「粥有十利」とマックの期間限定品と「来てる」もの不要論
1月7日土曜日は、
人日の節句。
七草粥を食す。
もちろん春の七草。
そして正月明けの3連休初日。
日経新聞巻頭コラム『春秋』
「正月七日、雪のない所から菜を摘む」
清少納言の「枕草子」から。
7種の菜を吸い物にする習わしがあった。
おかゆになったのは、室町時代。
「かゆには十の利益あり」
福井県永平寺の修行僧は、
食事の前に経文を唱える。
「粥有十利」という。
「しゅうゆうじり」と読む。
仏教用語。
第1は色。
体の色つやが良くなる。
第2は力。気力が増す。
第3は寿。長命となる。
第4は楽。
食べすぎず、体が安楽になる。
第5は詞清辯。
言葉が清くさわやかになる。
第6は宿食除。
前に食べた物が残らず胸やけもしない。
第7は風除、風邪もひかない。
第8は飢消。
消化よく栄養となって飢えを消す。
第9は渇消。喉の渇きを止める。
そして、
第10は大小便調適。
便通がよくなる。
いいことばかりの粗食の七草粥。
是非とも食べたい、
お勧めしたい。
売り込みたい。
さて、日本マクドナルド。
これも日経新聞『企業・消費』欄。
2016年の年間既存店売上高は、
前年比20.0%増。
既存店の増収は2011年以来5年ぶり。
2014年7月に発生したのが、
使用期限切れ鶏肉問題。
中国の上海福喜食品が火元。
製造し卸売りした食肉が、
消費期限切れだった。
7月21日には、チキンマックナゲットに、
この期限切れ鶏肉が
含まれている恐れありとして、
販売中止。
さらに2015年1月には、
異物混入問題が発生。
以来、急落し続けたマックの人気。
今、回復基調。
CEOは2013年8月から、
サラ・カサノバ。
原田泳幸前CEOと交代した途端、
問題が噴出した。
私はサラをずっと暖かく見てきたが、
成果が出てきてうれしい限り。
年間客数は9.1%増、
客単価は10.0%増。
理由の第1は商品政策。
昨年4月販売の「グランドビッグマック」
520円が想定の2倍近い売れ行き。
「高単価な期間限定商品」が好調。
第2は、500店規模で実施した改装。
そして第3は「ポケモンGO」関連の施策。
12月のマーチャンダイジング、
プロモーションがすごい。
12月7日(水)からの期間限定。
チキンマックナゲット人気ソース再登場。
クリーミーチーズソースと、
フルーツカレーソース。
さらにナゲット15ピース特別価格390円。
12月14日(水)からの期間限定販売。
冬の風物詩「グラコロ」、
23年ぶりのリニューアル。
超グラコロと超デミチーズグラコロ。
シャカシャカポテト トマトクリームも。
12月16日(金)からの期間限定販売。
仕掛け付きのおもちゃ8種類。
ハッピーセット妖怪ウォッチ。
12月23日(金)~25日(日)の3日間限定。
クリスマスパーティー向けのセット、
チキンマックナゲット クリスマスキャンペーン。
ナゲット30ピース特別価格750円。
さらに年明けして、
2017年1月6日(金)からの期間限定販売。
ハッピーセット「スーパーマリオ」
ゲーム・キャラクターの玩具が12種類。
そして2017年1月6日(金)投票スタート。
第1回マクドナルド総選挙開催。
日本一のバーガーを決める。
この連続的なプロモーションと、
それに連動したマーチャンダイジング。
Plan Do Check Act。
計画⇒実行⇒検証⇒再実行。
その底辺に流れているのは、
「非定番」の考え方。
つまり期間限定。
英語では定番を「ステープル」(Staple)、
非定番を「シーゾナル」(Seasonal)という。
季節品は「シーズナブル」(Seasonable)。
それではなく、期間限定の非定番商品。
このシーゾナルのPDCAを回す。
マクドナルドがそれを示している。
これによってマックは、
2年をかけて客数と売上げを取り戻した。
さて糸井重里の「ほぼ日」
「今日のダーリン」は糸井の巻頭エッセイ。
「プロ野球の人気に
影が差してきたとか言われて、
サッカーのJリーグがスタートしたとき、
『やっぱり、おれの目をつけていた
サッカーが来たろ?』
とか自慢そうに胸を張っていた人、
いたと思うんだよね」
こんなたとえを連発。
「いわゆる銀塩カメラが
ふつうに『カメラ』だった時代に、
これからは『デジタルカメラが
来るんだよ』と、
だれよりも先に、
デジタルカメラを買った人、
いたよね」
「これからはインターネットが
来るんだと言って、
『ほら、やっぱり
言ったとおりになったぜ』と、
得意になっている人も、もちろんいた」
「必ずIoT来るから、
いま知っとかないと大変だよ」
「もうじき絶対、
Blu-rayが来るから」
そこで糸井。
「来てる」とか「来る」とか
言いたがる人は、
いつの時代にも
必ずいるものだよ。
なにが目的で、
「来る」とか「来てる」とか言うのか、
言ってる本人にも、
よくわからない。
「来てる」「来る」に賭けて
大成功したという人も、
いないわけじゃないとは思うのだけれど、
そういう人は、ほんのひと握りだろう。
「どんな『来てる』も『来る』も、
ずいぶん遅くなってから
知ったり使ったりしても、
ぜんぜん不自由も不便もしないものだ」
「なんにも先取りしない人が
ハイブリッドカーに乗ってて、
そんなつもりのなかった人が
スマートフォン使ってて、
情報に疎いという人たちが
新しい街で食事をしている』
そして結論。
「来てる」とか
「来る」とかに関して、
まったく興味を
持ってなくても、
なんの不都合もない。
いま、そういう考え方が
「来てる」んじゃないか…?
かつて荒井伸也さんが言っていた。
もちろんサミット㈱元社長、会長、
オール日本スーパーマーケット協会、
元会長、現名誉会長。
「スーパーマーケットは、
新幹線を開発する必要はない。
私鉄でいいんです」
私鉄沿線の自分のお客様を、
十二分に満足させればいい。
蛇足のような、
しかし糸井の極め言葉。
「早めに知っておくと、
いいことありそうに
思えるんだよね」
自分の顧客を知って、
PDCAサイクルを回す。
それが「粥有十利」のような、
不変の効用をもたらしてくれる。
〈結城義晴〉