結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年09月22日(木曜日)

秋分の日の「サンクコスト」と「コンコルドの誤謬」

暑さ寒さも彼岸まで。IMG_9254-6

秋分の日。
今年は9月22日。

1年を4つに分けて、
秋分と春分、
夏至と冬至。

秋分は夏と秋を分ける。

残暑が厳しいと予測されたが、
涼しい。
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秋分の日のコンセプト。
祝日法第2条で、
「祖先をうやまい、
なくなった人々をしのぶ」

秋分の季節性とは関係ない。

前身は1878年(明治11年)の「秋季皇霊祭」
これは1947年(昭和22年)に廃止された。

つまりそれまでは祭日で、
その後が祝日になった。

このことは今週月曜日、
敬老の日のこのブログで書いた。

祝日は「国家が休日とする法定休日」
祭日は、宗教儀礼上の、
重要な祭祀を行う日。

秋分の日はかつて祭日で、
現在は祝日。

だから仏教各派で、
「秋季彼岸会」が開催され、
墓参りをする。

秋分の日は彼岸の中日で、
前後各3日を合わせた7日間が彼岸。

月曜日の敬老の日が彼岸の入り、
今度の日曜日が彼岸の明け。

それにしても涼しい。
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木々の葉も色づいてきた。
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毎日新聞の巻頭言『余禄』のテーマは、
「サンクコスト」

「すじの悪いプロジェクトも
『乗りかかった船』との名目で
打ち切れぬことが多い」

会社の仕事などにもあるし、
あらゆる組織にこれがある。

「とくにそれまでの費用や労力が
むだになるのを嫌い、
損失を広げてしまう」

これを「サンクコスト効果」という。

日本語では「埋没費用」
「まいぼつひよう」と読む。

別の言い方では、
「コンコルド効果」
英語で、Concorde fallacy。

本来は「コンコルドの誤り」
「コンコルドの誤謬・コンコルド錯誤」などとも。

コンコルドは、超音速旅客機。
イギリスとフランスが、
1963年に共同開発したが、
2003年に全機が退役した。

速度が速くて性能が高い。
しかしコストは高くて採算が取れない。
つまり費用対効果の面で問題のあるもの。
そのたとえにコンコルドが使われる。

また、失敗することが予測されつつも、
これまでに投じた投資を
無駄にしたくないという心理から、
計画を中止できずに、
さらに失敗を重ねてしまうこと。

ここでもコンコルドが使われる。

サンクコストも同じ。
「もう取り戻せぬ過去の出費」

余禄は説明する。
「本来は将来の費用と効果だけを考えて
今後を決めるのが合理的なのだが、
人間は過去にとらわれて判断を誤る」

「そこには過去の誤りを認めたくない
というメンツや自尊心の問題もある」

余禄が言いたいのは、
高速増殖原型炉「もんじゅ」

廃炉に向けた動きが始まった。

もんじゅのサンクコストは、
国費だけで1兆円。
22年間で運転したのは、
わずか250日。
年間維持費200億円、
再稼働に何千億円。

「国はもんじゅを中核としてきた
核燃料サイクルは維持する構え」

「フランスで新たな高速炉を共同開発する」

このフランスとの共同開発は、
コンコルドの誤謬に出てくる英国の話。

縁起はよろしくない(ニヒルな笑い)

国内には大量のプルトニウムが、
いまだ蓄積されている。

「なお回らぬサイクルにこだわるのは、
やはり過去の呪縛か」
とコラムニスト。

ついでに「一向に回らないサイクル」から、
「2%の物価上昇目標に向けた
日銀による金融緩和の継続」を皮肉る。

「何にせよ『乗りかかった船』の危うさは
行きがかりにとらわれぬ目で
見きわめたい」

サンクコスト心理を考えねばいけない。

ニコラス・グレゴリー・マンキュー。
ハーバード大学経済学部教授。
米国大統領経済諮問委員会委員長。

『マンキュー経済学』は、
世界の経済学の教科書中の教科書。

そのマンキューが説くのが、
「経済学の10大原理」

第1は「人々はトレードオフに直面している」
あちらを立てればこちらが立たず、
こちらを立てればあちらが立たず。
どちらかを切り捨てねばならない。

もんじゅを廃炉にするか、
高速核燃料サイクルを確保するか。

第2は「あるものの費用は
それを得るために
放棄したものの
価値である」

もんじゅの費用は、
1兆円分の国税に当たる。

そして第3に「合理的な人々は
限界原理に基づいて考える」

「限界原理」には説明がいる。

その意味は、
「トレードオフの関係のものを
単位あたりで等しくすると
最も効率が良くなるという原理」

もんじゅの行動計画に、
「微調整」を加えると、
便益と費用が発生する。

このような「微調整」を
「限界的な変化」(marginal change)という。

そして、限界的な変化によって、
限界的便益と限界的費用が発生する。

もんじゅ計画の変更で、
限界的便益と限界的費用はどうなるか。

たとえ話をさがして、
わかりやすいのは1杯のコップの水。

砂漠で1日ぶりに飲むコップ1杯の水は、
限界的な便益が大きい。

しかし、1リットルの水を飲んだあとの、
コップ1杯の水は、
限界的な便益がひどく小さい。

合理的な人々は、
このコップ1杯の水の費用と、
そのときの便益を考えることで、
消費行動を選択し、実行する。

もんじゅの限界的便益と限界的費用を、
明らかにして議論しなければならない。

その前の議論も、
もちろん必要である。
核燃料や高速炉に対する考え方だ。

マンキューの経済原理は、
会社の経営や運営を考えるときに、
大いに役立つ。

サンクコストの考え方も。

「もったいないは損をする」
株式投資などでも、
サンクコスト効果は使われる。
「損をしたくないと思って損を広げる」

恋愛論議などにも、
このコンセプトはよく使われる。

「sunk cost」
sink(沈む、埋没する)の過去分詞。

think(考える)の過去分詞thunkではない。
感謝するthankでは、もちろんない。

〈結城義晴〉


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