「誰かのための虫や風に」のライフラインとマルト安島家訪問
Everybody! Good Monday!
[2017vol2]
冬の日の冬を忘るる日和かな
〈朝日俳壇より 彦根市・阿知波裕子〉
この正月はずっとそんな天気だった。
しかし早くも、
2017年は第2週に入って、
三連休最後の成人の日。
新成人、おめでとう。
「ほぼ日」の糸井重里さんは、
「星人の日」という。
「バルタン星人」とか、
「おっぱい星人」とか、
「なにか希望する星の人に
なったらいいよね」
「人間の一生がどんどん
長くなってる時代だから、
オトナになるのも、
30歳くらいじゃないのかって、
ぼくはずっと言ってるんだけどね」
「ああ、でも『20歳の意志』って、
やっぱり大事にしたいや」
自分の希望する星の人。
それを目指して30歳くらいまで、
やんちゃするのもいいかもしれない。
同時に「20歳の意志」も、
大切にしたい。
意志には責任が伴うけれど。
毎日新聞『余禄』
東日本大震災で被災した岩手県大槌町。
2年前の成人の日に、
吉野弘さんの詩が朗読された。
題は「生命は」
生命は
自分自身だけでは
完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが
揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを
仲立ちする
私も
あるとき
誰かのための
虻(あぶ)だったろう
あなたも
あるとき
私のための
風だったかもしれない
誰かのための虻や風になって、
命を仲立ちする人生は、
素敵だ。
命の仲立ちとは、
「ライフライン」となることだ。
朝日新聞『天声人語』
歌舞伎の「親子孫三代襲名」の話。
来年の正月、
現松本幸四郎は、
二代目松本白鸚を、
市川染五郎が十代目幸四郎、
松本金太郎が八代目染五郎を名乗る。
現幸四郎74歳、現染五郎44歳、
そして金太郎は11歳。
1981年も、同じ三代襲名だった。
幸四郎は300年続く由緒ある名。
現幸四郎の父、初代白鷗の言葉。
「襲名とは単に名を
継ぐことではない。
名とは命(めい)、
命(いのち)のことだ」
ここでも「命」が継がれていく。
幸四郎は亡父の言葉を胸に刻み、
先人の芸と精神を追った。
コラムニストは述懐する。
「背負ってきたものの重さと、
変わりゆく時代」
「先人に続く険しい道に、
どんな足跡を残すだろう」
金太郎はどんな星人になるのだろう。
水洟(みずばな)も涙も袖に拭ふ子よ
〈同 高山市・大下雅子〉
成人の日には誰しも、
自分のその時を思い出しつつ、
継承する命の重さと、
時代の変貌の激しさとを、
深く考える。
さて、福島県いわき市を訪問。
㈱マルトの安島家。
安島祐司さんが、
昨年11月23日午前0時19分、永眠。
マルトグループ会長、享年80。
私は書いた。
「働くことを大切にした人が、
勤労感謝の日に逝った」
2011年3月11日、
いわきも大津波に襲われた。
震災発生後の3月12日から、
マルトグループは休まず、
地域のお客さまに奉仕した。
福島第一原発が水素爆発しても、
マルトは市民のライフラインとなって、
店を開け続けた。
安島祐司さんと安島光子さんが、
マルトファミリー全従業員の支柱だった。
光子さんは祐司さんの奥様で、
マルト副会長。
「マルトは日本商業の誇りだ」
私は何度もそう書いた。
私の言葉だけではない。
マルトは一昨年、
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞
第5回経済産業大臣賞を受賞した。
故祐司会長の通夜と葬儀告別式は、
近親者のみで執り行われた。
私は年が明けたら、
弔問したいと考えていた。
それが実現して、
勿来(なこそ)の安島家を訪問。
霊前に合掌して、
線香をあげたあと、
光子さんの意味深い話を、
長時間、聞かせてもらった。
安島祐司さんと光子さんの写真。
そのあと、マルト社長の安島浩さんと、
ファミリー社長の安島ゆみ子さんに、
ご案内いただいて、
周辺店舗を視察。
マルトの安島家も、
三代続くスーパーマーケット企業。
安島祐司・光子世代、
安島浩・誠・ゆみ子・力世代。
そしてこの後は安島大司世代。
さらに祐司さん逝去のあと、
曾孫の昊祐(そら)君、誕生。
大司さんの四男坊。
社長・専務の継承は、
単に名を継ぐことではない。
名とは命のことだ。
小売サービス業のファミリービジネスは、
その意味で歌舞伎界とも似ている。
「お別れの会」は、
今年1月31日午前11時、
パレスいわきで開催される。
勿来の安島家の庭には、
四季桜が咲いていた。
さびしさに枝をはなれず冬桜
〈同 神奈川県松田町・山本けんえい〉
今週は企業や協会の新年会が目白押し。
多くの人たちに会うことになる。
それぞれの場で、
「背負ってきたものの重さと、
変わりゆく時代」を、
私たちは語り合うのだろう。
そしてすべての人が、
誰かのための虻や風となって、
新しい命を仲立ちし、
新しいライフラインとなることを、
願いつつ、
激動の2017年を乗り切るのだろう。
では、みなさんも、
誰かのための虫や風に。
Good Monday!
〈結城義晴〉