「トランプ大統領1週間」の「排外主義と希望・スピードと実行力」
2017年1月最後の日。
一月、往ぬる。
明日から2月。
今月1カ月間、
日経新聞『私の履歴書』は、
カルロス・ゴーン。
日産自動車社長。
最後の最後も、よかった。
「私はグローバル化を信じている。
保護主義的な動きも出てきたが、
グローバル化が止まることは、
多分ない」
同感だ。
ゴーンは自分の将来を語る。
「未来がどうあろうと、
日本には頻繁に
足を運んでいると思う」
「来日から18年、
この信じがたいほど
すばらしい国からは多くを学び、
私は明らかに違う自分になった」
「日本はもう、
私のアイデンティティーの一部だ」
泣けてくるね。
この言い回し。
人たらしだ。
だからこそ、カルロス・ゴーンは、
超一流の経営者なのだと思う。
朝日新聞『折々のことば653』
鷲田清一さん編著。
見える望みは、
望みではありません。……
われらに見えぬものを
望む以上、
忍耐して待つのです。
(「新約聖書」前田護郎訳から「ローマ書」)
「見えるものを、
そのうえ何で望みましょう」
これも使徒パウロ。
「希望は、
苦難に満ちたこの世界をそっくり
別の光で照らしてくれるであろう、
今は不在のものに向けられる」
「望みが断たれてもそれでも
耐えて待つことができるとしたら、
それは自分が誰かに待たれていると
感じるからにちがいない」
明治マーケティングレビューが届いた。
連載「小売業のスーパーマーケティング」
もう36回を数える。
季刊誌だから丸8年。
今回は、
「パラダイムの転換と、
新しい(?)大衆消費社会」
手に入れることのできる皆さんには、
ご愛読をお願いしておきます。
風邪の子とトランプ遊び負けに負け
〈朝日俳壇より 東京都・岸田季生〉
最近、川柳のようなこんな句、
多いに違いない。
そのドナルド・トランプ大統領。
難民や「テロ懸念国」の市民の
入国を制限する大統領令を発して、
世界中からブーイング。
これはちょっと、致命傷に近い。
日経新聞『大機小機』
「誰が排外主義を止めるか」
コラムニストは硬派の無垢さん。
「単なる保護主義というほど
生易しくはない。
移民排斥、難民受け入れ停止、
人種差別など
欧州極右ポピュリストも
顔負けの排外主義である」
「企業への介入など
中国顔負けの国家資本主義でもある」
これを誰が、どう、止めるのか。
第一に、
「米議会と司法が
三権分立の役割を果たせるかが
まず問われる」
第二に「主要企業は
強制的な介入を許すべきではない」
第三に「同盟国の役割は
決定的に重要である」
特に安倍晋三首相とメルケル独首相。
「防波堤になる責任がある」
「日本と欧州連合の
経済連携協定の締結を急ぐ」
これは効果があるはずだ。
「トランプ・ラリーに
浮かれている場合ではない」
「危機にさらされているのは、
自由で開かれた民主主義と
資本主義そのものである」
その通りだと思う。
一昨日の毎日新聞。
二人の学者の評価。
「トランプ大統領の1週間」
まずサンフォード・シュラム教授
ニューヨーク市立大学の政治学者。
「この1週間、独裁政治を
見せつけられてきた」
「科学を否定し、メディアを締め出し、
自分の方針と異なる
ホワイトハウス内の情報を握りつぶすなど
一方的な力による統治で
危険な前例を作り出している。
役人を沈黙させ、メディアを脅し、
研究者をはねつけ、
見たこともない
悪質な政策を成立させている」
「米国から民主主義をなくすという
組織的なたくらみの一つでもある」
「人々は強い指導者を望んだ。
だが、彼はとても危険であり、
信頼はできない。
感情的で不安定な指導者だ。
独裁者になるだろう」
一方、フランシス・バックリー教授。
ジョージメーソン大学の法学者。
「この1週間はとても成功している」
正反対の見解。
「貿易問題や安全保障、移民など
多くの異なる課題に
アクションを起こした。
選挙公約をできる限りの早さで進め、
実行しようとしている」
スピードと実行力。
「メキシコ国境での壁建設も
トランプ氏が言い続けてきたことで、
大統領令に署名したことは驚きではない」
この人の著作は「ザ・ウエイ・バック(回帰)」
この本がトランプ大統領の目に留まり、
陣営入りしている。
「難民制限を行う理由の一つは、
米国民の政府に対する不信感への配慮だ」
「シリア難民や過激派組織ISの問題を
作り出した要因は米国にある。
ブッシュ元大統領が
愚かなイラク戦争を始め、
オバマ前大統領が混乱を残したまま
早々と手を引いたからだ」
「本当に難民か疑わしい人もいる。
脅威にさらされるキリスト教徒らを
優先的に入国させられればいいが、
難しい。
全面禁止は次善の策だ」
この法学者は、
宗教の自由を否定するかのようだ。
「しばらくすれば
議会中心の政治になるだろう」
「議会が中心の立憲政治に
戻るのは良いことだ。
成果を出せばトランプ氏に批判的な人々も
彼を自分たちの大統領だと渋々認め、
この国はもっとまとまると思う」
この正反対の両論併記は、
毎日新聞らしくてよかった。
アメリカの二つの店。
スチュー・レオナードの「Our Policy」
The Customer is Always Right!
顧客はいつも正しい。
一方、イータリー「Our Policy」
The customer is not always right.
顧客はいつも正しいわけではない。
イータリーは続ける。
Eataly is not always right.
イータリーもいつも正しいわけではない。
Through our differences, we create harmony.
両者の差異が調和を創り出す。
正反対。
これが21世紀の現代である。
パラダイム転換の時の哲学だ。
今夜は美しい三日月。
同じ月でも、
満月も三日月もある。
同じトランプの1週間が、
「独裁政治」とも映るし、
「スピードと実行力」とも評される。
それが現代である。
だから各自が、
自分の見方を持たねばならない。
苦難に満ちたこの世界。
「別の光で照らしてくれるであろう、
今は不在のもの」
希望は、それを見ている。
そして、望みが断たれても、
それに耐えて待つことができる。
希望とは、そんなものだ。
2月に向かって、
希望をもち続けたい。
〈結城義晴〉