「商業統計毎年調査」の吉報と「メイシーズ買収」の凶報(?)
今日も一日中、
横浜商人舎オフィス。
月刊商人舎2月号の、
最終責了。
最後の原稿を書いて、
目次をつくって、
表紙やメッセージを書いて、
最後の最後に編集後記を書いて、
それらも全部校正して、
「責了」する。
途中、(株)商業界の社長になって、
編集現場から離れた時期と、
(株)商人舎を設立して、
雑誌を発刊していなかった時期に、
都合10年ほど中断したけれど、
社会人になった1977年4月から、
もう40年、実質30年以上も続けている。
[ちなみに、コーヒーカップは、
ゼイバーズです]
さて、ちょっとうれしいニュース。
2019年から、
商業統計調査が、
毎年実施される。
所管は経済産業省。
商業統計、別名商業センサスは、
1952年(昭和27年)に、
最初の調査が実施されて以来、
1976年(昭和51年)までは2年ごと、
1997年(平成9年)までは3年ごと、
そして2007年(平成19年)までは、
5年ごとに本調査が行われた。
その中間年には、
簡易調査が行われた。
そして2009年に、
経済センサスが創設されると、
商業統計の簡易調査は廃止され、
2011年に、商業統計調査の実施周期は、
「経済センサス-活動調査」の2年後と、
変更された。
さらに2015年から、商業統計調査は、
「経済センサス-基礎調査」との、
同時実施となった。
これは総務省所管である。
なんだか、
たらい回しのようでもあるし、
ころころと基準が変わる。
士農工商の序列は、
今もあるのかと、
疑いたくもなる。
日本経済の統計は、
主に三つある。
第1に工業統計調査。
これは製造業が対象。
第2が商業統計調査。
小売業と卸売業が対象。
そして第3に、
特定サービス産業実態調査。
これは第3次産業が対象。
工業統計調査は、
毎年実施されている。
しかし商業統計は、
対象事業者数が多く、
調査の負担が重い。
だから毎年、悉皆調査を実施することは、
様々な負担があって、
それが大きな障害となった。
今後、調査票を簡素化させ、
調査の外部委託などを検討して、
体制を整備する。
卸売・小売業は、
国内総生産(GDP)の約14%を担う。
商業統計調査の毎年の実施によって、
今後は製造業などと合わせて、
GDPの7割程度が、
正確なデータに基づいて算出できる。
狙いは政府が進める経済統計改革。
できるだけ正確なGDP算出が望まれる。
そのために約140万事業所の、
卸売業と小売業が調査される。
うれしいことだ。
Retail is Detail.
小売の神は細部に宿る。
商業は細かい仕事だ。
そして細かい統計も、
極めて大事なのだ。
もう一つは、
ちょっと寂しいニュース。
Macy’sが、
買収される。
アメリカ最大の百貨店にして、
世界最大のデパートメントストア。
2016年1月決算で、
年商270億7900万ドル、
1ドル100円換算で2兆7079億円。
これは前年同期比マイナス3.6%。
純利益は10億7000万ドル、
1070億円で、29.9%減。
それでも決算時点で、
店舗数は870。
現在はもう700店台前半か。
そのメイシーズの買収に、
カナダのハドソンズ・ベイが、
乗り出したという噂話。
米国ウォール・ストリート・ジャーナル電子版が、
「関係者の話として報じた」ニュースが、
日経新聞に載った。
「両社の交渉はまだ初期段階で、
成否は不透明だという」
ハドソンズ・ベイはすでに2013年7月に、
米国サックス・フィフス・アベニューを、
傘下に収めている。
その前には2008年に、
ハドソンズ経営そのものが悪化して、
アメリカのNRDCという投資会社に、
その株式の過半数を握られてしまった。
だから今回のメイシーズの買収も、
アメリカ資本が画策していることになる。
ややこしい話だが、
米国資本のNRDCが、
カナダのハドソンズ・ベイを買収し、
そのハドソンズ・ベイの名義で、
2013年にサックスフィフスを傘下に収め、
さらにさらに今回、
メイシーズに狙いをつけた。
NRDCは、
ナショナルリアルティ&ディベロップメントコーポレーション。
オーナーはリチャード・A・ベイカー。
コーネル大学ホテル学科卒業の、
1965年生まれのやり手実業家。
2006年にNRDCは、
米国百貨店ロード&テイラーを買収。
この会社もいま、
ハドソンズ・ベイの傘下。
べイカーには、
その小ぶりの百貨店ロード&テイラーを、
立て直した経験がある。
さらにサックス、ハドソンズを再建し、
今度はメイシーズというステップ。
メイシーズは2012年に、
CEOテリー・ラングレンが、
「オムニチャネル宣言」を発して、
Eコマースとの連携を、
最後の切り札のごとく位置づけて、
再建を図った。
しかし、それもうまくはいかず、
昨年末のホリデーシーズンも惨敗。
昨年1月に3000人の人員削減、
8月に100店舗の閉鎖、
そして今年1月には、
さらに1万人の削減を発表していた。
要はアメリカでも、
百貨店業態が惨憺たる状況で、
それが企業統合を加速させている。
ああ、かつての栄光、
百貨店よ。
ちょっとうれしい吉報と、
ひどく寂しい凶報。
そんな波に揺られつつも、
士農工商の序列は、
改善されていくに違いない。
それは信じたい。
〈結城義晴〉