8月の商人舎標語は「良きウェザー・マーチャントたれ!」
8月2日の火曜日。
Weekly商人舎は日替わり連載。
火曜日は常盤勝美の2週間天気予報。
その常盤さんが指導するのが、
「ウェザーMDのポイント」
「週前半は変わりやすい天気のため、
突然の雨によって、
客足動向が急変することもありそう。
レーダー画像等で、
こまめに雨雲の動きをチェックし、
早めに値引きをする判断や、
店舗入り口にマットを敷く準備など
徹底していただきたい」
いいねえ。
昨日から今朝までに読んだ本。
第155回芥川賞の『コンビニ人間』
どちらも小売りサービス業が舞台。
偶然だが、私はうれしい。
芥川賞は純文学、
直木賞は大衆文芸。
しかしその境目が、
だんだん、薄くなっていく。
とくに私は『コンビニ人間』に、
感慨深いものを感じる。
かつては「深夜スーパー」と言われた。
業界ではCVSと略語で示されたり、
アメリカの業界誌の用語を使って、
Cストアと言われたり。
「コンビニエンス」と略されたり、
もっと短く「コンビ」と称されたり。
CVSが一番、普及しそうだった。
私が編集長として年刊で出していたのが、
「コンビニエンスストアのすべて」
それを季刊にし、隔月刊にし、
そして2002年、月刊化した。
その季刊化の際に、
タイトルを『コンビニ』に決定した。
経営専門誌だが、
「季刊コンビニ」から「月刊コンビニ」へ。
それが今、『コンビニ人間』と題されて、
芥川賞作品となる。
うれしい限りだ。
『コンビニ人間』は、
そこで部品のようになって働くことに、
唯一のアイデンティティを見出した、
36歳で独身のアルバイト店員に起こった、
不思議な出来事。
海辺の小さな町にある古い理髪店を、
若いグラフィックデザイナーの男が訪れる物語。
腕のいい老いた理髪師と、
髪を刈ってもらう若者。
最後に明かされる真相。
どちらの作品も、
商売と店の描写が秀逸。
ぜひ、読んでみてください。
今日は『明治マーケティングレビュー』も、
届けられた。
株式会社明治の機関誌で、
1年に4回の発刊。
現在、vol22。
しかし私の連載は第34回を数える。
前身は『明治乳業マーケティングレビュー』
その時代から、私は書き続けている。
「小売業のスーパーマーケティング」
今回は、「イータリー化現象」を書いた。
「イータリー化現象」とは、
イタリア発の「イータリー」のようになる現象。
つまり「リテールとフードサービスの融合化」
それが、ニューヨークのような、
世界一ホットなエリアでは、
急速に他者に伝播していく。
「ル・ディストリクト」へ、
「ロブスター・プレイス」へ、
「ジョバンニ・ラナ」へ。
最後の一文。
「もう二度とウォルマートのごとき
怪物は生まれません。
その揺り戻しが、
第3フェーズの『イータリー化現象』の
内食と外食の融合なのだと思います」
これも手に入る方は、
読んでみてください。
さて8月の商人舎標語。
それは月刊商人舎8月号の、
[Message of August]
良きウェザー・マーチャントたれ!
良き漁師は天候を予測する。
良き農夫も日々の気候の綾を知る。
良き水夫はその変化を事前に察知する。
そして良き商人は例外なく、
ウェザー・マーチャントである。
すなわち天候条件で顧客心理を読み取る。
しかし昨今の日本の商業は、
ああ、お天気産業よ。
いつもいつも、私を嘆かせる。
お天気次第の売上げ・利益。
天候に決定的な影響を受け、
それに従属したような産業。
そのくせ、天候不順を乗り越えられない。
企業や店の商品力が、天候の変化に勝てない。
オペレーションはその後追いしかできない。
だからウェザーMDの必要性が叫ばれる。
しかしそのお天気販促は表層的だ。
季節プロモーションは画一的だ。
平和産業、
人間産業、
地域産業。
そして、
ああ、
お天気産業よ。
顧客の生活は環境とともに変わる。
何が食べたいか、どう生きたいか。
暮らしは、時々刻々、天変地異の中にある。
天候変化が生活心理をつくり、
購買行動を変え、
新しい消費を生み出す。
良き商人は例外なく、
ウェザー・マーチャントである。
天候に応じて顧客心理の変化を読み取る。
〈結城義晴〉
地球は温暖化してきている。
日本も亜熱帯化しているのか。
今朝の横浜でも、
スコールのような激しい雨。
それは日本中を襲う。
だからいま、
顧客の立場に立って、
天候の変化に対応し、
同時に顧客の生活に敏感に反応できる商人が、
顧客の支持を受け、活躍できる。
それが良きウェザー・マーチャントです。
よろしく。
〈結城義晴〉