。
そういう変化をチャンスにしていくぐらいの
気持ちが大事だと思います」
私は昨日も懇親会からの参加。
そして全日本食品㈱社長の平野実さん。
それから村内健一郎さん。
協会の副会長。
㈱村内ファニチャーアクセス社長。
協会前会長の小川修司さん(中)と、
㈱プラネット会長の玉生弘昌さん。
小川さんとは久々にお会いしたが、
ゴルフは年間100ラウンドだとか。
うらやましい。
玉生さんは流通問題研究協会会長。
このところ、本当によくお会いします。
そして中締めは、
副会長の村内健一郎さん。
「21世紀はたったひとりであっても、
とても小さな企業であっても、
新しいアイデアや
ユニークなビジネスモデルがあれば
お客様の支持がいただける。
そういう時代になっていると思います」
月刊商人舎は2013年12月号で、
【特集】を組んだ。
ポスト・モダニズムVC
全日食チェーンと商業現代化現象を追う
その[CoverMessage]
2013年最大のショックは
「小売店舗数の激減」である。
11月末発表の最新経済センサスの報告で、
それは100万件を割り込み、
99万店に減少。
最大で172万軒もあった小売店舗は、
ピーク時に比して72万店、
42%も減った。
卸売業も機能喪失して、
流通の毛細血管に血が通わず、
「買い物難民」の消費者ならぬ
「仕入れ難民」の小売業者が
出現している。
かつての通商産業省、
現在の経済産業省の
「流通近代化」の目玉の一つが
ボランタリーチェーンの構築だったが、
低迷するこの業態に
脱近代化の兆候がほの見えている。
「近代化主義」のモダニズムに
行き詰まりが見えて、
だから「脱近代化=現代化」の
「ポスト・モダニズム」現象が現れる。
日本の小売業にも、まさに、
「現代化」が必須となってきている。
全日食チェーンを筆頭に
コスモス・ベリーズなど
ポスト・モダニズムの
ボランタリーチェーンを追うことで、
商業現代化の大きな図柄を描こう。
田中彰さんにも、
齋藤充弘さん、平野実さんにも、
インタビューをして、
いい特集でした。
そしてこの時の[Message of December]
小さく、狭く、濃く、深く。
サム・ウォルトンは言った。
“Think small!”
「小さく考えよ」
「私たちが巨大な会社になったのは、
巨大な会社のようには
振る舞わなかったからだ」
アメリカのユークロップス。
いまやアホールドUSAの傘下だが、
そのトライ&エラーのコンセプト。
小さく始める。
ゆっくりと進める。
つねに改善する。
ピーター・ドラッカー先生も、
イノベーションのために、
含蓄のある言葉を贈ってくれる。
小さく始める。
シンプルさを貫く。
ケース・バイ・ケース。
近代化から現代化へ。
モダニズムから、
ポスト・モダニズムへ。
ボランタリーチェーンも、
フランチャイズチェーンも、
レギュラーチェーンも。
Deep & Narrow!
小さく、狭く、濃く、深く。
あくまでも顧客のために。
日本のボランタリーチェーンの奮闘を
こころより祈念したい。
〈結城義晴〉