万代不破栄副社長との討論とライフの新店「ビオラル」
朝の大阪の空。
歴史を逆戻りしたイギリスのEU離脱。
直後から、世界の株式市場は、
連鎖的同時安。
ニューヨーク株式市場は「赤い海」
株価ボードが下落を示す赤色に染まった。
日経平均株価は16年ぶりの下げ幅。
しかし逃避マネーが米独日の国債に流入、
国債利回りは過去最低水準まで下落。
結果として、国債価格は上昇。
外国為替市場では、
リスク回避の「受け皿通貨」として、
円高が進む。
ピーター・ドラッカー教授は喝破した。
「ブルジョア資本主義も、
マルクス共産主義も、
どちらも経済至上主義である」
今回の英国民の意思決定は確かに、
一つには経済至上主義への反発ではあった。
それが経済至上主義者たちから、
「ポピュリズム」と揶揄された節もある。
歴史の歯車がグルリと、
音を立てて回ったことは間違いない。
2泊3日の大阪、最後の日。
㈱万代の社長応接室で、
不破栄副社長のインタビュー。
1時間半、互いに腹を割って、
真摯に語り合った。
インタビューというよりも、
万代の将来についての意見交換。
不破さんは三井住友銀行から、
10年前に万代に転籍してきたが、
実に優れた、得難い経営者だ。
昨日、今日とお世話になった人事部の二人。
兼定麻美さんと小倉貴行さん。
もう、お分かりだと思うが、
月刊商人舎7月号は、
万代の特集。
役員クラス全員にインタビューして、
その全貌を明らかにする。
ご期待いただきたい。
不破さんとの会談を終えると、
(株)ライフコーポレーションの新店へ。
今日オープンの新フォーマット。
バナーは「BIO-RAL」
その1号店「ビオラル靭(うつぼ)店」
実はリニューアルオープン。
大阪地下鉄阿波座駅徒歩3分の立地。
隣は中国領事館。
新フォーマットの実験は、
リニューアル店舗に限る。
新フォーマット実験は一言でいえば、
新しいSTPマーケティングの試みだ。
その際、旧店のデータが大いに参考になる。
靭店は1階がライフの食品売場、
2階は「ビオラルガーデン」と「セリア」
総売場面積は1496㎡。
上りのエスカレーターで2階に誘導されると、
まずセリア。
そして、ビオラルガーデン。
憩所兼カフェ。
ただし、下りのエスカレーターはない。
階段またはエレベーター。
ビオラルとガーデンの売場面積は964㎡。
ビオラルだけならば800㎡ほどか。
BIO-RALのキーコンセプトは、
アメリカのホールフーズを模した4つ。
1.オーガニック(有機)
2.ローカル(地元・地域)
3.ヘルシー(健康)
4.サスティナビリティ(持続可能性)
売場はほぼ正方形で、
この4つのコンセプトを実現させようと、
必死のチャレンジがみられる。
青果部門では写真奥に、
「農家さんの直売所」を展開。
「ライフナチュラル・オーガニック」は、
JAS有機認定の青果物など。
ただし、ホールフーズやスプラウツは、
圧倒的な青果の市場性を出すが、
それはない。
精肉売場では「群馬県産えばらハーブ豚」
「鹿児島県産薩摩ハーブ鶏」。
無添加、無えんせき、減塩、
そしてアレルギー配慮型の商品がそろう。
意欲的な試みだ。
惣菜もスーパーフードや国産原料を使う。
そして店内で調理。
さらに「ビオラル専用商品」、
「みどりのごはん」は、
料理研究家・木村みどりさん監修。
店内精米の手作りおにぎりなど、
ビオラル独自の商品を訴求する。
精米加減が選べるお米の量り売りコーナー。
このほかにも、有機JAS認定の加工食品、
「Nature&Co」は、
オーガニック植物エキス配合のコスメ。
さらに話題の水素水などなど。
近隣のライフ阿波座店。
こちらは最近の最新レギュラータイプ。
ビオラルがオープンしたのだから、
もう少し量販型を志向してもいいだろうが、
実にオーソドックス。
2階の冷凍食品とグロサリー。
そして非食品とドラッグ。
ビオラルはまだまだ実験段階で、
当分、赤字が続くだろう。
しかし、意欲的なチャレンジであることは、
間違いない。
その実験の中身よりも、
挑戦の意欲や姿勢、
そして既存店改装という考え方は、
大いに評価できる。
アメリカでもヨーロッパでも、
そして日本でも、
小売業の新フォーマット実験は、
すんなりうまくいくことはない。
ウォルマートのサム・ウォルトンは、
1987年、ハイパーマートUSAを実験した。
1962年のディスカウントストア以来の、
渾身の新フォーマットだった。
しかし、サムは、1年足らずのうちに、
ハイパーマートUSAに欠陥を見出し、
その欠陥を修正して、
新たに「スーパーセンター」という、
フォーマットを生み出した。
それが現在の最強のフォーマットになった。
実験の中身よりも、
その姿勢こそ、
イノベーションの源なのである。
〈結城義晴〉