大橋巨泉逝去とイオンスーパーセンターの「在宅勤務制度」
大橋巨泉が逝った。
82歳。
巨泉と並び称された前田 武彦は、
2011年8月5日没。
奇しくも82歳だった。
野坂 昭如は、
昨2015年12月9日没。
満85歳だった。
永六輔は今年7月7日だった。
テレビ・メディアに貢献したからだろう、
巨泉の死も各局で大きく特集された。
新聞も巻頭コラムで取り上げた。
毎日新聞『余禄』がいい。
早大俳句研究会で、
寺山修司と出会った。
新入生・寺山の句。
黒人霊歌桶にぽっかりもみ殻浮き
先輩の巨泉。
「君はどれほど黒人霊歌について
知っていますか」
寺山。
「では、大橋さんは
東北の薄暗い厨房について
どのぐらいご存じですか」
寺山の才能に衝撃を受けた巨泉は、
俳句をあきらめる。
巨泉とは俳号である。
若き日の才能のぶつかり合い。
あえて言えばこれは、
早稲田の校風であり、
私も体験した、実にいい面だ。
その後、巨泉はジャズ評論家から、
放送作家へと自分の道を切り拓く。
私には「ビートポップス」が懐かしい。
星加ルミ子とともに司会を務めた。
毎週土曜日午後、
首都圏ではフジテレビで放映していた。
1966年〜1970年。
ビートルズの日本来日が1966年。
その後の新曲も、
この放送で聴き、見た。
斬新な音楽番組で巨泉は、
はっぴいえんどの大瀧詠一を先んじていた。
この番組も、選曲から何から、
プロデュースしていたに違いない。
これこそ、巨泉の才能だった。
朝日新聞『天声人語』は、
巨泉のマルチタレントぶりを取り上げた。
「司会だけでなく番組内容を練り、
出演者選びにも関わった」
しかし最後はその生き方を評した。
「多くを成し遂げながらも
『今回の人生では○○しない』との
言い回しを好んだ」
「人生は短いからあれこれ手を出さない」
「多才であることの照れともとれる。
あるいは多才を続けることのコツかもしれない」
「多才」とは何でもできることではない。
「選択した多種の才能」
だから「多才」を続けるには、
「あれこれ手を出さない」
朝日は最後にこう締めた。
「昭和の文化を支えた巨人が、
また一人去った」
「昭和の文化」が多才を求めた。
それは確かだ。
しかし「巨人」という表現は、
まったく当たっていない。
寺山修司の句に注文をつけたり、
「ビートポップス」を仕切ったり。
古いものと新しいものの間を、
行ったり来たりできる能力。
それが大橋巨泉だったと思う。
ご冥福を祈りたい。
さて商人舎オフィスに、
お中元が届けられる。
心から感謝して、頂戴している。
なかなか梅雨明けしそうもないので、
今日は「ひやし飴」と「水素水」で割ってみた。
「ひやし飴」は京都の新食工業㈱製造、
㈱ブルーチップから贈られた。
「水素水」はいちやまマートの『美味安心』
プライベートブランドを贈ってくれる。
これもうれしい。
プライベートブランドは、
その会社のポジショニングを形づくる。
私はそれを勉強したい。
だから送ってもらえると、
試食・試飲して、
内容を知ることができる。
ありがたい。
その「ひやし飴+水素水」
絶賛とはいかないが、
私は悪くないと評価した。
ありがとうございました。
今日はその後、
東京まで出て、北陸新幹線。
軽井沢へ向かう。
横浜も東京も雨。
しかし高崎あたりでは雨は上がって、
ちょっと安心。
しかし軽井沢はご覧の濃霧。
それでも涼しくて、
避暑地としては満点。
夕食会は、プリンスホテルの絶品和風料理。
心から、満足。
さてさて、日経新聞 『真相深層』
イオンが「在宅店長」
見出しとは異なり、
舞台はイオンスーパーセンター㈱。
盛岡市に本拠を置き、
東北地方に21店を展開。
「店長にも在宅勤務を認める人事制度を導入」
「人手は慢性的に15%は足りていない」
そこで新制度は、
店長や課長など店舗管理職に、
1カ月最大5日の在宅勤務を認める。
大胆な制度だ。
対象は約300人。
現在約30人が利用。
セキュリティ対策をした専用端末を通じて、
始業と終業の際に、
上司に入れる連絡で勤怠を管理。
1日の連続勤務時間は8時間までとし、
給与などの減額はない。
管理職が留守にして店は回るのか――。
その懸念をつぶすために、
旧来の店舗運営を抜本的に見直した。
そして予期せぬ効果も生まれた。
店長業務を代行した部下の能力が、
目に見えて高まった。
「より多くの仕事を任せられるようになった」
在宅勤務制度導入に合わせて、
店長、副店長、課長といった職位ごとに、
業務内容の精緻な一覧表が作成された。
いわゆる業務管掌である。
誰が抜けても、すぐ下の従業員が
代わりを務められるようにするためだ。
結果、普段から、
上司の職務内容を意識するようになり、
従業員の成長が早まった。
これまで、現場を重視する姿勢は、
一方で“過度な現場主義”につながり、
生産性の向上を阻んできた。
管理職に昇進したいという女性従業員は、
従来、全体の36%だった。
しかし制度導入後、ある店では
20%だった女性管理職比率が
60%まで跳ね上がった。
管理職の業務内容が透明化されたことで
昇進に尻込みする優秀な人材も減った。
現場の要請に応えた制度改革は、
必ず、うまくゆく。
それを示した「在宅勤務制度」
全国に広がるに違いない。
問題は、経営者や幹部が、
社員を信頼するか否かにある。
ここには「多才さ」は必要ない。
信頼できるか否か。
実はそれが一番難しい。
シンプルだからむつかしい。
〈結城義晴〉