電通の「労基法違反容疑」強制捜査と「鬼十則」と「働き方改革」
厚生労働省が電通を強制捜査。
労働基準法違反の疑い。
理由は違法な長時間労働の常態化。
昨年12月、
同社女性新入社員が、
過労で自殺。
この9月に自殺が、
労災認定された。
その残業は多い月には、
約105時間に達した。
さらに臨時の立ち入り調査の結果、
違法な残業が蔓延していた。
広告代理業は、
そんな業種の代表。
さもありなん、とは思うが、
違法な残業はあってはならない。
経営者と労働者との間には、
その意味で天と地ほどの差がある。
経営者はそれを知らねばならないし、
労働者も同じように、
正しい認識が必要だ。
朝日新聞『天声人語』
「ブラック企業問題を受けて発足した
『過重労働撲滅特別対策班』という
ものものしい名のチームが捜査に当たる」
「ある調査では回答者の4人に1人が、
自分が働く会社が『ブラック企業』に
あたると思っているという」
しかし自分の会社が、
ブラック企業というのならば、
自らそれに、
立ち向かうべきだろうとも思う。
朝日新聞の記者は、
自身、どう考えているのだろう。
「企業社会に失望ばかりが広がるなら、
ひとも経済も伸びることはない」
日経新聞『大機小機』
タイトルは、
「働き方改革待ったなし」
コラムニストは追分さん。
信頼できる書き手。
英国エコノミスト誌の皮肉を紹介。
「米国は1時間当たり62ドルの
国内総生産を生み出すのに対し、
日本はたった39ドルだ。
つまり労働者が燃え尽き、
ときに過労死するのは、
悲劇であると同時に無意味だ」
無意味だ。
そのとおり。
今回は電通にだけ、
矛先が向けられているわけではない。
電通に代表される日本企業社会に、
多くの指摘が向かっている。
電通はもともと、
ニュース通信部門が強かったが、
4代目社長・吉田秀雄が、
マーケティングの概念を取り入れて、
広告取引システムを近代化させ、
単体企業として、
世界最大の広告代理店となった。
その「電通マン」の行動規範が、
「鬼十則」
一.仕事は自ら創るべきで、
与えられるべきでない。
二. 仕事とは、先手先手と
働き掛けていくことで、
受け身でやるものではない。
三. 大きな仕事と取り組め、
小さな仕事はおのれを小さくする。
四.難しい仕事を狙え、そしてこれを
成し遂げるところに進歩がある。
五. 取り組んだら放すな、
殺されても放すな、
目的完遂までは……。
六. 周囲を引きずり回せ、
引きずるのと引きずられるのとでは、
永い間に天地のひらきができる。
七. 計画を持て、長期の計画を
持っていれば、忍耐と工夫と、
そして正しい努力と希望が生まれる。
八. 自信を持て、自信がないから
君の仕事には迫力も粘りも、
そして厚味すらがない。
九. 頭は常に全回転、八方に気を配って、
一分の隙もあってはならぬ、
サービスとはそのようなものだ。
十. 摩擦を怖れるな、
摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、
でないと君は卑屈未練になる。
攻撃的でポジティブな行動原則だ。
そしてこれらは他の日本企業にも、
それぞれの精神的な風土の部分で、
共通するものがある。
仕事は自らつくれ。
与えられるものではない。
受け身でやるものではない。
大きな仕事、
難しい仕事と取り組め。
仕事は放すな。
周囲を引きずり回せ。
これらを今後、電通マンたちが、
どう受け止め、どう行動するか。
遵法であることは、
企業にとって、
必須の要件である。
違法であってはならない。
そのうえで鬼十則は、
どう貫かれるのか。
「鬼」の看板を外す必要はない。
私はそう思うが。
さて、今日は朝から、成田空港へ。
第2ターミナル。
日本航空012便で、
ダラスからアトランタへ。
そのあと、シカゴ、サンフランシスコ。
さらにロサンゼルスに寄ってから、
19日に帰国予定。
今日11月8日。
アメリカ合衆国は、
第45代大統領選挙の、
一般選挙人投票日。
どんな結果となるか、
そしてアメリカという国が、
どんな表情を見せてくれるのか。
アメリカ人はそれぞれに、
どんな反応を示しているのか。
興味は広がるばかりだ。
では、行ってきます。
アメリカ滞在中は、
日本にいる時以上に、
超のつくハードワークである。
私は今、経営者だから、
自分自身は労基法の対象にならない。
しかし私自身は、
新入社員のころから、
いつかは経営者になろうと思っていた。
だからハードワークを続けてきた。
それを部下や仲間に、
強制はしなかったけれど。
〈結城義晴〉